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第341話 宮ノ内のバレンタイン4*

霧緒 「……というわけなんで、先輩スミマセン。さっきも言ったし、こいつも言ってた通り俺恋人いて、そいつ一筋なんで気軽に触られると困るんす」 「……えぇー!ウソー」 「本当……俺今まで適当な付き合いしてたんで、信じてもらえないかもしれないけどマジす。だから恋人には無駄に嫉妬させちゃうんですよね。浮気とか……マジ考えられないくらいそいつに惚れてるのに……」 詩の髪を指先でくしゃくしゃしたり優しく撫でたりしながら、目の前の女を見つめた。 はじめは信じられないといった表情をしていたけれど、唇をきゅっと結んで悔しそうに俺から視線を反らした。 「……何……そんなにいい女なのその子……どんな子よ」 「超~カワイイ……奴……です」 そう言いながら、詩をムギュッと抱きしめる。 女は一瞬ムッとしたけど、堪えてため息に変えて吐き出した。 やれやれ……まさかその恋人が目の前のこいつだとは露知らず。一体どんな恋人をイメージしてるんだか… で、こっちの恋人は身動き一つせず、カチコチ固まりされるがままになっている。 向こうから見たら、先輩が後輩にちょっかい出してじゃれてる位にしか見えないだろうけど。 こんなに俺がじゃれる奴なんて他にいないし。 いたら一人しかいない…… ……どんな顔して聞いてるんだか…… 「あーハイハイわかったわ。冗談よ冗談!ちょっと懐かしくて気安い態度とっちゃっただけ!もうしないから。あー受験お疲れー!じゃ、私行くから!さよならっ」 さっきの笑顔はなく、右手をひらひらと振りながら女は立ち去っていった。 コツコツとブーツの音が遠ざかっていく。 「ふぅ……やっと諦めたか」 「……」 「おい……詩?」 詩の後ろから耳朶をくいくいと引っ張ってみたがそれに対しての反応はなし。 「……」 「詩……」 「……今の女さぁ・元カノって言ってたけど、マジ?」 「……ン、マジ。高一の時に一月位付き合ってた。名前思い出せないけど。ここに向かっている途中に声かけられた」 「そか、そうだよな。霧緒……目立つしモテるしな。そういうことあるよなうんうん。でもあの女、気軽に霧緒に触りやがって、どういう神経してんだ?下心丸見えの女ってわかりやすいよな馴れ馴れしいだろ。つか霧緒も霧緒で普通に触らせてんじゃねーよ。腹パン食らわせろよ。ったく……遅いからコンビニ出てここで待ってたら、女連れでこっちくるからさ、はぁああ!!って切れそうになった………マジ怒り!!」 「……はは」 「はは……じゃねぇ!」 「悪い…マジでごめんな?」 「ぐおぉ……許さん……」

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