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第4話

   パンツの通販ページを見てから、1週間が経った。  俺はゲットしたケツ割れ下着……ジョック・ストラップを試着し、指4本分の拡張中だ。  新しい試みにウキウキの俺だけど、雄馬は最近ちょっと元気がない。ふとした時に考え込んでいる。   「雄馬、どうした? さっきのラーメン屋、口に合わなかったか?」 「え、あ、ごめん! ぼーっとしてただけ!」    慌てたように雄馬が俺に意識を向けた。   「じゃあ疲れた? 今日はこのまま解散する?」 「それはヤだ!」 「雄馬。暑いし、無理だけはするなよ?」 「大丈夫だって」  雄馬のことは心配だけど、一緒にいられるのは嬉しい。思わず頬がゆるんでしまい、アスファルトの地面を見る。  手首をキュッと握られた。   「岬、俺んち行こう。いいだろ?」 「うん!」    俺がにこっと笑うと、なぜかほっとした雄馬が、するりと恋人繋ぎに切り替えた。  えーと、人通りはないけど、真っ昼間にどうした?   「雄馬、誰かに見られたら……」 「岬は見られて困る奴でもいるの?」 「え? それは雄馬だろ? 近所に住んでるんだしさ。ほら、行こうぜ」  ぎゅっと握ってから、手を放して前を歩く。  今日は勝負をかけるつもりで、あのパンツを持って来ているのだ。  さすがに朝からプリケツになる勇気はなくて、バッグの奥に仕舞っている。ビニール袋と紙袋に入れた、安心の二重包装だ。  午前中はそれぞれ授業をこなし、午後は二人ともオフだった。  休講って学費のことを考えるともったいないけど、やっぱり嬉しい。  雄馬の一人暮らしの部屋まで、前後一列になって黙々と歩く。ラーメン屋で補給した水分が、全部出ていく暑さだ。セミの声すら聞こえず、時々車が通り過ぎる。 「暑いなー」  返事がない。歩調をゆるめて横に並ぶ。  少し俯いて歩く姿が、気落ちしているように見えた。  え、今から俺たち、えっちなことするんだよな? もしかして雄馬、俺とのえっちが嫌で落ち込んでる?  でもここで解散するのは嫌だって、食い気味に言ってくれたよな。どっちだ?  不安になった俺は、雄馬の肩をつついた。 「あのさ、雄馬」 「え、何? 何か買うもんあった? 戻ってコンビニ寄る?」  雄馬の耳元に顔を寄せ、囁く。   「俺のちんこ触らないなら、今日、ヤってみる?」 「えっ! ヤるっ!」    すっごく嬉しそうな顔に、俺はこっそり安心した。       別々に汗を流し、後から浴室を出た俺は、ジョック・ストラップだけを身に纏っている。  太めのウエストバンドは水色。尻たぶと太ももの間にあるストラップはピンク色だ。  ちんこを包むポーチの布面積は最低限で、画像で見た通りフィット感がある。Tバックやふんどしに近い。陰毛の手入れに気を遣ってしまった。  柄は水色とピンクの水玉模様。実はポーチに、プラスチック製のカップを入れている。  つまり俺は!  ちんこを盛った!  そうじゃなかったら、雄馬に見せられるわけがない!  そして後ろは、プリっとした尻が丸出しだ。  俺は気合を入れて蒸し暑い廊下を進み、クーラーの効いた部屋に入る。  グレーのボクサーブリーフ姿でウロウロしていた雄馬が、パッと振り向いた。 「え、ジョック・ストラップ!? 岬、エロい……」 「ありがと……」    陸上競技をやっていた雄馬は、この下着のことを知っていたみたいだ。  いつも以上にギラギラした目で見つめられ、恥ずかしくなる。  俺はくるりと後ろを向いた。  まぁ、後ろを向く方が恥ずかしいんだけどっ!  尻の割れ目もすべて、見られている。  太ももに食い込むストラップが卑猥に映っていることだろう。Tバックより潔いエロさだ。 「……すげーエロい」 「見すぎだって……もういいか?」 「うーん、爽やかエロ! かわい、いや、格好いい!」 「雄馬お前、今かわいいって言ったな?」  反射的に振り返り、大袈裟に眉をしかめる。  雄馬にエロいって言われるのは嬉しいけど、かわいいはダメだ。高校時代の馬鹿なクラスメイトたちを思い出してしまう。   