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神様の余韻に浸る

気がつくと… 僕は、ひとりで自分の布団に寝ていた。 「…」 僕は…必死に記憶を手繰り寄せた。 えーと… そうだ、カイさんと… 自分の身体を触って見ると、 辛うじて、シャツと下着は着ていた。 …帰っちゃったのか… 「…」 僕は少しだけ、寂しい気持ちになった。 そして、枕元に畳まれていたパーカーのポケットから、スマホを探り出した。 LINEにバッジが付いていた。 開けてみると…カイからメッセージが入っていた。  放置してってごめん  曲が浮かんで、すぐに作りたくなったから  悪いけど帰るね 「…」 そうなのか… シルクと言い… 何でそのタイミングで曲が浮かぶのかなー 僕はひとりで、ふふっと笑った。 今頃、打込み作業に精を出してるんだろうか… …と、僕が返信を打とうとしたまさにその時に、 またカイからのメッセージが届いた。  出来た  歌作れる? そしてその数秒後に、音源のURLが貼り付けられた。 早いなー 前のメッセージの時刻を見ると、 だいたい4時間くらい前だった。 そんなにすぐに曲出来ちゃうのかー 皆、スゴいな… 僕はスマホにヘッドホンを刺して、 その曲を聞いてみた。 ギターから始まる、割とアップテンポの激しい感じ… まさにカイっぽい曲だった。 コード進行もシンプルで、これまた、どうにでも… メロディーが乗せられそうなイメージだった。 「…」 でも…僕には、たった1つのメロディーしか、 聞こえて来なかった。 まさにそれが… この曲のメロディーであり、歌だった。 最後まで聞き終わって… 僕はカイに返信した。  何か、さっきの宴会の続きみたいな曲ですね… タイトルは…そうだな…  Masquerade  …で、合ってますか? ほどなくカイから返信が来た。  うん、合ってる 僕はホッとした。 すぐに起き上がって、僕は部屋の電気を付けた。 そして五線譜を取り出すと… 再びその曲を聞きながら、 メロディーと歌詞を固める作業に、没頭していった。 それはまた、すんなりと完成した。 何となく、そこはかとない感じだけど、 このスピード感で、ぐちゃぐちゃな仮面舞踏会が繰り広げられる様子は、醸し出されるだろう… 「ふぅー」 僕はペンをテーブルに投げ出すと、 再び部屋の電気を消した。 そしてまたすぐに布団をかぶった。 トキドルの曲を作るのは、本当にラクだし楽しいな… こんなにーってくらいに、 曲から歌が聞こえて来るのは何でなんだろう… やっぱり… 身体を契っているからなのかな… 僕はまたスマホを取り出して、 YouTubeのアプリを開いた。 既に、Deadと宵待ちのPVが、 ショウヤの手によって、トキドルのチャンネルに上げられていた。 僕はそれを…見返しながら、思った。 シルクのDeadからも、こないだの螺旋も… 面白いように歌が聞こえてきた。 何て言うか…僕の中のシルクが、 僕にそれを歌って聞かせてくれてるような気がした。 僕の中の…シルクが… 僕はその、 画面に映るシルクの姿を追った。 カッコいいな… 自然と、自分の顔が綻んでいくのを僕は感じた。 ショウヤさんって凄いな… あの人も、ホント只者じゃないよなー センスが良いのは勿論だけど、 あのスイッチの切り替わり用と言い…何て言うか逸脱してるよな… AB型なんじゃないかな… そしてすぐに、宵待ちのPVが続いた。 これは、僕にとっては… 凄く思い入れの強い曲になっちゃったな… トキドルの皆と触れられなくなったときにも、 この曲だけは、繋がっていてくれたんだ… シキさんに監禁されて…宵待ちくんの切ない気持ちが、痛いくらいに凄くよく分かったし… サエさんに感謝だな… 画面の中のサエゾウは… それはそれは、いやらしかった… 「ふふふっ…」 僕は思わず笑ってしまった。 サエさんもカッコいいよなー ファンがいっぱいついてくるのがよく分かる… 神様は…どんな風になるんだろうなー 今頃、ショウヤさんは、編集作業に追われているんだろうか… あ、そういえば… 裏何とかって言ってたな… それ、どんなんだろう… 残念ながら…「裏」は、今のところ、 作曲者ご本人にしか公開されていなかった。 神様も裏作るんかな… あの感じだと、 まーとてもイヤな予感しかしないけどなー カイさん… そして僕は、今作ったMasqueradeを、 もう一度聞き返した。 螺旋もunder the moonlightも、ミディアムテンポだから、この曲は、良いアクセントになるだろう… さすがカイさんだ。 次のリハが楽しみだな… そんな事を思っていると、 またLINEにバッジがついた。 トキドルLINEに、カイの新曲が貼り付けられていた。 そして、その後また…すぐにバッジがついた。 今度はシルクからだった。  カイとヤったの? 「…」 もー 何で分かっちゃうんだろうなーこの人は… 僕はまた、思わず笑ってしまった。 そして返信した。  そりゃーご本人の日だからね  そんで曲出来ちゃったんだな…  やっぱお前すごいな 「…」 いや…そこですごいって言われても… 何がすごいんだか… 僕にはサッパリ分かりませんけどねー

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