「……キミ、さっきから何をわけのわからない事を言ってるんだ？　ホントに大丈夫か？」 「あっ、えっと…――！　ああ、ちょっと緊張してて気持ちがテンパッちゃってます…！　何でだろ〜あ、きっと初日だからかな？」 　そう言って適当に誤魔化すと話を反らした。 「ゴホン……。まあ、初日は緊張するのもわからなくは無いな。私も初めて入社した頃はキミと同じだった」 　彼は目の前でコーヒーを飲むと、入社した頃の話をポツリと語った。 「所で話しは戻るがキミが言ったコーチングとは言わば相手の『やる気』や『潜在能力』や『アイデアの可能性』を引き出して、自分で考えて行動すると言った『自発性』を促し。その人が目指すゴールに向けての、行動力に繋がる事をサポートするコミュニケーションスキルの事だ。そして、ティーチングとは知識を相手に『教える』事の意味だ。様々な知識の習得を図り将来的には相手の成長を促す。それがティーチングだ。君がさっき言ったコーチングは間違いで、ティーチングが正しい答えだ。わかった？」 「ああ、そうなんですね。わかりました――」 　彼は両腕を組んで片足を組むと、椅子に座りながら目の前で気難しい顔で真面目に話していた。俺は再びしまったと聞きながらも、ティーチングの意味に一瞬口元がニヤついた。 ――さっき妄想の中でタップリとティーチングして貰ったなぁと。不埒な妄想が頭の中で回想シーンとなって甦った。 「おい、キミ。私の話を聞いているのか？」 「あっ、ハイ……！　ちゃんと聞いてますよ！？　ティーチングとコーチングの違いについて教えて頂きありがとうございます！　さすが先輩は頼りになりますね！？」 　そう言ってハキハキとした声で返事をすると、彼に明るくニコッと笑った。