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いつもの…リハ(1)

トキドルの次のLIVEが迫っていた。 いつものように僕らはカイの店に集まった。 それぞれが、それぞれの思いを胸に秘めながらも、何事も無いように、僕らは飲みながらセッティングを進めた。 サエゾウの新曲…無題の音源が流されていた。 「新曲作んの早くないか?」 「ねーまた名曲できちゃったー」 「さっさと仕上げてLIVEでやろう」 僕はカウンターでハイボールを飲みながら…曲に合わせてメロディーを口ずさみながら確認していた。 アヤメの曲を、聞き込んで覚えていくのも、それはそれで楽しいが…やっぱりトキドルの曲は、ホッとする… そんな安心感を、僕はしみじみ痛感していた。 「じゃあやってみようか」 そう言ってカイは、ドラムの方へ向かった。 僕も後に続いた。 「カウントでいいんだよね?」 「うんー」 そして、カイのカウントから… 無題の曲が始まった。 カイとシルクの、ガッツリ重なるリズム隊の上に、ピチカートのようなギターのリフが…まるでそこから光の粒が湧き上がるように響いていった。 ああ…何でこんなに…見えるんだろう… 自分でも不思議なくらい、目の前に…月影に照らされ、光の粒が舞う情景が広がっていった。 そして僕は…その中で静かに歌い始めた。 ドラムが…ベースが… そしてギターが… 全ての音が、大小さまざまな光の粒となって、僕の身体を照らしていくのだった。 ソロ後のAメロでは、切ない歌詞に続いて、サエゾウの切ないギターのメロディーが輪唱のように響いた。 それは、僕の身体に…胸に、 痛いほど突き刺さった。 そして最後のサビで、そんな切ない光に照らされながら、僕は歌い舞った。 最後は、光の粒と化した人たちの…情念が燃え尽きていくように、粘りのあるような歪んだギターで、終わった。 「…」 僕はまた…ポロポロと涙を溢していた。 「…うん、思った通りのいい感じー」 サエゾウが僕を見ながら言った。 「…何か…切なくなるな」 珍しくカイが言った。 「…そうだな」 シルクも同調した。 それを聞いて…僕は一層悲しくなってしまった。 「泣かないでーカオルー」 サエゾウが僕の頭を撫でた。 「お前のための曲なんだからー」 「…」 「そうだよな…」 「うん…目一杯お前を飾ってやるか」 「そーいう事ー」 皆ちゃんと分かってるんだ… この曲にどんな思いが込められているのか… 「よし、もうちょっと頑張ろう…」 そう言って、カイは再びカウントを叩いた。 そしてまた、何度もその曲が繰り返された。 僕が、崩れ落ちるまで… 「俺はいいからねー」 ギターを下ろしたサエゾウは、崩れた僕の頭をポンと撫でて、シュッとカウンターに向かっていった。 ベースを置いたシルクが、僕の横にしゃがんだ。 「…いい仕事してんな…」 そう言って彼は、僕の顔を両手で押さえた。 シルク… 僕はたまらないような目で、シルクを見た。 それでも彼は顔色を変えず、 軽く僕に口付けてから…言った。 「カイに…してもらえ」 「…」 シルクはカイの方を見た。 「何で?」 カイが訊いた。 「…何か落ち込んでるからさ」 「…」 カイは、ゆっくりドラムから立ち上がってきた。 「何なら俺が慰めてもいいけど?」 シルクはふふっと笑いながら言った。 「えーそれ見たいーシルカイってレアー」 向こうでサエゾウが叫んだ。 それって、どっちがどっちなんだろう… 朦朧としながらも、うっかり僕はそんな風に思ってしまった。 「さんきゅー」 言いながらカイは、シルクから僕の身体を受け取ると、僕をギューっと抱きしめた。 「処理していい?」 「…はい」 僕は震えながら頷いた。 カイは、勢いよく僕に口付けた。 「…んんっ…」 吸い付くように僕のくちびるを塞ぎ…すぐに舌を、僕の口の中に差し込んだ。 激しい口付けに、僕の身体は一層震え… 口元から唾液が滴った。 「ごめんね、優しくできなくて…」 口を離れたカイは、言いながら僕をその場に押し倒すと、すぐに僕のズボンを脱がせた。 僕はなすがまま… カイにそうされる心地良さに、恍惚の表情を浮かべた。 身体中に沸々と湧き上がる快感の波に飲まれながら、僕は彼を見上げて、囁くように言った。 「いっぱい…ください…」 「…」 カイは、自分のズボンを下ろすと、僕の両足を勢いよく開いた。 「何でいちいちスイッチ押すかなー」 彼はニヤっと笑いながら…自分のモノを、僕の中に押し込んできた。 「はぁっ…あっ…」 沸々と…疼いていた快感が、その刺激によって大きく波立っていった。 カイのモノが、キツく熱く僕の中を責め立てる度に、激しく波立つ快感は、ほどなく僕を頂点へと押し上げた。 「あっ…ああっ…はあっ…」 ビクビクと震えて、僕は絶頂に達した。 カイは、一層激しく、腰を動かした。 「…んっ…はぁっ…ああっ…」 声を上げながら…彼も大きく震え、 僕の中に吐精させた。 「はぁ…はぁ…」 息を上げながら… 僕は、カイの目を見上げた。 いつも冷静に、バンドのリーダー的な役割を担ってくれている彼の…その胸の奥に閉じ込めてある思いが、その瞳から少しだけ滲み出ているような気がした。 僕は手を伸ばして、彼の頭を抱き寄せた。 「…っ」 そして彼の耳元で、小さい声で囁いた。 「ずっと…カイさんに…ついていきます…」 「…!」 それを聞いたカイは、 ふふっと笑いながら答えた。 「ショウヤじゃあるまいし…お前に慰められるようになったら終わりだな…」 そしてまた、彼は僕に口付けた。

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