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第13話 ぬくもり
二人の汗を吸った布団はまだしめっぽかったが、別のシーツを敷くとそれほど気にならなかった。むしろ、自分の普段の寝床よりも清潔だ。冷房があるから、腕を絡められても暑苦しいとは思わなかった。引き寄せられて、おでこにキスされるとさすがに暑苦しい。顎を押しやって、引きはがそうとすると向きを変え上に乗ってきた。耳朶に鼻先が当たる。
「……」
首筋に吸い付かれる感覚があった。左足に徳重の足が絡む。眠いと伝え、理解したと思ったが、すぐに忘れるとはハトか?
「明日にしようぜ」
気怠さに任せて口をついた言葉にハッとする。同じような顔が覗いていた。すぐにニヤケた顔になった。
「明日も、する?」
「……したければ」
目を閉じる。上にあった気配が横に移動する。
勝手に来たのだし、とことんつきあってもいいと思った。
なんの脈絡もなく、能天気にこの関係は続くような気がしていた。この関係にとくに名前はない。好きだから付き合っているわけでもないし、事件の手助けとその報酬というなら、今回はなにもない。
強いていうなら、身体だけの関係、なのだろうか?
聞きたいこと、話したいことは山ほどあるのに、結局話せない。それもやっぱり身体だけだから、なのだろうか?
どう思っている? 一言聞ければそれで済む話なのではないか。いや、聞くまでもなく、身体だけだろう……いつだって据え膳だし。身を差し出してたのは俺の方なんだから。
そもそも、それもどうでもいい……。
もうこれで、終わりにすると決めたのだから、徳重がどう思っていようと、関係ない。
寝息が聞こえてこないので、目を開けた。
肘をついてこちらを見ている。目が合うと大きな手がまた、こちらに伸びてきた。目に入りそうな前髪を、かき上げられる。
「なんか、あったのか?」
「……なんもない」
ホントになにもないから、いつまでも見てられる。……はずだけど、先に視線をそらしたのはこっちだ。ぼんやりしていたら、来てしまった。そうじゃない。会いたくなったから来たのだ。
闇の中で見つけた光だ。
徳重は俺の光だった。
こうして温かい徳重に触れながら眠ることで、どれだけ救われたか。痛みを忘れて眠ることができたのは、この温かさのおかげだ。
逃げなければ犯られる……わかっていて留まったのも、欲しかったからだ。
目を閉じて、頭を包む温もりが、身体に浸透していくのを感じた。
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