「いや、だって恋人が! 俺のために! エロい下着姿を見せてんだぞ? 性別関係なく、行為そのものがかわいい!」 「そう、か?」    顔や体格じゃなく、行為がかわいいと言われたら反論しづらい。  全身360度、くまなく見られてから、ぎゅっと抱き締められた。互いにパンツ一枚、素肌で抱き合う。  ちんこを見せたくなくて、今までハグもキスもフェラも、服を着たまましてきた。  あー、照れる。  雄馬がムニムニと俺のプリケツを揉んでくる。ちんこのカップが雄馬に当たらないよう、俺は少し腰を突き出した。  雄馬の肩口に顔を埋めて、今のうちに断りを入れる。 「雄馬。期待させて悪いけど、今日、全部は入らないかも……」 「無理はしない。優しくする!」 「ありがと。一応さっき解した。指3本までは入――」 「解しちゃったの!?」    俺の言葉に被せて、すごく残念そうな顔で叫ばれた。耳が痛い。  そういうの、ゲイの人にはNG行為なのかな。めっちゃ検索して、やってたんだけど……、   「雄馬、勝手にごめん」 「いや、大丈夫。ちょっとやりたかっただけ……」 「えーと、指3本までしかやってないから……」    雄馬のちんこを見下ろす。ボクサーブリーフ越しにも分かるほど、はっきり勃起してる。指3本じゃ足りない。    「やる! 俺にやらせてくれ!」  キスをしながらベッドへ移動する。端に腰かけると、雄馬の唇が首筋を吸う。 「んっ」 「キスマークっ」  嬉しそうな雄馬か、俺の顔を覗き込む。いたずら小僧かよ。でもなんか、ちょっとだけ目が怖い? 「次から見えないとこにして? まだ暑いのに長袖とかタートルネックとか無理」 「あ、悪い……」 「別にいいよ」  キスマーク自体は嬉しいのだ。  雄馬が乳首を吸い、クニクニと捏ねる。今まで散々弄られてきたそこは、確実に性感帯だ。形もぷっくりと変化している。    全身を愛撫された後、ベッドに四つん這いになった。  呼吸の荒い雄馬がベッド際に立ち、俺のアナルにローションを垂らす。専用の指サックをした指が、アナルにゆっくりと入っていった。丁寧に|襞《ひだ》のひとつひとつを広げ、ぬるぬるを塗り込んでいく。 「あー、もー、感動っ」  雄馬の吐息が掛かった。  めっちゃ見られてる。めっちゃ触ってる。恥ずかしい。もう指3本入るって、俺言ったのに!  ちょっと羞恥プレイみたいだ。俺はなるべく深く呼吸して、体の力を抜く。    「っ、はぁ……」 「岬、どんな感じ?」 「ん、なんかもどかしい……」 「痛くはないんだよな?」 「んッ、痛くは、ない。入り口んトコ、ちょっと気持ちいい」 「そっか、良かった」  背中にちゅっちゅっとキスされた。  俺が体を捻って後ろを見遣ると、顔を寄せてくれる。      「雄馬……」  唇を重ね、熱い舌で口腔をまさぐられた。  気持ちイイ……。あ、今、指3本入った。   「ごめんな、岬。俺のワガママ、聞いてもらって」 「エロい手つきで、そういう顔すんなぁっ、あっ」    俺のナカをぐちょぐちょに暴いてるくせにっ! 真面目な顔で、しょんぼりしてんじゃないっ!   「あ、ここ感じる? なんか凝りがある」 「トントン、するなぁ……っ」 「ね、さっきの続き。どういう顔?」 「今はもう、意地悪な顔しかしてないぃっ」 「えー」  真っ赤な顔で雄馬をなじっているのに、にやにやされた。くそっ、すごく嬉しそうだ。   「爽やかで優しい奴だと思ってたのにっ。今日は元気ないなって心配してたのにっ。急に意地悪になった!」 「あ、心配かけてごめん。もう元気だよ」 「知ってるぅ……。あっ、それぇ……もっとぉ……」  思わず俺は腰を揺らした。自分で広げてた時は、入り口くらいしか気持ちイイと思わなかったのに。雄馬の指は特別だ。  このままちんこを入れてもらったら、もっと気持ちいいんじゃないか? そんなふうに期待してしまう。  俺、いつの間にかゲイになってるな。今さら性的指向なんて、どうでもいい。雄馬が好き。         (次でラストです。もし誤字などあったら教えてください……)    

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