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いつもの…リハ(2)
その後も休憩を挟んで…
僕らは次のLIVEのセットリスト候補の曲を、次々とおさらいしていった。
「うん、いいんじゃない?」
「じゃあ終わりー」
「お疲れ様…」
ようやく終わりになった…
「また処理するー?」
サエゾウが僕を見て、ニヤッと笑った。
「…」
それでも、やり慣れた曲を…普通に練習する程度であれば、以前のように、闇雲に何でもかんでも勃ってしまう事は…だいぶ無くなっていた。
「…だ、大丈夫です」
「ホントにー?」
僕は少し顔を赤くしながら、急いでカウンターに向かった。
そして煙草に火を付けた。
「ふぅー」
ひと足先にカウンターに戻ったカイが言った。
「無理すんなよ」
「大丈夫ですってば!」
「あははは…」
カイさんが笑ってくれた。
サエさんも、いつものように接してくれるし…
僕は、本当に…この人達と一緒にいる安心感と、感謝の気持ちを噛み締めていた。
そして僕はシルクを見た。
絶賛ベース片付け中の彼は、残念ながら僕の視線には全く気付かなかった。
「飲み行くか…」
「行こうー」
「曲順ちゃんと決めなきゃいかんしな…」
そして僕らは店を出た。
「たまには行った事ない所行こうよー」
サエゾウが言った。
「そうだな…何がいい?」
「唐揚げの美味しいとこー」
それって、違う店行く意味あるの…?
心の中で突っ込みながらも…僕は提案した。
「ショウヤさんのお勧めのイタリアン行ってみますか?」
「いーよ行こうー、ついでにショウヤも呼ぼうー」
「そうするか…」
「ハルトも呼んじゃえー」
そして僕らは、例の…
コンビニの地下のイタリアンの店に入った。
ハイボールで乾杯して、
目新しいメニュー表を前に、僕とサエゾウが目を輝かせているうちに、ショウヤが店に入ってきた。
「お疲れ様です」
「お疲れー」
「あれ、ショウヤくんの知り合いだったの?」
僕らのテーブルについたショウヤに、大将が声をかけた。
「あ、そうなんですよ…前にも話した、僕がとてもお世話になってるバンドの人たちです」
「そうなんだーありがとうねー」
「ショウヤがお世話になってますー」
サエゾウが大将に言った。
「あははは、こちらこそ…」
「何かサービスしてくれても良いですよー」
「サエ!」
カイがサエゾウの頭を叩いた。
「あはは、そうだね…考えとく…」
言いながら大将は、厨房に戻っていった。
「何が美味しいのー?唐揚げあるー?」
「ありますよ、ハッキリ言って全部美味しいです」
ショウヤのレモンサワーが来て、再び乾杯してから、僕らはショウヤ監修のもと、唐揚げを筆頭に…料理を次々と注文した。
そうこうしているうちにハルトもやってきた。
「お疲れーリハだったんだ…」
「うん」
「どう?調子は…」
「ボチボチだな…今回も新曲多めだし…」
「また新曲出来たの?」
「名曲出来たよー」
ハルトの生ビールもきて、
僕らは3度めの乾杯をした。
そして運ばれてくる、盛り付けもオシャレな美味しい料理の数々を…いつものように僕とサエゾウは奪い合うように食べていった。
「曲順決めないと…」
「…そうだった」
「やっぱ最後は神様でしょー」
モグモグしながらサエゾウが言った。
「1曲めはどうする?」
「Under the Moonとか…どうですか?」
モグモグしながら僕も言った。
「ああ、カオルの曲ね…いいんじゃない?」
ハルトもしっかり曲順選考に加わっていた。
「2曲め螺旋かな」
「で、MC入っての、無題とマスカレ?」
「それって新曲ですか?」
「どっちも名曲ー」
「で、宵待ちからのデッドかな」
「いや、デッドも続けちゃって…改まって宵待ちがいいんじゃない?泣かせの曲だから」
「真夜庭どうするか…」
「あ、そう言えば…真夜庭のPV撮影の日程も決めたいんですよねー」
ショウヤが口を挟んだ。
「…」
そうだった…まだ、あの曲の撮影が残ってたな…
この先、アヤメさんのリハやLIVEが入ってきちゃうと、スケジュール調整が難しくなっちゃうな…
そんな事が頭に浮かんでしまった僕を察してか…
他の3人も、ちょっと黙ってしまった。
「時間の関係もあるからな…真夜庭は、今回休ませるか…」
「それでいいと思います」
「よし、とりあえず曲順はOKだな…」
言いながらカイは、自分のハイボールを飲み干した。
そしてカイは、若干改まったように、2人に向かって切り出した。
「…ショウヤとハルトには、まだ言ってなかったんだけど…」
「…?」
カイは、僕の方を見た。
「…僕から、言いますか?」
「うん」
僕は、2人に向かって、静かに話し始めた。
「…実は…アヤメさんと2人で、ユニットの活動をする事になったんです…」
「えええーっ?!」
「何でー?!」
予想通りの反応だった…
「KYが解散して…それで、アヤメさんが、僕と一緒にやりたいって強く言ってくれて…」
僕は、事の次第を、彼らに語った。
「そんなのズルい…アヤメさんとカオルさんったら、売れるに決まってるじゃないですか…」
「まあ、だからこそ…なんだろうけどね…」
カイは続けた。
「…それでも、先方は、かなり俺らに気を遣ってくれてるんだ」
「それで、いいんですか?」
言いながらショウヤは、皆の顔を見回した。
「…ふうん…なるほど」
ハッとした感じで、
3人とも、慌てて…何事も無いように彼から目を逸らした。
「皆さん悩んだ上での結論なんですね…」
ショウヤは少し寂しそうに…
それでも、少しホッとした表情で…ハルトに言った。
「それは、僕らが口出しする事ではなさそうですね…」
「うん」
ハルトも微笑んで頷いていた。
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