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出逢いは突然に。

「ええ、そうですね。うちの営業部の方にも優秀な人材は何人居ても困りませんね。それに、彼みたいな逸材は将来的には、うちの会社の戦力にもなります」  そう言って2人して俺の事を褒めてくると困った顔で半笑いして頭をかいた。 「――ちょっと大袈裟じゃないですか? 俺なんかまだ新人ですし、それに知らない事とか多いですし、直ぐに戦力になるかどうかわからないのに」 「ああ、それなら安心したまえ。キミの新人研修には教育係りに葛城君にたった今、頼んだ。彼はこう見えてうちの営業部では優秀な人材だ。それに几帳面で色々と丁寧に教えてくれるから、キミには彼みたいな教育係りの方が合ってるかも知れないな?」  そう言って課長は彼を紹介してきた。 「初めまして葛城信一です。今日から私はキミの教育係りに任される事になった。うちの新入社員の研修期間は3ヶ月と決まっている。それまでに、営業マンとしての専門的な知識やノウハウや、ビジネススキルと基本的なマナーをしっかりと学ぶように。キミもうちの会社で今日から働く人間になるのだから呉々も恥をかかないようにしなくてはならない。わかったな?」  そう言って彼は目の前で、俺にビシッと話してきた。さすが眼鏡をかけてるだけにある。話し方から彼の生真面目な性格が伺えた。目の前で圧倒されると頭をかきながら返事をした。 「ああ、貴方が葛城さんですか――。俺は阿川慶介と言います。どうもこれからお世話になります。ハイ、しっかりと貴方から色々と学ばせて頂きますね?」  そう言って返事をすると、真っ直ぐ見つめた。彼は俺の前で一瞬『何でお前、俺のこと知ってるんだ?』と言いたげな表情で見てきた。そこで、咳払いをすると視線を反らして惚けた。 「じゃあ、葛城君! 彼の事は任せた。しっかりと教育するように。阿川君も葛城君から、分からない事は色々と教わりなさい。私は、キミの成長楽しみにしているよ!」  課長は目の前でニコニコ顔で話してくると、俺達は一言返事をして合わせた。 「はい。ご期待に添えるように、しっかりと教育しますので任せて下さい」 「タヌ…戸田課長、俺も色々と教わって来ますね! 1日でも早く戦力になる為にも頑張ります!」 「ああ、頑張ってくれたまえ。私は期待しているよ」  目の前で軽くお辞儀をすると、隣で彼は深々と綺麗なお辞儀をしていた。その時点で差が出ると俺も彼に合わせてお辞儀をし直した。葛城さんは『行くぞ』と言って声をかけると課長室を出た。俺もその後を追うと部屋を出て行った。

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