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因縁の打上げ(1)

シルクの家に着くと、 まずサエゾウは、スマホを取り出して… 早速、出前メニューを漁った。 「ピザどれがいいー?」 「パイナップル乗ってなければどれでもいい…」 「だよねー」 「えー?パイナップル乗ってるのがいい」 「メンドクサいなー」 「色んな味のヤツでいいんじゃない?」 「よし、じゃー4種類の味のLサイズ2枚ねー」 「Lかよー」 「唐揚げは、中華屋さんーっと…」 「え、2皿?!」 「寿司は…小さくていっか…2000円のやつー」 「十分デカいわ…」 そうこうしているうちに、 シルクは冷蔵庫から、色々取り出していた。 「…ごめんね、僕がうっかり言ったばっかりに…」 僕はシルクに言った。 「ホントだよ…しかもあんなに頼んで…ホントにそんな食えんのか?」 「…」 僕は、ちょっとシュンとしてしまった… それを見てシルクは、 僕の頭を、優しくポンと叩いた。 「…嬉しかったわ…お前が、そう言ってくれて」 「…」 「ま、あり合わせだから、期待すんなよ」 「…ありがとう」 そう言いながら、見つめ合った僕らは… どちらからともなく、口付け…そうになった。 「もうー何いい雰囲気んなってんのー!とりあえず乾杯するよー」 サエゾウが、 若干プンプンしながらそれを遮るように叫んだ。 僕らはハッとして、顔を見合わせると… ふふっと笑った。 「今日もお疲れ様でしたー」 「乾杯ー」 「にゃー」 乾杯を済ませると、 シルクはまた、しゅっとキッチンに行った。 「カオルーこれでも出しといて」 彼は、ミックスナッツの袋を僕に手渡した。 僕は皿を取り出して、それを空けて、 テーブルに持っていった。 「はい、これもー」 あっという間に、シルクは… きゅうりとチーズとサラミを切って、 キレイに皿に並べた。 「…やっぱシルクさん、すごいですねー」 ショウヤが、しみじみ呟いた。 「あ、今日のDVD観たいよな?」 「うん」 「じゃあ、カオル…これ皮剥いて千切りにしといて」 「…わかった」 シルクが、DVDを流す準備をしている間に… 僕は、じゃがいもの係になった。 それを見て、ハルトが言った。 「いい助手もできた事だしね…」 ほどなく、PCからDVDが流された。 「うわーカオルめっちゃ悪い顔してるー」 「そうそう、この悪い笑顔…スゴいよかったです」 「ハルトの呪文効果だな」 「何ですか、それ?」 サエゾウが、ショウヤに… 本番前の楽屋での出来事を語った。 「それで、こんなんなったんですねー!」 「単純だろー」 「あはははっ…」 あーまた、 人をネタに面白がってる… キッチンに戻ってきたシルクは、 鍋でほうれん草を、シュッと茹でると、 すぐにザルに開けた。 「これも、冷めたら切っといてくれる?」 「わかった」 そして彼は、フライパンに油を敷くと… 生姜とニンニクを丁寧に炒めた。 そして、少し厚めの小間切れの豚肉を… いったん焼いて皿に取った。 「肉だけ先に焼くんだ…」 その丁寧な仕事ぶりを、僕はポカーンと見ていた。 それから、そのフライパンに… 僕が千切りしたじゃがいもが投入された。 ジューーッという音とともに、 とても良い香りが漂った。 「あーもう、集中できなーい…良い匂いーっ」 向こうでサエゾウが叫んだ。 じゃがいもに火が通ると、 シルクはフライパンに豚肉を戻すと、 何やら中華風の瓶の調味料で、味付けしていった。 最後に、切ってあったピーマンが投入された。 僕はほうれん草を切った。 しっかり水気をきって、ボウルに入れた。 「はい、これオッケー」 フライパンの中身が大皿に盛られた。 「うわー美味しそうー」 僕は呟きながらそれを、テーブルに運んだ。 「これかー良い匂いのやつー」 「中華だ」 「すんごく美味しそうですね」 「お前も食べてていいよ」 シルクは、僕に人数分の箸を渡しながら言った。 「ありがとう…いただきます」 僕は言われるがまま、遠慮なくテーブルについた。 そして、早速それを食べた。 「うーー…美味しい…」 「美味いー」 「マジで中華屋の味だな…」 みんな大絶賛だった。 それからシルクは、 中くらいの皿に盛った、 ほうれん草の和え物を持ってきた。 「順番的にはこっちが先だったな…」 「おおー今度は和風だ…」 「いただきます…」 「シルくん母さんの味ー」 「美味しいですね…」 ちょうど旬なこともあり… とても美味しいほうれん草だった。 「よかったね、カオル…」 ハルトが僕に言った。 「はい…ホントに…沁みます…」 僕は言いながら…バクバクと食べ進めた。 シルクは僕の隣に座り、 自分もちょっぴり味見をしながら… 満足そうに、ハイボール缶を飲んだ。 ピンポーン 「お、来た来た…ピザかなー寿司かなー」 サエゾウがいそいそと、玄関に向かった。 「さっさと食べないと、テーブルに乗り切らなくなるな…」 呟きながらシルクが、僕の方を見た。 「…そんな心配ないか」 「…」 既に、2つの皿は ほぼきれいに食べ尽くされていた…

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