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因縁の余韻(4)

昨日の残り物をキレイに食べ切って… 僕らはテーブルを片付けた。 食器を洗いながら…僕はふと思い出した。 こないだサエさんに… まさに洗ってる最中に襲われたっけなー 僕はチラッとシルクを見た。 彼はテーブルを拭いたあと… 僕が洗った食器を、 次々と布巾で拭いて、戸棚に仕舞っていた。 襲い掛かってきそうな気配は、微塵もなかった。 「…」 「何ニヤけてんの?」 「…サエさんがね…こないだの…宵待ち撮影の後…」 「皿洗いしてるお前を、後ろからヤった…」 「えーっ…何で知ってるの?」 「…マジか」 「…っ」 「サエのやらしいは、ホントにすげーな…」 シルクは、何でもない風に… 笑いながら言った。 「そんで…何?…俺にもして欲しいの?」 「いや…大丈夫です」 僕は、水道の蛇口をキュッとひねった。 「なーんだ…」 シルクは、持っていた布巾を置いて… 僕の身体を、背中から抱きしめた。 「…」 「じゃー俺は今度、包丁握ってるときのお前を…襲ってやる…」 「あははは…それ、うっかり刺されちゃったり…するんじゃない?」 「…それはそれで…気持ち良いかもな…」 「ふふっ…またそれ…曲になりそう…」 言いながら僕は… 僕の身体の前のシルクの腕に、自分の両手を添えた。 「いっそ…今すぐお前に刺さたい…」 シルクは、僕の肩に顔を埋めながら言った。 「…」 サエさんといい… ここの人たちは、普段あんなに面白いのに… 実は意外に、自虐的というか…厭世的というか… まあ僕も、他人のことは言えないけど。 「シルクも1人のとき…寂しいって思う事ある?」 「…そりゃあるさ」 彼は、僕を抱きしめる腕に力を込めながら続けた。 「…お前と出会ってからは…特にね…」 「…」 「お前が帰った後とか…」 「…」 「…お前が…サエんち行っちゃったときとか…?」 それを聞いて、 僕はどうしようもなく胸が締め付けられた。 「…僕は…どうしたらいいんだろう…」 シルクは、いったん腕を緩めると、 僕の身体を自分の方に向かせた。 「ふふ…なんてね…」 「…っ」 「そんな事言ったら、お前どこにも行けなくなっちゃうだろ?」 「…」 「今は、サエが寂しがってるかもしれない」 「…あーそうかも…」 「もしかしたら、カイが一緒かもしれないけどね」 「…だったらいいんだけどな」 「皆お互い様で…皆同じくらいなんだと思うよ」 「…」 「俺だって…お前ひとりにして、またサエと一緒にいる日があるかもしれないし」 「…っ」 あの日の、何とも言えない変な気持ちが、 僕の頭に蘇った。 それを考えると… 今こうして、シルクの腕の中にいられる事が、 何としあわせな事か。 僕は、彼の背中に両手をまわして、 彼の胸に顔を埋めた。 シルクは、僕の髪を撫でながら、言った。 「俺は…お前が皆の事を、同じくらい好きだって事を知ってる…お前に執着する気は…更々ない」 「…」 「ただ…時々…こうやって、俺の側に居てくれれば、それでいい…」 「…うん」 それしか無かった。 何よりバンドがイチバンな僕らにとって… 玩具担当の僕は、そうしていくしか無いのだ。 実際…僕は本当に… 皆の事を同じくらいに好きだった。 皆に弄ばれる事も、好きなんだと思う… ただ… 何故か…シルクに対して… ときどき変な気持ちが湧くっていうだけ。 「寝るか」 「…うん」 僕はそっと…シルクから離れた。 彼はキッチンの電気を消した。 そして僕の腕を掴むと、そのまま引っ張って… 勢いよく、僕の身体を布団に押し倒した。 「…あっ…」 僕はその衝撃に、思わず声を上げた。 それからシルクは、こっちの部屋の電気も消した。 そして改めて… 僕の身体の上に覆い被さった。 「…もう容赦しない」 「…」 「死ぬほど上書きしてやる…」 言いながら彼は、勢いよく僕のくちびるを塞いだ。 「…んんっ…」 激しく侵入した彼の舌は… 僕の口の中を、踊り回るように刺激してきた。 僕はもう…それだけで頭がボーッとなり… 身体の芯が、グニャグニャと溶け出していくような… そんな感覚に襲われた。 「あーあ…またそんな顔になっちゃった…」 口を離れたシルクは、 ニヤっと笑って囁くように言った。 彼は、僕のシャツを脱がせた。 そして僕の…上半身の…首から、肩から…胸… 両腕…手の指の先まで…まさに上書きするように、 順々にくちびるを這わせていった。 口を這わせながら、彼はたまにペロッと舌で舐めた。 「…んんっ…」 その柔らかいくちびるの感触と、舌の刺激に… 僕はいちいち身体を震わせた。 仕上げにシルクは、僕の手を掴んで、 手のひらや指の間を舐めながら… もう片方の手で、僕の乳首を愛撫し始めた。 「んん…はぁっ…あっ…」 手を舐められるって…こんなに気持ちいいんだ… そんな風に思いながら…僕は、 ビクビクしながら…シルクを見上げた。 「…あーもう、ホントその顔…勘弁して…」 彼は真剣に、困ったように言った。 「ゆっくりいっぱいヤりたいのに…俺がもたない…」

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