148 / 398

宵待ちの余韻(1)

それから僕らは、手を繋いで… サエゾウの家に向かった。 「小腹空いたなー」 「お弁当…割と少なめでしたもんね…」 「何か作ってー」 「…じゃあ、買い物していきましょうか…」 そんなわけで僕らは、 こないだ僕が買い物した100円ショップに寄った。 パン売場の前で、サエゾウが言った。 「あーサンド食べたい、カオルのサンドー」 「サエさんち、ハムとか野菜とかあります?」 「んーたぶんない」 「マヨネーズとかマーガリンは?」 「んーマヨネーズはあると思う…」 あやしいなー サエさん、マヨネーズとマスタードの違いとかも分かってない恐れがあるからなー 僕は一応、マーガリンを買った。 あとは、食パンと… 無難なところで、ハムと… 袋入りの千切りキャベツを買った。 これならまあ、マーガリンさえあれば何とかなる。 「唐揚げ食べたーい」 「さっきあんなに食べたでしょっ…」 「もう消化しちゃったー」 「…」 あの家で、揚げ物が出来る気は… これっぽっちもしなかった。 僕は、冷凍の唐揚げを選んだ。 「あ、餃子も食べたーい…コーンも食べたーい」 うっかり冷凍食品コーナーに行ったもんだから、 余計なものが目に入ってしまったかー まいっか、マーガリン買ったし、 コーンバターもどきなら出来るな… 「ポテチも買おうー」 そう言ってサエゾウが持っていたのは、 ポテトチップではない、コーンスナックの袋だった。 ああ…サエさんには、 袋に入ったスナックは、みんなポテチなんだな… それにしてもサエさんて、 ホントによく食べるよなー それからもちろん、ハイボール缶も買って… 割と大荷物を抱えて、僕らは店を出た。 そして、ようやくサエゾウの家にたどり着いた。 僕は、早速… 買ったものを袋から出して、キッチンに並べた。 「カオルが来るの久しぶりー」 言いながらサエゾウは、そんな僕に抱きついてきた。 そして僕の顔を両手で押さえて、口付けた。 「…んっ…」 僕はゆっくり、口を離すと… 彼の腕を振りほどきながら言った。 「サエさんも…手伝ってくださいね」 「えー?」 「一緒に作るの…楽しいですよ」 「…」 そして僕は、 次々にサエゾウに指示を飛ばした。 「唐揚げ、袋から出してお皿に並べてください」 「はーい…」 「で、レンジであっためてください」 「何分ー?」 「書いてあるでしょ、袋の裏にー」 「んー全部だから、3分30秒かなー」 「たぶん、そんくらいです…あったまる間に、その袋のキャベツを、半分くらい、大きめのお皿に盛っといてください」 「んーどんくらい?」 「その上に唐揚げが乗ることを想定してください」 「あーなるほどねー」 サエゾウは、若干たどたどしい手つきで、 キャベツを皿に盛っていった。 僕はその隙に、フライパンでコーンバター いや、コーンマーガリンを作った。 そして、そのあとに… フライパンで、冷凍餃子を…焼き始めた。 チーン 「唐揚げできたー」 「じゃあ、キャベツの上に乗せてください」 それから僕は、 空いたオーブンレンジに食パンを並べた。 きっと全部食べちゃうだろうなと思って、 ちょっと無理に重ねて、全部入れてしまった。 「なんか重なってるけど、これでいいのー?」 「ホントはダメですけど、いい事にします…」 そうこうしているうちに、餃子も焼き上がった。 「美味そうーお店の餃子みたいじゃんー」 冷凍食品ってのは、 大概、店みたいに作れるモノなんです。 パンが何となく焼けてから、 僕はそれにマーガリンを塗って… キャベツとハムを挟んでいった。 マヨネーズは、ちゃんとあった。 それも塗った。 ケチャップもあったので… 半分は、ケチャップ味にしてみた。 「なんか豪華になったー」 テーブルに並んだ色々を見て、 サエゾウは、目を輝かせた。 そして、スマホで写真を撮った。 「シルくんに送っていいー?」 うわーヤバい… こんな恥ずかしい冷凍メニュー… 見られたら笑われるー 止める間もなく、彼はさっさと送ってしまった… 「よっしゃー乾杯しようー」 僕らはテーブルを囲んで、 ハイボール缶で乾杯した。 「いただきまーす」 「いただきます…」 「カオルサンド美味ーい」 まー挟んだだけですけどね… 「こっちの…何か味違う、ピザみたいな味するー」 あ、ケチャップ入ってる方ね。 「コーンバターも美味っ…居酒屋のやつが家で食べれるって嬉しいー」 マーガリンですけどねー 「餃子も美味いー」 ちゃんと工場で、 美味しく味付けしてくれてますからねー そして僕は、 冷凍の唐揚げを食べながら…言っておいた。 「シルクの唐揚げも美味しかったけど…サエさんの作った唐揚げも美味しいですね…」 それを聞いたサエゾウは、目を輝かせて言った。 「だよなー俺が作ったの、美味いよなー」 チンしただけですけどね…

ともだちにシェアしよう!