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レコーディングの後(1)

処理されたエンジニアスタッフさんが、 とても快調に作業を進めてくれたおかげで、 ミックスダウンも終了した。 彼のセンスは素晴らしかった。 そのまま彼が作ったもので、僕は大満足だった。 サエゾウは、若干の注文をつけたが… それもササッと、納得いくように… 素早く修正してくれるところも、スゴいと思った。 「完成PV楽しみにしてるね」 「めっちゃ楽しみにしててー」 「ありがとうございます…」 「ホントにお世話になりました」 僕も彼に挨拶した。 「いやーいちばんお疲れ様だったね…」 「…はは」 僕は、失笑した。 そして僕らは、スタジオを後にした。 「俺は、この勢いで、続きやっちゃうからー」 サエゾウが言った。 「付き添いいる?」 「いや、大丈夫…むしろ1人の方がいいかもー」 「じゃあ、お任せでいいか…」 「うん、出来たら送るから、何かあったら言ってー」 カイが少し考えて言った。 「俺、今日店番の日だから…終わったらサエんとこ行こうかな…」 「あーそんくらいの時間だったら、もしかしたら出来上がってるかもしんないー」 「じゃそうする…」 「俺らはいい?」 シルクが言った。 「うん、大丈夫ー」 そしてサエゾウは、僕の頭をポンと叩いて続けた。 「カオルのこと、労ってあげてー」 「…」 僕はサエゾウの目を見上げた。 「お前のおかげで、皆めっちゃよかったからねー」 そう言いながら彼は、 僕の頭を自分の方に抱き寄せた。 「この先の作業も楽しみでしょうがないー」 「…よろしく…お願いします…」 サエゾウは、僕の頬にちょっとだけ口付けて… シルクの方を見て言った。 「カオル労い係…よろしくねー」 「…わかった」 「じゃーねー」 そう言い残してサエゾウは、 軽い足取りで、さっさと家に向かって行った。 「じゃあ俺もここで…」 「うん…サエのことも…労ってあげて」 「了解ー」 そう言ってカイも、自分の店の方へ別れて向かった。 そして、シルクと2人になってしまった。 「さて、どうして労ったら良いものか…」 「…」 「腹減ってる?」 「…うん」 「じゃあ、何か買って…ウチ行くか」 「うん」 そういうわけで、 僕らは帰路の途中のスーパーに寄った。 「何か食いたいもんある?」 「…うーん…」 「疲労回復サッパリ和定食にするか…」 「えー何それ、めっちゃ美味しそうな響きー」 結局シルクは、僕の意見は特に聞かないまま、 ブツブツ呟きながら、次々と品物をカゴに入れた。 ハイボール缶も数本と…日本酒も買った。 買い物を終えたシルクは、 店を出ると、早速ハイボール缶を1本を開けた。 飲み帰りですねー 割ともう、すぐに着いちゃう距離なのにな… そう思いながらも僕も… 信号待ちの間に差し出されたそれを、 受け取って、やっぱり飲んだ。 そこへ、俄かに空模様が怪しくなったかと思ったら… 急に、ポツポツと雨が降り始めた。 「ヤバっ…」 「降って来ちゃったね…」 信号が青に変わった。 そこら辺にいる人達も…慌てて走り出していた。 「…走るか」 「…うん…」 僕らも走り出した。 雨はどんどん強くなった。 大した距離では無かったが… シルクの家のビルに着く頃には、 僕らはすっかりビショ濡れになってしまった。 「ひゃー参ったなー」 「楽器持ってなくてよかったね…」 部屋に入るとシルクは、買ってきたものをキッチンにドサっと置き…さしあたり冷蔵品をバタバタと冷蔵庫に入れた。 「床がビチャビチャになっちゃう…」 僕は呟きながら…静かに部屋に上がった。 ザーザー まだ電気もつけていない薄暗い部屋に、 外の雨の音が響いていた。 僕は、その音を聞いているうちに… なんだか…身体の芯がザワザワしてくるのを感じた。 「…」 そんな僕の様子を見て…シルクが僕に近付いてきた。 「あーあービッチョビチョになっちゃったね…」 「…」 「どうしたの?」 「…」 そして彼は、ニヤっと笑いながら… ビチョビチョの僕の髪を撫でて言った。 「…雨の音聞いて、勃っちゃった?」 「…っ」 「しかも、俺が一緒だしね…」 言いながらシルクは、 勢いよく僕の身体を抱きしめると、 力強く、僕に口付けてきた。 「…んんっ…ん…」 またすぐに、彼の舌が侵入して… 激しく僕の口中を舐め回してきた。 「んんんっ…んんっ…」 シルクは、震える僕の… 股間にそっと手を伸ばしてきた。 「…んあっ…」 その手が僕のモノに触れた途端に、 身体中の力が抜けて… 僕はガクッと膝を落としてしまった。 「…ちゃんと身体が覚えてるんだ…」 そう言いながらシルクは、 少し嬉しそうに…僕を抱きしめた。

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