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『そう言えば、父様に逢いに行かないと行けなかったんですわね…』
どうしましょう。
一瞬、ルイの方を考えていたから忘れていましたわ。
魔界に赴くのは、やはり足が竦(すく)む。けれど、寄らないと、父様は拗ねてしまうのを解っている。
魔界帝国の大公を、大聖堂に足を運ばせるにはいけない。
『きっと、あの方は、嬉しそうに来ますが…母様の記憶の玉を見るのは、心痛いでしょうね…』
自分が死ぬ様まで残っている場所ですもの。
嫌いな大叔父の顔を見る羽目になる。それは、嫉妬に狂った己を映してしまうのだから。
まぁ、その後が問題なんだけど…。
『グロいですもの…』
大叔父を跡形無く、殺したのは良いけど、あの姿で、どう侵食をしたんだろうと考えましたわ。
最早…。
神らしかぬ行為だと思います。
『想像していた光景より、酷いと思いますわ。実の弟を侵食して、肉体を手に入れる行為が…』
そんなシーンを瞳に入れた父様が、悔しい顔をするのを母様は、知っている。
『反吐がでそうです。奴の顔が…声が』と、吐いていそうな姿まで想像出来てしまう私は二人の娘だと実感する。
記憶の玉に、ツーンっと、指で突っけば、あの日に起きた光景が流れた。
これを聞きながら、私が思う事は、危険まで犯した母様の考えは奇行では無いかと思惟したけど、大昔にもやっていそうと至ったので、却下した。
何たって『神出鬼没、気紛れ、破天荒な皇女』と、お墨付きですもの。
家臣達が、頭を悩ますのも、仕方ありませんわ。
『さて、大聖堂に来ても困るので、魔界へ顔を出しますか。ま、脅されても嫌なだけですけど。それに、レイィールの花嫁姿が見られるかも知れないですし…』
一つ、楽しみが出来たわ。
ねぇ…。
アラディーナ、あの時、何を、願ったのかしら。
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