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神様の宴(1)

その日は、隣駅にある、 ショウヤの家所有の撮影スタジオに集合だった。 今度は…ボクらの神様の、PV撮影が始まるのだ… ビルの上の方の2階部分がスタジオになっていて、 いくつかのセットの部屋が作られていた。 オシャレなリビングとか、寝室とか… 教室とか、病院とか… そして今日僕らが占領するのは、 チャペルのセットの部屋だった。 まーた、酒をいっぱい買い込んできてしまった。 「ここって、アルコール持ち込んでいいの?」 「いい事にしました。今日この階使うのは、僕らだけですから」 さすが経営者特権! 「今日もハリキっていくよー」 ハルトは、巨大なゴロゴロを開けると… 次々と、ド派手な衣装を取り出して、ハンガーに掛けていった。 「すごーい」 「まさにサーカスだな…」 「準備できたら呼ぶから、とりあえず飲んでていいよ」 ハルトにそう言われて… 僕らは遠慮なく、ハイボール缶で乾杯した。 ショウヤは、そのチャペルの端の方に三脚を立てた。 それから、どっかから脚立を持ってきて、 壁の上の方にも、カメラを設置した。 「なんかスゴいアングルで撮るんだな…」 「はい、折角だから、宴を見下ろす感じにしたくて」 ウキウキした感じで答えながら、 彼は着々と準備を進めていった。 「はい、衣装の準備出来たから、着替えてー」 ハルト先生が、皆に向かって言った。 生徒の4人は、わらわらと、 ハルトに指示された衣装に着替えていった。 カイは、団長とか猛獣使いなイメージな、黒地に、所々豹柄があしらわれた俺様スーツ。 シルクは、トランプのジャックなイメージか、黒地に、赤金紫の模様が散りばめられた、シュッとしたゴシック調の上下。 うって変わってサエゾウは、白とシルバーを基調にパステルカラーのキラキラな、華やかなブランコ乗りのお姫さまのようなイメージだった。 「…何か…僕だけイメージ違いません?」 僕に充てられた衣装は…割とフツーなシャツと半ズボンだった。 まあ、若干ゴシック調ではあったが… 「だってカオルは生贄だからねー」 「…っ」 そーいう事ですか…   「出来るところまで、自分でメイクできる?」  「いつもの感じでいーのー?」 「ドーランは、この色使ってね」 「何かこれ、どっかの白いバンドみたいな色じゃなーいー?」 「あー大丈夫…あれより全然カッコよくなるから」 ハルトは言い切った。 着替えたサエゾウは、テキパキと顔を塗っていった。 その隙に、ハルトは、 カイとシルクの顔を仕上げていった。 素晴らしい手際の良さだった… 「カオルも、下地は自分で塗っといてね」 「あ、はい…」 僕に渡されたドーランも、割と白かった。 「うわああー素晴らしいですねーー!」   出来上がったカイとシルクを見て、 ショウヤはキラキラと目を輝かせながら、 歓喜の叫びを上げた。 いつもより、だいぶ濃い目のメイクの2人は、 その派手な衣装効果も相まって、 何というか…ファンタジーの世界の人というか… ロールプレイングゲームのキャラというか… とにかく、違う世界の人に見えた。 「先に、2人のソロショットを撮りますね…」 そう言ってショウヤは、カイとシルクを向こうへ連れて行った。 スピーカーから、神様の曲が流れた。 それに合わせて、場慣れた彼らは、 カメラの前でカッコよくポーズを決めていた。 ハルトはサエゾウに取り掛かっていた。 「今日はサエも、ヅラにするから」  そう言いながら、ハルトは… 白に近いシルバーのウィッグを取り出した。 「わおー良い色〜」 そして、割と白塗りに近い顔に… ピンクや水色の、パステルカラーを交えたメイクを施していった。 「…ホントにお姫様みたい…」 僕は思わず呟いた。 「ふふっ…カオルもお姫さまになりたい?」 「あ…いや…その…」 「カオルのお姫様見たいー、後で着てみてー」 「…」 「はい、サエ姫完成ー」 「ふふん…」 ナルシストサエゾウ…いや、サエ姫は、 またも…そんな自分の姿に酔っていた。 いやでも…酔っても致し方ない… また一層ド派手な衣装に、負けないオーラを… 彼は放っていた。 「サエさん出来たら、こっち来てくださいー」 サエ姫が向こうに行くと… またショウヤの歓喜の雄叫びが聞こえた。 「さて…と、カオルいくね…」 「…はい」 ハルトは僕を、 自分の座っている椅子の前に座らせた。 そして、いつものように… まずは、アイライナーを引いていった。 「目を…瞑ってて…いいっていうまで、絶対に開けちゃダメだからね…」 「…はい」 僕の頭に…デジャヴが湧き上がった。 「…っ」 と、まさにそのデジャヴと同じように… 僕のくちびるに、生暖かいものが重なった。 「…ん…んんっ…んっ…」 そしてそれは、デジャヴ以上に… 僕のくちびるをこじ開けて、舌を侵入させてきた。 「…んんっ…んっ…」 僕は思わず、身体を捩った。 ハルトは… (いや、目を瞑ってるので誰か分かんないけど、間違いないだろう) 震える僕の両肩を、ガッチリ掴んで… 更に激しく舌を絡ませてきた。 それどころか、彼の手は… 今着たばかりのシャツのボタンを外して、 僕の胸元に滑り込んできた。 そして彼の指は、僕の乳首を捕らえた。 「んんっ…ん…」 僕は更に…ビクビクと身悶えた。 「あーあれか…今日は、メイクしながらスイッチ入れる作戦か…」 向こうーの方で、そんなシルクの声が聞こえた。

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