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レコ上げ兼ねてのミーティング(2)

楽しいレコ上げが続いていた。 ショウヤは、音源を聴きながら… でも、しっかり飲みながら食べながら… たまに、また悪い顔になって、 ニヤニヤしながらメモを取っていくっていうのを ずっと繰り返していた。 「レコーディング、大変だったでしょ?」 ハルトが言った。 「いやでも、ほぼノーミスでいけたから、最低限の時間で収まった」 「カオル効果でねー」 「何、そのカオル効果って…」 サエゾウは、レコーディングの一部始終を、 ハルトに語って聞かせた。 メモを取っていたショウヤも、 こっそり耳をそば立てていた。 「そーれは…ホントにカオル、いちばんお疲れだったんだねー」 はい… 無駄にいっぱい消耗しました… 「でもねーカオルも、めっちゃ進化したんだよー」 「そうそう、途中でフラフラにならなかったもんな」 「むしろ異常なオーラ放ってた」 「銀色のカオルが出現したんだ…」 カイが言った。 「銀色ー?」 「それは聞き捨てならないですね!」 ショウヤも顔を上げた。 「銀色のカオルに姦られて、処理必須に追い込まれたからね…」 「見事に3人ともー」 「マジかー」 「僕も姦られたいです!」 むっつりショウヤが言った。 「ショウヤは、生カオルに姦られてんじゃん」 「しかもレアな黒いやつにー」 「…」 ショウヤの顔が、ちょっと赤くなった。 「…でも、銀色のあれは相当なレアキャラだよなー」 「どの裏技でエンカウントするのか、今のところ未知数だな…」 人をポケモンみたいに言わないでください… 「でもあれ、LIVEの本番に出てこられたらヤバいな」 「あー確かにー」 「あれ出たら完全に弾けなくなくなるわ…」 ハルトがちょっと考えて…言った。 「カオルがフラフラになるか、演奏隊がフラフラになるか…?両立するのは難しいのかなー」 それを聞いたショウヤがまた、食い気味に言った。 「両立しちゃったら、ちっとも面白く無くなっちゃうじゃないですかー」 あ、ショウヤさん… スイッチオンした感じですかね… 「そこ…他のバンドには無い、トキドルさんの最大の魅力なんですからー」 「…」 「そこなのかー」 「…それだけなんだな、俺らって…」 「あーもうーすぐそうやって揚げ足取るんだからー」 ショウヤは更に身を乗り出した。 「それ、すっごい事じゃないですか!…いやもちろん、曲と演奏あっての話ですよー」 「曲と演奏は、ついでなんだな…」 「なんか、俺ら…違うハコの方がいいのかな」 「なんとか劇場みたいなー?」 「ああーもう〜そうじゃなくてーー」 ムキになっていくショウヤを面白がって、 3人様は、更に揚げ足を取り続けた。 ショウヤさん面白いなー 加勢してあげたい所だけど… また泣かしちゃったら、また言われるからなー 「あんまり苛めないであげてよー」 ハルトが加勢してくれた。 「俺も、そこ…割と最大の魅力だと思うけど?」 「…ホントに、そう思う?」 「毎回一触即発だもんなー」 「予断を許さないデンジャラスな感じがいいのかね」 「…」 ショウヤはちょっと黙って… 再び勢いよく言った。 「なんでハルトさんが言うと、皆そんな素直に受け止めるんですかー」 「あはははっ…」 僕は思わず大笑いしてしまった。 「…ショウヤさんって…ホントに可愛いですねー」 「…」 ショウヤはまた、顔を赤くした。 「カオルに可愛いとか、言われちゃってるー」 サエゾウがそんな風に言うので、 ショウヤは更に恥ずかしがってしまった。 「可愛いと、苛めるんですよ、この人達…」 僕はショウヤに言った。 「大好きってことですよ…カメラ通して見たら、バレますよ、きっと…」 「…」 あ、しまった… またショウヤの目が、ウルウルしてきてしまった… 「…上手いこと言うな…郁…」 カイが言った。 「ホントにその通りだ…所詮、俺らはショウヤには、嘘がつけないんだった…」 「それってスゴくないー?」 「そうだ…色々握られてるんだよな、ショウヤに」 「…」 あーもう、こうなったら… 僕だけのせいじゃありませんからねーー 「あ、パスタいく?」 「食べるー」 その場を逃げるように、 シルクが立ち上がってキッチンの方へ行った。 サエゾウも後をついていった。 「俺…一服するわ…」 カイも立ち上がった。 「あ、俺もー」 ハルトも便乗した。 「…」 そして、ショウヤと僕だけが… その場に残されてしまった。   また泣いちゃうのかー?   …と思ったら、 ショウヤは、少しニヤつきながら、ボソッと呟いた。 「…カオルさん…」 「…何ですか?」 「…あの人たち…めんどくさいですね…」 「…っ」 「…好きなんだから、カオルさんの事も…もっとちゃんと大事にすればいいのに…」 「…あはははっ…」 僕はまた大笑いした。 「ホントに、それなー」

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