5 / 7

第5話

「な、なんでここに……。まさかっ、ママが仕組んだの?!」 「だぁって。すっごい必死で、優ちゃんに何があったんだーって、会えなかった間の優ちゃんのこと教えてくれって頼むからぁ。でも勝手に話すわけにもいかないでしょ?」 「いつから聞いてたのっ」  と琢磨を睨むと、   「最初からだ」  と言い放った。   「…………っこんなの、勝手に話すよりひどいだろっ」 「だってぇ。私が誰の味方か分かるでしょ?」 「……っこの、面食い節操なしっ」 「やだひっどいっ」  ひどいと言いながら、少しも怒っていない。今にも鼻歌が出そうなほど、楽しそうな顔。   「あの、ありがとうございました。こいつもう連れていきます」  琢磨はカウンターにお金を置いて、俺の手を引いた。   「おい、琢磨!」 「頑張ってねぇ。また来てねぇ」 「どうも。また来ます」  答えながら、どんどん歩いて店のドアを出た。  琢磨はずっと手を繋いだまま、無言で先を歩く。   「……おい、手離せよ……」  琢磨にだけ聞こえるように、小声で言った。   「なんで」 「な、なんでって。外だろ。見られてるだろっ」 「俺は好きな奴とは、手を繋いで歩きたい」 「……っはぁ? どんな目で見られてるか分かってんのかよっ」 「お前が、どうしても嫌なら離すけど。俺は他人の目とかどうでもいい」 「俺は嫌だっ。……おい琢磨っ」  俺が嫌だと言ったら離すと言ったのに、琢磨は手を離さない。    近くの大きな公園の、人気のない所までやってきて、琢磨はやっと足を止めた。 「もういいか?」 「は? なにが」 「お前を抱きしめたい」 「……っば、馬鹿じゃねぇのっ。やだよ」 「お前も俺が好きなんだよな? じゃあ両思いだろ?」  満面の笑みでそんなことを言う琢磨に、苛立ちがつのる。 「お前話聞いてたんだろ? 俺はお前の気持ちには答えられない」 「俺の家族を壊せないからか?」 「……そうだよ」 「じゃあなにも問題ない。もうすでに許可はもらってきた」 「…………は?」 「お前、昔から俺の親のこと気にしてたろ。ネックはそこなのかなって思ってさ。事前に許可もらってきた」 「許可……ったって。どうせ無理やりじゃねぇの? そんなの許可って言わな……」  話してる最中でクスクス笑い出す琢磨に、ムッとして睨みつける。 「何がおかしいんだよっ」 「お前、昔となんも変わんねーのな」 「はぁ?」 「まるっきり、予想通りの反応でウケたわ」 「…………っ」  何も言い返せないでいると、琢磨がポケットから封筒を取り出して、渡してきた。 「なに……?」 「父さんと母さんから」 「えっ? 俺に?」 「お前が、信じないと思ったからな」  と、琢磨は優しい目で微笑んだ。

ともだちにシェアしよう!