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楽しい打上げ(2)

僕らは、楽しく居酒屋呑みを満喫した。 ショウヤの語りが長引いたおかげもあり、 思いの外、長居してしまった。 皆、すっかり出来上がってしまった… 「よしゃー二次会だー」 シルク宅に向かう道中の買い物も、 それはそれは賑やかだった。 「ハイボール何本いる?」 「いーよ、10本くらい買っちゃえー」 「レモンサワーもお願いします」 「ビールもね、あ、発泡酒でいいから」 えーさっき何杯呑みましたっけ? 「ワインも買っとくか、赤白どっちがいい?」 「両方ー」 また半端に残すんでしょ… 「僕、寿司食べたいです…」 「お、いいねー唐揚げも食べたい」 さっきも唐揚げ食べてませんでしたっけ… 「カオル…お前、何持ってんの?」 僕は、ペットボトルのマッコリと、 食パンを手に持っていた… 8枚切りの… 「いや…何か挟んで食べたいなと思って…」 「何そのチョイス…オカしくない?」 「さっき何杯呑んだんだよ」 「あんなに食ったのに、まだ食うんか?」 なんでー? あなた達の買い物だって、相当オカシイのにー そんな感じに大騒ぎしながら、 僕らはシルク宅に、無事たどり着いた。 「はあーやっぱ落ち着くなー」 「うん…」 彼らは手分けして、買ってきたもの達を どんどんテーブルに並べていった。 「とりあえず乾杯しよー」 「うんうん…」 ハイボール缶と、レモンサワー缶と、発泡酒缶を手に 僕らは再び乾杯した。 シルクは、取り皿や箸を取りにキッチンに行った。 僕も、食パンを手に、後を追った。 「何か挟む物、ある?」 「何でも勝手に使っていいよ」 そう言われて僕は…冷蔵庫を漁った。 残念ながら、ハムとかベーコンとかの類は無かった。 僕は、半端に残っていた野菜… キャベツ、にんじん、ピーマンを取り出した。 「卵も貰っていい?」 「どーぞどーぞ」 僕はまず、それらの野菜を、千切りにしていった。 「ええー?カオルが包丁使ってるー」 「マジですかっ…」 ショウヤが慌ててカメラを取り出してきた。 カシャッ… 「…間に合ったー」 僕は気にせず、切り続けた。 そして千切り野菜を、ザルに入れて…塩を振った。 食パンは、とりあえず4枚、トースターに入れた。 それから、フライパンを取り出して、火を付けた。 「何か、勝手知ったるって感じー」 覗きに来たサエゾウが、冷やかすように言った。 僕はそれも気にせず、フライパンに油を敷いてから、 卵をボウルに割った。 カシャカシャッ… ショウヤがいちいちシャッターを切った。 「めっちゃ良いですー料理するカオルさん」 「俺の事は撮ってくれないくせに…」 さっさと向こうのテーブルで飲んでたシルクが、 若干僻み気味に言った。 「すいません…」 口先だけな感じで謝りながらも、 ショウヤは、手を止めなかった。 ジュワーっと、溶き卵をフライパンに入れて、 テキトーに混ぜての、形の悪いオムレツができた。 そこそこ温まった食パンにマーガリンを塗り… 野菜をギューッと絞ったものと、オムレツを乗せ、 マヨネーズをかけて…また食パンで挟む。 そしてそれを、カットして皿に盛って… あり合わせ野菜と卵のサンドの出来上がり〜 カシャカシャッ… 「カオルさん、それ持ってこっち見て貰えますか?」 「…」 言われるがままに、僕はポーズをとった… 「へえーすごいじゃん…」 「カオルに、こんな特技があったとはねー」 「シルクには全然、敵いませんけどね…」 そして僕らは、テーブルを囲んだ。 「カオルのサンド、美味いー」 「カオルさんの手料理食べれるとか、感動ですっ」 カオルのサンドの他、 唐揚げとか寿司とかもバクバク食べながら… また僕らは、順調に呑み進んでいった。 僕は、買ってきたマッコリも開けた。 「それ、美味いの?」 「…僕は割と好きですよー」 でも、ちょっとくれ…とかは誰も言わなかった… 「あ、DVD観る?」 「そーね」 そうだった…LIVEの打上げだったっけなー シルクはカイからDVDを受け取り、PCを操作した。 そして画面から、今日の映像が流れ始めた。 「この…ドラムが鳴った途端にカオルのスイッチ入るのが…気持ちいいくらい分かりやすいよなー」 「うん」 あー ホントにそうですよねー やっぱり僕は、 ちょっと恥ずかしい感じになっていた。 「新曲…めっちゃ良かったです…」 「そうそう、結構泣いてる子いたよねー」 「PVの選曲は、やっぱりこの4曲がいいです」 「そーだね、俺もそう思う」 「お前らにそう言ってもらえると、心強いな…」 ホントに… いつも客席で観ててくれる、 ハルトとショウヤの存在は大きいと思う。 「出たー!カオルとシルクとラブラブのコーナー」 サエゾウがニヤニヤしながら呟いた。 「こーれはサービスシーンでしたよねー」 「大騒ぎだったわー」 完全に、素でしたけどね… そして、画面が、神様の曲になったときに、 ショウヤが、何の悪気もなく言った。 「そういえばカオルさん…今日も誰かに向かって、手伸ばしてましたよね、誰だったんですか?」 「…」 僕は思わず答えに詰まった。 「アイツだろ…ド正面で観てたもんなー」 シルクがまた…しれっと言った。

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