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第4話

 そして放課後。 「ちょっと! なんですか、この水着は!」  市川から渡された水着を勢いよく投げ返す。  更衣室で着替えようと思ったら市川が入ってきて、「せっかくだからこれ着てくれ」と水着を差し出されたのだ。  でも、それはただの水着ではなく……。 「何って……今季発売されたセーラー水着だよ。可愛いだろ?」 「『可愛いだろ』じゃないっ! これ明らかに女性用じゃないですかっ!」 「うん、そうだけど何?」 「何って、あのねぇ……!」  当たり前のように頷かれると、どうツッコめばいいのかわからない。 (どう考えたっておかしいでしょ、この水着……!)  セーラー水着というだけあって、デザインもセーラー服がモチーフになっているようだ。セーラーラインは襟が二枚に重なっており、風になびくとストラップに邪魔されずに素肌が覗くようになっている。胸元は赤い編み上げリボンが付けられていて、紺色生地のワイヤーカップも合わさり、清楚なのにものすごくセクシーに見えた。同じく紺色のフレアスカートはビキニぎりぎりの丈にデザインされている。  総合的に見れば、確かに可愛いと思わんでもない。……が、ビキニパンツが水色のボーダーになっていることは大問題だ。所謂『縞パン』というヤツだが、これは明らかにパンチラを意識している。  いや、水着である以上パンチラしたところで恥ずかしくはないのかもしれないが、市川のような変態教師が食いつくデザインであることは間違いない。 「とにかく、俺はこんな水着着ませんからねっ!」 「え、嫌なのか? じゃあこっちにする?」  こっち、と市川が見せて来たのは、胸元に『I❤市川』と書かれた女性用スクール水着だった。ご丁寧に自分で縫い付けたらしい。 「ふざけんなあぁぁ! っていうか、なんでこういう水着着せようとするんですかっ!」 「いや、夏樹なら女性用の水着も似合うだろうと思って。細いし、可愛いし……このセーラー水着なんてピッタリだよ」  と、涼しい顔でセーラー水着を押しつけてくる。 「というわけだから、早く制服脱いでこれ着てくれ。絶対可愛いから」 「だから嫌ですっ! 俺はこんなの絶対着ませんからね!」 「なんでだ? 全員の前でお披露目するわけじゃないんだからいいじゃないか。俺しか見てないんだし」 「そういう問題じゃない! だいたい学校のプールでこんな水着着ちゃダメでしょ!」 「いいんだよ、そこは俺の采配で。というわけでこれ着用義務な。あ、普通の水着着たら成績『1』にするから」 「はあっ!? それパワハラじゃないですか!」 「だってこんな機会滅多にないじゃん。せっかく二人きりでプールに入れるんだぞ? プール貸し切りだぞ? なんかワクワクするだろ」 「そっ……」  言われてみれば、確かにそうかもしれない。プール自体は好きではないが、貸し切り状態というのはちょっと憧れる。 「なあ、いいだろ? 俺のために着てくれよ……夏樹」 「っ――……!」  耳元で甘く囁かれてしまい、とうとう夏樹も折れざるを得なかった。

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