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新人研修。
「お前、声がでかいんだよ。それにウザい。俺の近くで話すな。そして寄り付くな!」
「いーじゃないっすか。何、照れてるんっすか? それ超ウケます! 別に今さら減るもんじゃないでしょ?」
「お前やかましい!」
目の前で2人がコントをし出したので、さっさと立ち去ろとした。すると萩原さんがニヤニヤした顔をしながらこっちに絡んできた。
「おーなんだぁ? 阿川、鞄持って今頃出勤してきたのかぁ? おーおー。新人が次の日に大遅刻だなんて戸田課長に言っちゃおうかなぁ~?」
「ハハハッ……冗談やめてくださいよ、萩原先輩」
「んじゃあ、黙ってやるから昼飯奢ってくれ?」
「はっ?」
「いーじゃん昼飯くらい。俺さ、今金欠何だよ。それとも後輩の癖に先輩を飢え死にさせるつもりか!?」
「飢え死にって……」
余りの頭の悪い絡み方に思わず顔がひきつった。すると柏木さんが萩原さんの頭にゲンコツを落として叱りつけた。
「お前なぁ。先輩が後輩に向かって、遅刻したの黙ってやるから昼飯奢れって一体どこのチンピラまがいだ。ホント中身成長してないな。聞いてるこっちが恥ずかしくなる。阿川コイツは無視して良いぞ。絡むと色々面倒だからな!」
「あっ、はい……!」
「ひでぇよ柏木パイセン! 俺の頭をゲンコツでおもいっきり殴るなんて、俺の頭が悪くなるじゃないっすか!?」
その瞬間、2人は無言になると蔑んだ冷めた目で萩原を見るなり口元をひきつらせた。その突き刺さる視線に萩原は悟った。
「あー! やっぱお前達、俺がバカだと思ってるな!?」
2人に向かって指を指すと怒りを露にして大声で怒鳴った。だが、阿川と柏木は一切動じることもなく、さっきと同じ目で萩原のことをただ黙って見つめた。
「バカ野郎! 柏木パイセンも阿川も二人とも、馬に蹴られて死んじゃえーっ!」
彼は2人の前でスンスンしたまま惨めに泣いた。あまりのウザさに、柏木はスッと財布から千円を取り出して彼に向けた。
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