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レコ上げ兼ねてのミーティング(3)

「パスタ大盛りきたよー」 サエゾウが、パスタが山盛りに盛られた大皿を ドンっとテーブルに置いた。 「美味そうー」 「めっちゃ美味そうですね!」 緑色の…シンプルなバジルソースが絡まっていた。 「自家製バジルソースだってー」 後からシルクは、 炊込みご飯の盛られたどんぶりを持ってきた。 「こっちはめっちゃ和風だな…」 「…鶏肉のご飯ですか?」 「…うん、美味しそう…」 「いただきまーす」 割と既にいっぱい食べてる気がするけど… 炭水化物は、別腹なのだ。 僕らは、またモリモリ食べた。 「カオル、ちょっと食べ過ぎじゃなーいー?」 「サエさんに言われたくないです」 「ホントお前らよく食うよな…」 呆れたように… でもちょっと嬉しそうに、シルクが言った。 「シルクのご飯が美味いのが悪いー」 「そういう事ですよね…」 「俺が太ったらシルクのせいー」 「あはははっ…」 「…カオル、今日よく笑うね」 ハルトが小さい声で、カイに言った。 「そーだな…やっぱレコーディングで、何か突き抜けたんかな…」 「…次のLIVEが楽しみだね」 「楽しみなような…空恐ろしいような…」 「…ふふっ」 パターン! …と、急に何だかスゴい音がして、 皆がそっちを見ると… ショウヤが、今まで座っていた所から消えていた。 「…?!」 えええーっ!? と思ってよく見たら、床に転がっていた。 「ショウヤ!」 「どーした…」 シルクが駆け寄って、彼を抱き起した。 「…」 僕も立ち上がってそっちへ行って、 ショウヤの傍にしゃがみ込んだ。 「大丈夫ですか?!」 「…はい…」 ぽーっとした表情で、ショウヤは応えた。 「ビックリしたー」 「寝落ちたんか?」 「ケガは…ない?」 「…たぶん…」 「書き物しながらガンガン呑んでたからな…」 「変な酔っ払い方しちゃったんかなー」 シルクに支えられて、フラフラと立ち上がりながら… ショウヤは呟くように言った。 「…帰ります…」 「そうだな…それがいいかも」 「1人で帰れるー?」 「…はい…」 ぽーっとしながら、 ショウヤは黙々と帰り支度を始めた。 「カオル、お前送ってやれよ」 シルクがしれっと言った。 えええっ…僕ですかー? 他の3人も、顔を見合わせて言った。 「そうだね、家近いし」 「ショウヤも、それがいいでしょ」 「うん…ショウヤのこと頼むわー」 「…」 何か… めんどくさいから押し付けてるとか、ありません? 「…わかりました…」 致し方なく、僕も帰り支度をした。 そして、ショウヤの後を続いて、玄関に向かう僕に… シルクが小さい声で言った。 「ショウヤに、優しくしてやって…」 「…」 「いつも俺らにしてくれるみたいに…」 「…う、うん…」 そして僕は、 ショウヤと一緒にシルクの部屋を後にした。 「いいのー?」 サエゾウが、シルクに後ろから抱き付いて、言った。 「…何が?」 「カオル、ショウヤにヤられちゃうかもよー」 「…ふっ…今更、お前がそれ言うか」 「いや…でも、いいんじゃない?」 「そうだな、ナイス人選だと思うわ」 残った4人は、再び乾杯した。 「これから、ショウヤに…もの凄く頑張って貰わなきゃならなくなるからな…」 「カオルの事、よーく分かっといて貰わなきゃねー」 「…」 シルクは、ほんの少しだけ…複雑な表情をしていた。 シルクの部屋を出て… 僕はショウヤの腕を掴んで歩いていった。 ショウヤの足取りは、相当フラフラしていた。 「大丈夫ですか…?」 「…んー」 「家…着きましたよ、どっから入るんですか?」 「…上…」 よく見ると、写真屋の建物の横に、 2階に通じる細い階段があった。 うわー 階段上るの大変そうだな… 僕は、彼を支えながら… 必死に、その階段を上った… ようやくドアの前にたどり着いて、僕は彼に訊いた。 「ショウヤさん、鍵は?」 「…」 ショウヤは、覚束ない手つきでポケットを探った。 「…ない…」 「えええっ!?」 「反対のポケットは?」 「…んーない…」 「カバンに入ってないんですか?」 「…入れてない…」 えええーっ 「…」 そうこうしているウチにも… ショウヤはそこにしゃがみ込んでしまった。 「ショウヤさん、家族の人は?」 「…んー今日は…居ない…」 「…」 どうしよう…シルクんちに戻るか… いやでも、この状態で、またあすこに居てもな… しょうがない… 僕は、再びショウヤの腕を掴んで立ち上がらせた。 「うち…行きましょう」 「…」 そして僕は、フラフラなショウヤを… 自分の部屋に、連れて帰ることにした。 あーまた階段だった… しかも3階…

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