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働いたあとの2人(2)

「…カオル…?」 シルクは、僕の中から自分のモノを引き抜いて、 僕の身体を拭いた。 そして満足そうに僕の顔を撫でると、 何度も僕を呼んだ。 「カオル、おい…カオル…?」 「…ん…っ」 彼は、朦朧とする僕の、 シャツをちゃんと着せなおしながら、 穏やかに微笑んで、僕を見下ろしていた。 「…」 僕はだんだんと…正気を取り戻した。 「大丈夫んなった…?」 「…ん…」 僕は小さく頷いた。 シルクは、僕の身体に布団をかけると、 いったん立ち上がって、キッチンの電気を消した。 そして、再び僕の隣に潜り込んだ。 「…なんか…ヤバくない…?」 僕は呟いた。 「何が…?」 「僕…」 「なんで?」 「いっつもこんな風になるように…なっちゃったのかな…僕の身体…」 「…いいじゃん…」 「…よくないよ…」 「なんで?」 「…だって…」 シルクは、僕の頭の下に、自分の腕を滑り込ませた。 そして僕の頭を自分の方に抱き寄せた。 「玩具的には、みんな大喜びだと思うけど?」 「…」 「開発してくれたショウヤに感謝だ…」 「…」 …そうだった… 所詮、僕は玩具担当なんだっけなー 「サエと2人んとき、そんなんなってみろ…あいつ泣いて喜ぶわ…」 それを聞いて僕は、ふふっと笑った。 「…カイだったら…」 「…僕が失神しても、容赦なくヤり続けそう…」 「あはははっ…よく分かってんなー」 そう笑いながら彼は、 もう片方の手で僕の顔を押さえると… そっと優しく口付けてきた。 「…ん…」 「みんな…お前が大好きなんだよ…」 ゆっくり口を離れたシルクは、 少しだけ複雑な表情で、そう言った。 「撮影もあるし…お前の新曲もできたし…これからまた色々、忙しくなるな…」 「…そうだね」 シルクは、僕の頭を抱いたまま仰向けになると、 大きくあくびをした。 そしてそのまま、静かに目を閉じた。 このバンドに巡り会えてよかった… 例え玩具担当でもね。 これから先の、そんな忙しい色々が、 僕は楽しみで仕方がなかった。 そして、シルクの腕に抱かれる心地良さを、 しみじみ感じながら… 僕もまた、ゆっくり目を閉じた。 ちょうどその頃… 店番をしていたカイの店に、 サエゾウが遊びに来ていた。 他のお客さんと、少しセッションを楽しんでから、 カウンターに戻ったサエゾウに、カイは切り出した。 「また、アヤメさんからオファーきた」 「…そうなんだー」 「どーする…出る?」 「…」 サエゾウは、少し考えてしまった… 「カイは、どう思うー?」 カイは、煙草に火を付けながら言った。 「普通なら、めっちゃ有難い話なんだけどな…」 「だよねー」 「出るか」 「そーだねー」 「…」 「また…カオル犯られちゃうかもしんないけどー」 サエゾウも、 少し複雑な表情で…煙草を咥えた。 「シルクが…何て言うかな…」 「どうだろうな…」 しばらく黙って考えていた2人だったが… やがてお互いに顔を見合わせながら言った。 「意外にあいつ強がりだからな…」 「ねー、全然オッケーって言いそうー」 「じゃあ、出るか」 「うん、良いと思うー」 そしてカイは、 トキドルLINEに、その旨を流した。 ほどなく… ピコン…と、2人のスマホが同時になった。  おけー シルクからだった。 「あはははっ」 「やっぱりー」 「でも、PVも楽しみだけど…LIVEも楽しみだよな」 「うん…カオルがどうなってるかー」 「カオルも…だけどさ…」 「俺らも上手くなったもんねー」 「あははは…自分で言うか…」 そして、他のお客さんがみんな帰ってから… 店を片付けるカイに向かって、 サエゾウは、少し言いづらそうに…言った。 「今日俺んち…来る?」 「…」 カイは、片付けの手を止めて… サエゾウに近寄った。 「なに…また淋しがりなの?」 「…音源、作り終わっちゃったからかなー」 「あはは、また燃え尽き症候群なのか…」 「そうかもー」 カイは、サエゾウの頭をポンと叩きながら言った。 「いーよ、喜んで行くわ」 「マジで?」 サエゾウの表情が、パァッと明るくなった。 「そんな嬉しそうな顔すんな…」 カイは、そう言いながら… 彼の顔に、自分の顔を近付けた。 「キュンキュンしちゃうわ」 「…ふふっ…カオルかー」 言いながら彼らは… どちらからともなく、口付けてしまった。 「また、あいつと対バンするってさ…」 僕の布団から、LINEを返していたシルクは… 寝ている僕に向かって言った。 返事は無かったが… 「覚醒したお前を、見せつけてやったらいい…」 シルクは更に、悪い顔になって言った。 「のし紙付けて進呈してやる…」

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