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七福神巡り

LIVEが終わって、しばらく経ったある週末…ショウヤからLINEが来た。  七福神巡りの散歩に行きませんか? 何だそれ… 思いながら、僕は返信した。  遠くですか?  歩いて行けます  こないだ行ったお寺のもう少し先です ふうん… 何だかイマイチよく分からなかったが…どうせ暇だった事もあり、僕は彼にお付き合う事にした。 小1時間後…僕はショウヤと一緒に、先日行った怖いお寺の方面に向かった。 「先日はお疲れ様でした…その後調子はどうですか?」 「はい、特に…いつも通りです」 「アヤメさんとの方は、進んでるんですか?」 「はい、来週、スタジオで合わせてみる予定です」 「LIVEやるんですか?」 「まだ日程は決まってないですけど…」 「呼んでくださいね、絶対写真撮りたいんで」 「ふふっ…わかりました」 そうこうしているうちに、僕らはそのお寺の前に差し掛かった。 「ホントに近いんですねー!」 「今日は寄り道しないで来ましたからね…」 その階段の方を、何となくウズウズしながら見上げる僕に向かって、ショウヤは言った。 「明るいときの境内も、見ときますか?」 「はいっ…」 僕は嬉しそうに答えた。 彼はクスッと笑った。 僕らはその階段を上っていった。 先日の、恐々とした暗闇とは打って変わって、昼間の境内は、何とも静謐で神聖な雰囲気が漂っていた。 暗闇では恐ろしく見えた大仏様も、昼間の表情は、とても穏やかだった。 「とても…素敵な場所だったんですね…」 「はい、今なら、むしろ良い神様がカオルさんを見てます」 「ええっ…またそんなの視えちゃってるんですか!?」 「何となくです…」 言いながら、ショウやはまた、本堂に向かって手を合わせた。 僕も、彼に倣った。 それから、そこを出て…もう少し歩いた先の、通りからちょっと入った場所にある小さい神社に、僕らは辿り着いた。 七福神の幟旗が立っていた。 「ここが、1つ目ですね…」 小さい敷地内の、本堂の横に、吉祥天が立っていた。 「これが…七福神の1人なんですか?」 「そうみたいですね…」 僕らはそこにお参りをして、本堂の方を見てみると、人の居ない本堂の脇に、七福神巡りの地図が置いてあった。 「あ、コレを見ながら巡ったらいいんですかね」 「あーホントだ、そうですね…」 僕らはそれを1部ずつ取り… それを見ながら先に進む事にした。 地図に従って、もう少し進んだ住宅街の一角に…また同じ幟旗が立っていた。 「あ、あそこですね!」 階段を上っていくと…建物の中に、小さい毘沙門天が祀られていた。 僕らは、またお参りをした。 「次、行きましょう」 「何だか…楽しいですね」 「スタンプラリーみたいですよね!」 僕らは、ワクワクしながら、地図を片手にそれを見ながら…次の七福神を探しに進んだ。 そうして僕らは、、恵比寿神、大黒天に続いて、弁財天を見つけた。 「弁財天は、音楽の神様でもあるんですよ」 「…そうなんですね…」 確かに、その石像は、何かギターのような弦楽器を抱えていた。 僕は、特に心を込めて、お参りした。   どうか…ずっとトキドルに居られますように… アヤメさんとの活動も、そこそこ上手くいきますように… そして、それでもトキドルの皆が、僕を受け入れてくれますように…! いつまでも手を合わせている僕の横顔を、ショウヤは黙って微笑みながら見つめていた。 最後に、布袋尊と福禄寿を巡って… 僕らは七福神をコンプリートした。 「思ったより、時間かかりませんでしたね」 「そうですね、でも、すっごく楽しかったです」 「他にも色々な七福神巡りが出来る場所があるみたいなんですよ」 「そうなんですね…」 「もし、もう少し遠出する覚悟があるなら、また違う所を巡ってみますか?」 「はい、是非また誘ってください!」 ショウヤと一緒に七福神を巡った事は、僕にとって、とても有意義だった。 これからアヤメとの活動が本格化していくであろう僕は、改めて…決意を新たにする事が出来た。 「ちょっと飲んで行きますか?」 「そうしましょう…何なら…」 「何なら…?」 「…その後、またウチに寄ってください」 僕は、少しはにかみながら…でも、堂々と言った。 「…」 ショウヤは、目を丸くしていた。 「ズルくないカオルさん相手じゃ…スイッチ入らないかもしれませんけど、大丈夫ですか?」 「あはははっ…大丈夫です」 僕らは地元駅近くまで、歩いて戻った。 そして、ちょうど開店直後の…よくあるチェーンの居酒屋に入った。 「ここで良かったですか?」 「はい…こういう庶民的な店が、いちばん落ち着きます」 まだ空いている店内の一角で、僕らはいつものように、ハイボールとレモンサワーで乾杯した。 「今日も、ホントにありがとうございました」 「いえ、こちらこそ…おかげで気持ちの整理がつきました」 「…だったら良かったです」 ショウヤは、微笑みながら…僕を見つめた。 そうだ…全部見透かされてるんだっけ… 僕がお願いした事も、全部バレてるのかな… っていうか、だからこそ…今日誘ってくれたのかもしれないな… 思いながら、僕はハッとした。 ショウヤは、ニコッと笑いながら言った。 「はい…その通りです」 「…」 あーやっぱ全部読まれてるし…

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