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新人研修。
『遅刻だぞ、阿川!』
ギクッ!
いきなり背後から肩を掴まれると、両手に鞄を抱えて後ろを振り返った。
「ごっ、ごめんなさい! 何故か設定したはずの目覚まし時計が30分遅れてました……!」
「ほー。そりゃ、大変だな阿川。新人が遅刻とは良い度胸じゃないか?」
後ろを振り返ると柏木さんだった。その瞬間、スッと胸を撫でおろして緊張感がとけた。
「っ、なんだ。柏木さんか……。てっきり葛城さんだと思ったじゃないですか?」
「あははっ、誰が誰だって? 両手に鞄を抱えてこそこそと歩いてる奴が居ると思ったら阿川じゃないか、何だ。さっそく二日目で遅刻か?」
「シーッ! 声、デカイですよ!」
「ああ、すまんすまん。ってか、次は遅刻しないようにしないと戸田課長に見つかったら大目玉食らうぞ。気をつけろよ?」
「ええ、はい……。そーですねぇ……」
「ん? 何をキョロキョロしてるんだ?」
彼の前で挙動不審になりながら周りを注意深く見渡した。葛城さんが居たデスクに目を向けると、やはり彼の姿はなかった。
「あの……。その、葛城さんは今日は来てますか?」
「ん? 葛城〜? ああ、今日は来てるはずだ。それが何か問題か?」
「あ、いえ…べつに……」
「あ、わかった。まさかお前、葛城にビビってるのか?」
「しっ、失礼な……! 誰が葛城さんに脅えてなんか…――!」
急にムッとなると思わず言い返した。
「ほら、やっぱり図星じゃないかw」
柏木さんは俺の心を見透かすと指を指して笑ってきた。意表を突かれると無言で不機嫌になった。
「何だ何だ~? 2人ともそこで何をやってるんっすか!?」
「萩原、お前いきなり絡んでくるな!」
「いーじゃないですかぁ? 俺らパイセンと後輩の仲じゃないですか。こんな所で阿川と油売って柏木パイセンは仕事も余裕っすね!」
背後から突然、萩原さんが出てくると陽気な口調で彼に絡んできた。そしてケラケラと笑いながら話す彼に柏木さんがウザそうな顔で言い返した。
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