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3度めのLIVE(4)

「じゃー俺ら、先に行ってるからね」 片付けや着替えを終えたカイとサエゾウは、 そう言って楽屋を出て行った。 前のバンドのメンバーもまだいて、 何となくごった返した楽屋の隅っこで、 僕はモタモタと着替えていた。 僕の白状を聞いて、唖然としたシルクは… 僕が着替える様子を見ながら、 悶々と気持ちを整理していた。 いや確かに… シキ相手に、いくらでも経験値上げてこいとか 言っちゃったけどなー まさかの、畏れ多くも、 アヤメさんに手を出しちゃうとは… いやまあ、向こうから出されたんだろうけどな やっぱコイツ、只者じゃない… 「…ごめんね、お待たせ」 ようやく着替えと荷物の整理を終えた僕は、 シルクに声をかけた。 「他の皆は?」 「たぶん会場に行ってると思う…KYを観に…」 「…」 楽屋には、まだ前のバンドのメンバーが残っていた。 僕らは、楽屋のドアを開け…外に出た。 …と、シルクはまた僕の腕を掴んで… すぐそこの、楽屋専用のトイレに、僕を連れ込んだ。 「…っ」 カチッと個室の鍵をかけると… シルクは、すぐに僕の身体をギューッと抱きしめた。 「…ごめんなさい…」 そんな彼の様子を見て… 僕はやっぱり…うっかり謝ってしまった。 「…いや、俺の方こそごめん…」 言いながらシルクは、少し腕を緩めると… 僕の顔をじっと見て、言った。 「チューもされた?」 「ううん…チューは、してない…」 「そっか…」 彼はまだ、少し寂しそうな表情で答えた。 僕は、正直に…言った。 「…挿れられた…だけ」 「…だけ…か、ふふっ…」 それを聞いて、シルクが少し笑ったのを見て… 僕はまた、たまらない気持ちになった。 そして… どちらからともなく…僕らは口付けてしまった。 会場の方から、爆音が聞こえてきた。 「…始まったな」 「うん」 「観た方がいいよ、絶対…」 「…うん」 僕らはそこを出て、会場に向かった。 会場はものすごい事になっていた。 ここに、こんなに人が入れるのかーっていうくらい 大勢のお客さんで、ごった返していた。 「すごいなー」 「あ、あいつら、あすこにいる…」 僕らの声は、完全にかき消されていたが… 僕らは、何とか人混みを掻き分けて… 真ん中ら辺にいた、カイとサエゾウの近くにいった。 そして僕は、改めてステージの上の彼らを見た。 …!! 見た目のインパクトからして、凄かった。 彼らは、まず、とにかく真っ白だった… 正確に言えば、衣装と楽器が、白で統一されていた。 ボーカルさんに至っては、顔も白塗りで、 ウィッグも白だった。 そのボーカルは…ギラギラと血走った目から、 ものすごい勢いで、観客に向かって歌を伝えていた。 「…」 すごい… むしろ、そんなに要らないっていうくらい伝わる… いやたぶん、 僕らみたいな同業者でそのくらいってことは、 普通のお客さんには、これくらいグイグイくるくらいでちょうどいいって事なのか… でも、僕みたいに、 ただただイっちゃってる感じではない。 どこかちゃんと、 自分をキープしてる所が垣間見えた。 ボーカルだけじゃない… ギターもベースもグイグイくる。 なんていうか、彼らの真ん中に立っていなくても… 離れたここで聴いてるだけでも… 下手したら、勃っちゃうかもしれない勢いだ… …と、そのとき、実際にギターの音が… 僕の身体に、突き刺さるように響いた。 「…っ」 僕はビクッと震えてしまった。 アヤメさんの音だ… 僕の身体に響き渡るそのギターのリフは… まさにさっきの… 僕の中に抽挿されるアヤメのモノの感触を甦らせた。 「…」 僕の身体が、それに勝手に反応してしまった… 下を向いて、ビクビクと震える僕の手を… 隣にいたシルクが、そっと握った。 僕は、彼の手を…ギュッと握り返した。 そのまま、シルクと手を繋いだまま… 僕はときどき震えながら… 彼らのステージを、堪能した。 「あー、何ちゃっかり手繋いでんのー」 演奏が終わって、 サエゾウが目敏くそれを見つけて、言った。 「…だってコイツが、倒れそうになってたから」 シルクはしれっと平気で言った。 「ズルいー」 言いながらサエゾウは、僕の肩を抱いた。 「…んんっ…」 僕はまた、ビクッとしてしまった。 「やっぱすげーよなあ…」 カイはしみじみ言った。 「カオルが…勃っちゃうくらい、すげーんだな…」 あああー そんなハッキリ言わないでくださいー

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