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第11話 欲しい…

 熱い吐息と舌で翻弄された乳首は、エアコンの冷風でそそり立つ。歯が触れただけで、金属を当てられたような、氷を押し付けられたようなキンとした震えが骨まで伝わる。そしてまた熱い息が絡む。 「あっ…ん」  震えが抑えられず背中が仰け反る。  汗で張り付いたシーツから弓なりに背中が離れると、風の代わりに熱い腕が絡んだ。柔らかい腹の皮膚と、硬い徳重の胸が汗を弾いて音を立てた。徳重の首に腕を絡めて膝を立てようとするが、それより先に腰を引き寄せられて、太腿に座らされる。先ほどから咥えたままの徳重の指を、直角に深く潜らせる形になり、声を上げた。 「ああっ、あ……あっ」 「まだ痛い?」  念入りに濡らされていると分かってはいても、なにか感触が違う気がした。汗のせいか粘度というか、直接粘膜を擦られている痛みを感じる。このまま受け入れれば、乾いた粘膜が破れそうなイメージしかない。それでも中心に血が集まり、すぐにでも弾けたい焦燥感が押し寄せてくる。  声を漏らす代わりに、徳重の鎖骨に前歯を立てる。身体の中心から痛みに支配されているのに、太腿に触れる徳重の腕がくすぐったい。身を捩ると腹に固くなった徳重の中心が触れた。さっきのように掌で包む。 「むっ…」  なにか言わせる前に親指を立てて先端を弄った。 「え、オイ」  コラ、と動揺したような声が聞こえたが、鎖骨に当てた口の端から唾液が零れると、徳重が口を噤んだ。 「コレ、で…濡らして……」  手の中で扱き始めると、硬さを増して太くなるような感覚があった。肩に置いた頬も、体重を預けた尻も、徳重に触れる部分は揺れる。強く引き寄せられて、両足が徳重を挟んで高く上がる。揺れが激しくなり、引き寄せられた中心がぶつかる。手を開いて自分のものを徳重に重ね手を添えると、別の生き物のように動き、熱とともに急激に何かがこみあげてきた。 「あン…あっ、ン、ッ…、……」  呼吸するように声を上げながら、重ねた中心から生まれるものに期待する。俺の声に反応するように徳重が、眉を顰めるのがわかった。  手の中で膨れ上がる生き物のような徳重の中心を感じていた。身体を揺すられると繋がっているような幻想を抱き、昇天しそうな感覚に襲われる。不意に手の中のものが、凶器に変わったような危機感に襲われ離した瞬間に、身体が浮いた。痙攣する徳重の身体も、大きく跳ねた。  ビシャリとそれを受けた瞬間、昇ったような感覚があった。脱力すると徳重の膝から落ちて、シーツに座った。太腿を流れる汗と、ゆっくりと腹から流れる体液に視線を感じて、慌てて身体の向きを変える。が、横から伸びた手が脚を掴むと、もう次の瞬間には背中に徳重の身体が触れていた。  背後から伸ばされた、固く大きな手が白濁をこすり取るように腹の上から股下へと動く。毛や根本を意識するようにジリジリと旋回すると、愉悦に唇が歪んだ。濡れた手で徳重の太腿に手を付き、誘導するように腰を浮かせた。  首筋に歯を立てられ顔を向けると、口接けられた。イったばかりなのに、旋回する根本を目掛けて血が集まるのがわかった。肩を押されてシーツに顔を埋める。口接けから解放されても息苦しいまま、開いた口から唾液が零れた。  挿入ってきたものが指とはわからないほど、ねっとりと柔らかな感触が内壁を撫でた。 「んっふ……ぅ」  膝を立てて高く尻を上げると左の丘を大きな手で包まれ、撫でまわされた。内股を白濁が流れる。徳重の指が掬うように這い上がり、入口を広げるように動いた。  二本の指で広げられて、音を立てる。音を消したくて声を上げ、羞恥心に顔を埋める。どうしたいのか自分でわからない。早く欲しくて、まだ焦らされたくて、手がシーツをかきむしると大きな手が重ねられた。 「あっ……はっ」  背中に徳重の身体が重なる。