205 / 398
いつもの…リハ(1)
トキドルの次のLIVEが迫っていた。
いつものように僕らはカイの店に集まった。
それぞれが、それぞれの思いを胸に秘めながらも、何事も無いように、僕らは飲みながらセッティングを進めた。
サエゾウの新曲…無題の音源が流されていた。
「新曲作んの早くないか?」
「ねーまた名曲できちゃったー」
「さっさと仕上げてLIVEでやろう」
僕はカウンターでハイボールを飲みながら…曲に合わせてメロディーを口ずさみながら確認していた。
アヤメの曲を、聞き込んで覚えていくのも、それはそれで楽しいが…やっぱりトキドルの曲は、ホッとする…
そんな安心感を、僕はしみじみ痛感していた。
「じゃあやってみようか」
そう言ってカイは、ドラムの方へ向かった。
僕も後に続いた。
「カウントでいいんだよね?」
「うんー」
そして、カイのカウントから…
無題の曲が始まった。
カイとシルクの、ガッツリ重なるリズム隊の上に、ピチカートのようなギターのリフが…まるでそこから光の粒が湧き上がるように響いていった。
ああ…何でこんなに…見えるんだろう…
自分でも不思議なくらい、目の前に…月影に照らされ、光の粒が舞う情景が広がっていった。
そして僕は…その中で静かに歌い始めた。
ドラムが…ベースが…
そしてギターが…
全ての音が、大小さまざまな光の粒となって、僕の身体を照らしていくのだった。
ソロ後のAメロでは、切ない歌詞に続いて、サエゾウの切ないギターのメロディーが輪唱のように響いた。
それは、僕の身体に…胸に、
痛いほど突き刺さった。
そして最後のサビで、そんな切ない光に照らされながら、僕は歌い舞った。
最後は、光の粒と化した人たちの…情念が燃え尽きていくように、粘りのあるような歪んだギターで、終わった。
「…」
僕はまた…ポロポロと涙を溢していた。
「…うん、思った通りのいい感じー」
サエゾウが僕を見ながら言った。
「…何か…切なくなるな」
珍しくカイが言った。
「…そうだな」
シルクも同調した。
それを聞いて…僕は一層悲しくなってしまった。
「泣かないでーカオルー」
サエゾウが僕の頭を撫でた。
「お前のための曲なんだからー」
「…」
「そうだよな…」
「うん…目一杯お前を飾ってやるか」
「そーいう事ー」
皆ちゃんと分かってるんだ…
この曲にどんな思いが込められているのか…
「よし、もうちょっと頑張ろう…」
そう言って、カイは再びカウントを叩いた。
そしてまた、何度もその曲が繰り返された。
僕が、崩れ落ちるまで…
「俺はいいからねー」
ギターを下ろしたサエゾウは、崩れた僕の頭をポンと撫でて、シュッとカウンターに向かっていった。
ベースを置いたシルクが、僕の横にしゃがんだ。
「…いい仕事してんな…」
そう言って彼は、僕の顔を両手で押さえた。
シルク…
僕はたまらないような目で、シルクを見た。
それでも彼は顔色を変えず、
軽く僕に口付けてから…言った。
「カイに…してもらえ」
「…」
シルクはカイの方を見た。
「何で?」
カイが訊いた。
「…何か落ち込んでるからさ」
「…」
カイは、ゆっくりドラムから立ち上がってきた。
「何なら俺が慰めてもいいけど?」
シルクはふふっと笑いながら言った。
「えーそれ見たいーシルカイってレアー」
向こうでサエゾウが叫んだ。
それって、どっちがどっちなんだろう…
朦朧としながらも、うっかり僕はそんな風に思ってしまった。
「さんきゅー」
言いながらカイは、シルクから僕の身体を受け取ると、僕をギューっと抱きしめた。
「処理していい?」
「…はい」
僕は震えながら頷いた。
カイは、勢いよく僕に口付けた。
「…んんっ…」
吸い付くように僕のくちびるを塞ぎ…すぐに舌を、僕の口の中に差し込んだ。
激しい口付けに、僕の身体は一層震え…
口元から唾液が滴った。
「ごめんね、優しくできなくて…」
口を離れたカイは、言いながら僕をその場に押し倒すと、すぐに僕のズボンを脱がせた。
僕はなすがまま…
カイにそうされる心地良さに、恍惚の表情を浮かべた。
身体中に沸々と湧き上がる快感の波に飲まれながら、僕は彼を見上げて、囁くように言った。
「いっぱい…ください…」
「…」
カイは、自分のズボンを下ろすと、僕の両足を勢いよく開いた。
「何でいちいちスイッチ押すかなー」
彼はニヤっと笑いながら…自分のモノを、僕の中に押し込んできた。
「はぁっ…あっ…」
沸々と…疼いていた快感が、その刺激によって大きく波立っていった。
カイのモノが、キツく熱く僕の中を責め立てる度に、激しく波立つ快感は、ほどなく僕を頂点へと押し上げた。
「あっ…ああっ…はあっ…」
ビクビクと震えて、僕は絶頂に達した。
カイは、一層激しく、腰を動かした。
「…んっ…はぁっ…ああっ…」
声を上げながら…彼も大きく震え、
僕の中に吐精させた。
「はぁ…はぁ…」
息を上げながら…
僕は、カイの目を見上げた。
いつも冷静に、バンドのリーダー的な役割を担ってくれている彼の…その胸の奥に閉じ込めてある思いが、その瞳から少しだけ滲み出ているような気がした。
僕は手を伸ばして、彼の頭を抱き寄せた。
「…っ」
そして彼の耳元で、小さい声で囁いた。
「ずっと…カイさんに…ついていきます…」
「…!」
それを聞いたカイは、
ふふっと笑いながら答えた。
「ショウヤじゃあるまいし…お前に慰められるようになったら終わりだな…」
そしてまた、彼は僕に口付けた。
ともだちにシェアしよう!