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楽しい打上げ(5)

「ちょっと可哀想だったかなー」 「やり過ぎたか…」 「俺たちって、最低ー」 「…」 ハルトと3人様は、 ずーんと、反省モードに入っていた。 「そんなこと無いと思います。カオルさん、今まで史上最高に気持ち良さそうな顔してました」 さすが、真実を見抜く男。 「散々偉そうなこと言ってたくせにな…」 「この先も、こんな事があるのかなー」 「…俺たち…全然乗り越えられてなかったんだな」 寝入った僕の髪を撫でながら、 シルクがしみじみ呟いた。 「カオルって…ホントに良い子なんだよね…」 ハルトも言った。 「シキもそうだったみたいに、誰もがこの子に惹かれていくのは、どうしようもないよね…」 「…ずっと俺たちの玩具で、いてくれるかなー」 サエゾウが、僕の傍らにしゃがみ込んで、 僕の寝顔を見ながら、不安気に呟いた。 「それはまあ…俺ら次第だろうな…」 カイは椅子に座って、 残っていたハイボールを飲みながら、言った。 「…うん」 他の皆も、パラパラと、テーブルに戻った。 シルクが、僕の飲みかけのマッコリをひと口飲んだ。 「…甘っ…なんだコイツ、こんなの好きなのか…」 「え、味見させてー」 シルクはそれをサエゾウに渡した。 「…ホントだ、変な味ー」 「どれ…」 カイも飲んでみた。 「うん…悪くないじゃん」 「…ちょっと…見た目、ヤバい感じしますよねー」 「…」 一同…ショウヤを見た。 「ショウヤのむっつりスケベー」 サエゾウが冷やかすように言った。 「…えっ…だって、そう思いません?」 「そう言えばショウヤは処理しなくて大丈夫なの?」 「そーだ、なんかずっと上から目線でズルいー」 「えーっ」 そのあと果たして、 ショウヤが処理されたのかどうかは… 残念ながら、僕の与り知る所ではなかったが… 数時間後… 宴会はお開きになった。 テーブルをそこそこ片付けて、 帰り支度をしながらサエゾウとカイが言った。 「結局またココに置いてくことになっちゃうなー」 「しょうがない…」 「またヤっちゃうんだろー」 「…いや…今日はホントに…大事にしとく」 いつものサエゾウの冷やかし口調に、 シルクは真面目な顔で答えた。 「絶対だなー」 「ああ…」 「次はレコーディングだな…」 「うん」 「僕も、イメージ練っておきます!」 「あーショウヤ、今度2人でミーティングしよう」 「あ、そうですね…是非お願いします!」 ショウヤとハルトも、 もう気持ちは、先のPV撮影に向かっていた。 「頑張ろうね…」 カイのひと言に、全員が頷いた。 そして彼らは、シルクの部屋を出て行った。 ハルトとショウヤと別れて、2人になってから… サエゾウは、ポソっと言い出した。 「ねえ、カイ…」 「なに?」 「やっぱカオルってさーシルクの事が好きだよね…」 「さあ…どうかなー自覚は無さそうだけどな…」 「自覚ないのか…」 「てか、あいつは俺らの事、皆同じくらいに思ってる風に見える…」 「まーそれは、そうなんだけど…」 「…風に、無意識に見せてるのかもしらんけどね」 「カイも…カオルの事…好き?」 「好きだけど…?」 カイは、ピタッと立ち止まった。 「…」 「…でも、サエの事も好き」 サエゾウも立ち止まった。 そして、覗き込むように…カイの目を見た。 「…今日は、久しぶりにお前んち泊まろうかな…」 カイが言った。 サエゾウは、パァっと明るい表情になった。 「マジで、来て来てー」 そう言ってサエゾウは、カイの腕を掴んだ。 そしてまた、2人は並んで歩き出した。 「俺って…ただの寂しがり屋なだけなのかなー」 「…そうなの?」 「何か…誰が好きとか分かんなくなってきた。カオル置いてくのも悔しいけど、自分がシルクんちに残りたいーって、思っちゃうときもあるし…」 「欲張りだなー」 「LIVEとかリハの後とか、1人になると、すっごい悲しくなっちゃうんだよねー」 「あーそれ、いわゆる燃え尽き症候群ってやつなんじゃないの?」 「…そうなのかなー」 「酒、買ってくか…」 「あ、うん…」 「PVのイメージ…俺らも考えとこう。あと、音源のアレンジとかも練り直した方がいいだろ?」 「そだねー」 「宵待ちとかは、基本サエのイメージ推していいんじゃない?」 「そっか…そうだよなー…レコーディングだったら、シンセの音とかも入れられるし…」 サエゾウの足取りが、どんどん軽くなっていった。 「よっしゃー何かヤル気湧いてきたー」 「…ふふっ…単純だなー」 なんだかんだいって… やっぱりバンドがいちばんなんですね、 この… TALKING DOLLの人達は…。

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