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「やっぱオイル塗るようになってから、すべすべしてるよな」 「うん、そんな気がする」   ハンドクリームとベビーオイルを買って以来、風呂上りや手洗いのあとにまめに塗っていたら以前より肌がしっとりしてきた。  リビングのソファでオイルを塗ってくれているのだが、塗っているのかくすぐられているのだかわからない。さわさわと体を撫でる手が気持ちいい。 「でも孝弘の手もすべすべなんじゃない?」 「そうか?」  孝弘の大きな手で体のラインをたどられると、そこから熱を持っていく感じがする。まだ暑くて二人とも腰にバスタオルを巻いただけだ。風呂上りの火照った体の熱がまったく引かない。  肩から背中を撫で下ろされてぞくっと小さく電流が走る。 「くすぐったいって」  くすくす笑うと孝弘が肩甲骨に口づけて、今度はぺろりと舐めた。 「同じの使ってても、祐樹のほうがしっとりしてるよな」 「そう? でもこれ、ベタベタしなくて気持ちいいよ」  孝弘が勧めてくれたベビーオイルはさらさらしていて、塗ったあとにベタつかないのがよかった。交代して孝弘の背中に手を滑らせて、祐樹はくすりと笑う。 「冷静に考えたら、男二人でベビーオイル塗りあうって変だよね」 「まあな。でもいいじゃん。こっちじゃ乾燥対策は必要だし」  大連では冬の間、雨も雪もほとんど降らない。寝室では加湿器をつけっぱなしにして、更にバスタオルを干しても翌朝にはパリッと乾いている。洗濯物も凍ってしまうから室内干しだが、それでも室内がじめつくことはなく驚くくらいよく乾く。 「リップクリームをスーツのポケットに入れて持ち歩くようになるとは思わなかったよ」  日本では真冬に少しだけしか塗らなかったのに、大連に来てこまめに塗り直す癖がついた。 「唇って割れると意外と痛いよな」 「うん。ドライヤーいらないのは楽だけど」 「もうほとんど乾いてるな」  振り向いた孝弘が祐樹の髪に指を入れてくしゃっと確かめ、そのまま引き寄せてキスをする。 「祐樹」  耳元でねだる声で名前を呼ばれた。この声が好きだ。 「うん」  その返事だけでそっと首筋に口づけられて、まだ何をされたわけでもないのに体がぴくんと反応する。  口づけたところを甘噛みして、背中を抱かれてバスタオル越しに腰が密着する。お互いに少しだけ反応している。孝弘がにやりと笑って腰を卑猥に揺らした。 「ん、気持ちいい」  立ったままで上半身のあちこちに口づけられて、祐樹は小さくため息をつく。 「ベッド行こうよ」  祐樹が誘うと孝弘はうれしげに笑った。  バスタオルは外して、ベッドに押し倒された。待ちきれないように孝弘がキスをしてきて、祐樹はその温かさと重さが気持ちいいと思う。  互いの舌を絡ませ合って口腔をなぞられる。濡れた音がくぐもって聞こえて唇が離れて、少しだけ角度を変えてまた重なる。  キスはこめかみから耳元に移動して「我的愛一天比一天更熱烈《ウォディアイイティエンビイティエンビルーリエ》」と小さく囁かれて、思わず笑ってしまった  直訳すると「僕の愛は一日ごとに更に激しくなっていく」。もう少し自然な日本語に訳すと、どんどん君が好きになっていくよ、くらいだろうか。「真夏の果実」北京語版のサビだ。  でも両肘をベッドについて、祐樹を見下ろした顔が本気で言ったと伝えてきたので「我也一様《ウォイェイーヤン》」おれもだよ、と返したら孝弘は欲情をにじませた顔で笑った。

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