ピタリとくっついた皮膚から汗が零れ、ポタポタと音を立ててシーツに落ちた。音につられて泣きたくなった。10センチ程度の身長差なのに、一回りも違う。同性でありながら別の優位動物のようで、抑え込まれると恐怖を感じる。重心を掛けられたらひとたまりもないが、そうしないよう気にかけてくれているのもわかっていた。  身体の中をかき回していた指が、別の何かに触れた。 「えッ、あ……!」  ガクリと腰が落ちそうになる。手を包んでいた優しさがいつの間にか消え、尻を掴む指が食い込んだ。 「ヤ…! そこ、ヤ……ッ」  コリコリと指が何かに触れている。痛みも痺れも飛び越えて、さざめく波に全身を持っていかれそうな感覚に襲われる。 「ここ? ここだな」  指を抜かれて、逃げる間もなく鉄杭を打たれた。 「……あッ!」  熱く燃え滾るそれが入口を押し広げて、粘膜を巻き取るようにせり上がってくる。チクりと、別の箇所に痛みを感じて視線を向けると、赤くなった乳首を包まれていた。濡れた指先が旋回すると、うっとりする感覚に、細く息が漏れる。その瞬間にまた突き上げられ、思わず息を止めるが、また乳首を撫でられ、深く徳重を受け入れた。  いつもより浅い箇所で徳重が動く。尻を突き上げられて、角度を変えじわじわと責められるうちに、先ほど確認された箇所だとわかった。 「ああっ、だ、ダメ…」  同時に絶叫しそうなほど、快感に全身が震えた。身体や細胞という概念を越えて、一単細胞のように、箇所というより全身に刺激が走った。どこを擦られているのわからないほど、大きな波だった。こんな感覚は知らない。快楽なのか恐怖なのか分からなくなり、拒絶反応を起こしているみたいに、腕が伸び、熱に包まれる身体をひき剥がそうと試みたが、片手だけで固定されている腰は動きそうになかった。 「ああっあ、ああ……」  熱が部位というより身体という個体を壊して、感覚の粘膜を擦り上げた。接触する度に、突き落とされるような、宙に放り上げられるような、時空を超えた感覚に襲われる。破壊される……身体が爆発する。 「ッ……!」 「ザッシー……」  イきそうな瞬間に根本を押さえられた。耳元で声がする。責められ続けた箇所から、徳重の中心がゆっくり抜かれる感覚があった。小さく呼吸を繰り返しながら、唾液と涙でグショグショになった顔をシーツに擦り付けると、再び背中に温もりが重なった。  同時に深く突き刺さる。ゆっくりと身体の中に熱が入り込んでくるのがわかる。腰を掴まれて引き寄せられたのだ。大きく肉を打つ音が響いた。シーツを濡らす雨音も激しく響いた。この身体も熱で溶けてしまえばいいのにの思った。 「五郎……ぅ」  ドクドクと零れてしまうのをどうにかしたいが、どうにもならない。けれど、自分の身体ではない一部が確かに内部にある。それが喜ばしくて、それがもたらす刺激が欲しくて震えている。徳重という大きな温かい愛に包まれていることが嬉しくて、ちゃんと答えられない自分が酷く粗末なものに感じた。 「っ……。そんな、欲しいか?」  弛緩してるのではないかと思って、受け止めている箇所に力を込めると、徳重が呻くように声を上げた。 「ザッ…シ……、いいぜ……」  欲しいに、決まっている。 「……ぅ…あっ」  答えずにいると大きく腰を揺すられた。徳重に抱えられた身体は軽々と持ち上がり、太くなった徳重を根本まで咥える。浮き上がる度に腰を揺すられ、膝がわなないた。激しく突き上げられる度に身体が投げ出されそうで、両手で必死にシーツを掴んだ。 「はっ…あぁ…あ……」  汗と涙が零れる。背中に徳重の汗が跳ねゾクリとした。貫かれるたびに身体中が徳重で満たされ零れているようだ。激しく揺すられて、目を閉じていても目が回りそうだった。 「ぅ……五郎……ご…」  気を遣りたくなくて、歯ぎしりするように名前を呼んだ。

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