2 / 7

第2話

「優、ここってまさか……」 「ゲイバーだよ。見たら分かんだろ」  店内を見渡して、見つけた。ちょうどいい奴を。 「(ごう)」 「おお、優じゃん、久しぶりっ」  琢磨に見せつけるように、剛の肩に腕をまわした。 「これ、俺のセフレ」 「……セフレ?」    琢磨の顔が険しくなる。 「ああ、そっちの人ともヤッたよ。一回? ニ回かな?」  隣の席の、見覚えのある奴と目が合ったので近寄った。 「なぁ、名前なんだっけ?」 「おいおい、ニ回も寝ておいて名前覚えてねぇの? ひでぇな」 「そっちは覚えてんの?」 「優だろ?」 「なんで疑問系だよ。どうせ剛が呼んだの聞いてたんだろ」 「はは、バレた?」  琢磨を見てニヤリと笑いかけた。 「分かった? 昔の俺はもういねぇの」 「……だからなんだよ。関係ねぇ。俺は――――」 「あのさ。俺はお前なんか待ってなかったんだって。分かんない?」  剛の側にもう一度戻ると、俺は後ろから抱きついて、耳元で甘えるように言った。   「剛、久しぶりに相手してよ」 「おお、いいぜ。すぐ行く?」 「うん、行こ」  剛は立ち上がると、俺の腰抱くようにして出口に向かう。 「おいっ、優っ」  琢磨が怖い顔で俺の肩をつかんできたが、剛がその手をひねりあげた。 「……っ」 「邪魔しないでくれる? あ、それとも一緒に来る? 三人も楽しいよ?」 「……っふざけんなっ!」 「あっそ。じゃあそこで、おとなしく指でもくわえて見てれば?」  剛はひねり上げた手を離し、鼻で笑って琢磨に背を向けた。  背中に琢磨の視線が痛いほど刺さってきたが、俺は気づかないふりをした。    

ともだちにシェアしよう!