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宵待ちのピクニック(2)

スーパーで色々と買い込んでからの… 僕らは、弁当作りを始めた。 「もち米…少しもらうね」 「どーぞどーぞ」 僕は、普通の米ともち米を、半分ずつ入れて研ぐと… さっき茹でておいた小豆を、汁ごと入れた。 そして炊飯器にセットした。 その間シルクは、大きな鶏モモ肉を3枚… ひと口大に切っていった。 「卵焼きは任せる…」 「んーわかった」 僕は、ボウルに卵を割っていった。 「チーズ入れてもいい?」 「は?」 「とけるチーズ」 「いいけど…」 勝手知ったる感じで、 僕は冷凍庫から溶けるチーズを出して、卵に入れた。 砂糖も入れた。 「味の想像がつかないな…」 「そう?美味しいんだよー」 僕は構わずそれを、泡立て器で混ぜていった。 「四角いフライパンは無いのね…?」 「無い」 仕方ない… 普通のフライパンで頑張ろう… 僕はフライパンに薄く油を敷いて… しばらくしっかり馴染ませた。 まー元々、とても良いフライパンなので、 焦げつく事はないと思うが… そして少しずつ卵液を流しては… クルクルと巻いていった。 「上手いじゃん…」 言いながらシルクは、 鶏肉をしっかり下味に漬けていった。 割と太めの卵焼きが、2本できた。 「ウインナーは、タコさんにしてもいい?」 「好きにして、お前の運動会だから」 「…」 僕は、小さい包丁を借りて… あるだけのウインナーを、全部タコさんに切った。 シルクは、ブロッコリーに取り掛かっていた。 小房に分けたブロッコリーは、 色良く茹でられた。 「…じゃがいもも揚げるか…」 呟きながらシルクは、 じゃがいもを取り出して、輪切りにしていった。 僕はまた、フライパンで… ウインナーを炒めていった。 「すげー何か、タコ大量発生してる…」 「あはははっ…」 それから、シルクは揚げ物の準備に取り掛かった。 唐揚げの衣は、卵と小麦粉と片栗粉… ちょっとフリッターに近い感じだった。 僕は、ミニトマトを洗って、 それも小さい包丁で、半分に切っていった。 「あとはご飯だな…」 ちょうど、炊飯器がカチッと鳴った。 「いったん一服するかな…」 僕らはまた、並んで煙草を吸った。 「全然間に合いそうだったね…」 「うん…やっぱ2人でやると早いな…」 僕は黙って微笑んだ。 シルクと一緒に料理してることが、 僕は楽しくて仕方なかった。 そして、シルクが揚げ物と格闘している間に… 僕は炊き上がった赤飯を、 全部おにぎりにしていった。 シルクが、棚の上の方から、重箱を取り出してきた。 「…すごーい!こんなの持ってたの?」 「だいぶ前に、お袋がこれに色々詰めて持たせてくれたんだけどね…捨てなくてよかったな…」 「へえー…シルクのお母さんも、きっと料理上手なんだろうな…」 「まー普通だったよ…」 僕らは、出来上がった物を、 その重箱に、ギュウギュウに詰めていった。 「めっちゃ美味しそうに出来たねー」 「ああ…」 僕はとりあえず、それを並べて写真を撮った。 「ふうー」 シルクは洗い物をしながら、大きく溜息をついた。 「…疲れちゃった?」 「うん…」 僕は、そっと…その背中に…抱きついた。 「…何?」 シルクの背中に顔を埋めながら… 僕は小さい声で言った。 「一緒に作るの…すごく楽しかった…」 「…」 彼は、キュッと水道の栓を閉めると… 手を拭いて…振り向きながら僕の腕を振り解いた。 「あんまりキュンキュンさせないでくれる?」 「…」 「またヤりたくなっちゃうじゃん…」 言いながらシルクは、 僕の顔を両手で押さえた。 そして、ゆっくり顔を近付けてきた。 「…ん」 僕も、彼の背中に腕を回した。 抱き合いながら… 僕らは何度も何度も…口付けた。 「そろそろ行くか…」 「うん…」 やや陽が傾きかけた頃… 以前サエゾウと一緒に、 まさに宵待ちの月を見上げた公園に、 僕らは集合した。 公園の一画に、既にブルーシートが敷かれ… ハルトの大荷物が置いてあった。 ショウヤは、 カメラを持って公園内をウロウロしながら、 撮影ポイントを探っていた。 カイが大きなクーラーバックを抱えてきた。 「飲み物…足りるかな…」 「足りなくなったら、買いに走ったらいい」 最後にサエゾウもやってきた。 「…お弁当も…足りるかな…」 「足りなかったら、お前とサエで買いに走って」 そして僕らは… 夕暮れの公園の一画で…酒盛りを始めた。 花見の季節でもない、普通の日の夕方に、 それはおそらく、通りすがる人から見たら… とても異様な光景だったに違いないー

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