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こっちの2人の続き(2)

溜息をつきながら…シルクは、僕の中から自分のモノを引き出すと、僕の身体をキレイに拭いた。 そして、ぐるぐるに巻き付けたテープを剥がしていった。 (ちょっと赤くなっちゃったな…) 改めて僕の身体を仰向けにすると、乱れたシャツを胸の前に合わせてから、僕の身体に、そっと毛布をかけた。 『…小学生みたいですよね…』 彼の頭に…そんなショウヤの言葉が浮かんだ。 「…」 (ホントに情けないな…俺…) そしてまた…大きく溜息をついた。 (こいつは…いつだって、素直に俺を求めてくれるってのに…) 彼は、僕の髪を撫でた。 (何で普通に優しくしてやれない…) シルクは立ち上がって、自分のズボンを履いた。 そして、洗濯機から僕のズボンを下着を取り出して、ベランダに干した。 ついでに、煙草に火をつけた。 「ふぅー」 煙草を吹かしながら…彼はその日の、光鬱のLIVEを、改めて思い出していた。 (すげー良かったな…) (だから…すげー悔しかった…) (カイもサエも…同じように思ってんだろうな…) シルクは煙草を揉み消すと、窓をパタンと閉めた。 (悔しいのに…サエは譲ってくれたんだ…) (…カオルの気持ちをいちばんに考えて) 彼は、冷蔵庫から、ハイボール缶を取り出すと、プシュッと開けて、ゴクゴクとそれを飲んだ。 (なのに俺は…カオルを淋しい気持ちにさせた上に、あんなに酷くヤった…) シルクは、その缶を、叩きつけるように置いた。 「くそっ…」 そして彼は自分の顔を、両手で覆って絶句した。 「うーん…」 目を覚ますと…暗闇に、見慣れた天井の景色が広がっていた。 「…」 僕は必死に記憶を手繰り寄せた。 ハッと思い出して身体を確認した。 外してくれたんだ… そして僕は、隣で向こうを向いて寝ている、シルクの背中に、身体を寄せた。 「…ごめん」 ポソっと彼が言った。 彼はモゾモゾとこっちを向くと…申し訳なさそうに、僕の目を見つめた。 「…何が?」 僕は、本当に…何も謝られる覚えが無かった。 「酷くし過ぎた…」 「…」 僕は、ケロッとした表情で返した。 「…そんなの…いつもの事じゃん」 「…」 「…確かに…今日はちょっと、いつもよりやらしかったけど…」 僕は、少し恥ずかしそうに…俯き加減で続けた。 「…気持ち…よかった…」 「…っ」 それを聞いたシルクは、思い切り、僕の身体を抱きしめてきた。 「…」 こんな風に…彼の方から抱きしめてくれるのは、いつ振りだろう… 僕は目を閉じて、その心地良さに酔いしれた。 「俺…全然ダメだ…」 「何で…何が?」 「強くなれない…」 「…」 「こんな事がある度に…お前に酷くしちゃうかもしれない…」 「…っ」 そう言うシルクに向かって、僕は静かに言った。 「いいよ…」 「…えっ」 「だって…すごく気持ち良かったから…むしろいくらでも酷くしてくれていいよ…」 「…」 「こんな風にシルクとヤれるなら…そのために、もっとヤキモチ妬かせてもいいかも…」 「…!」 シルクは、そっと腕を緩めると…僕の目を見つめた。 「…お前ってヤツは…」 「だって…」 僕は、真っ直ぐにその目を見返した。 「…だって…シルクとヤりたいんだもん…」 「…」 「シルクが…好き…だから…」 「…」 それを聞いた彼は、僕の言葉を遮るように、僕のくちびるを塞いだ。 「んん…」 何度も、何度も…いつまでも、僕らは口付け合った。 うっかり…また身体が熱くなりそうなくらいに… 僕の肩に腕を回したシルクは、僕の髪を撫でながら、天井を見上げながら言った。 「光鬱…よかったわ」 「…ありがとう」 「俺も負けない」 「うん…負けないで」 「お前に負けない精神力を…鍛えなきゃな…」 「それは…どういう意味なのか…僕にはよく分かんないけどね」 シルクは、僕の頭を、自分の方に引き寄せた。 「俺らは絶対に…お前を離さない」 「うん…」 大きく頷きながら…僕は彼の身体に、自分の両腕を絡めた。 嬉しかった。 シルクがそんな風に言ってくれる事が…僕は心の底から嬉しかった。 「明日は…暇なの?」 「…うん!」 僕は勢いよく即答した。 「じゃあまた…あれだ、デートするか」 「スーパーに?」 「あ…でもズボンが乾かないとな…」 「…っ」 「俺のパンツ貸してやるか…」 「…」 それはちょっとなー ま、でもこの際…致し方ないか 「ズボンは…ちょっとデカいよな」 「…そうかな」 「間違いなく、俺の方が足長いだろ?」 「…」 「あのエロシャツでも良いけどな…流石にあれで外出すわけにはいかんよな…」 「…」 しばらく考えた挙句に、シルクは起き上がって、布団から出ていった。 ベランダを開ける音に続いて、バタバタと…また洗濯機を操作する音が聞こえた。 そして、布団に戻って来た彼に、僕は訊いた。 「何してたの?」 「しょうがないから、乾燥機にかける事にした」 「は?」 えー何…乾燥機機能付いてるヤツだったの? だったら、最初からそうしてくれてたらよかったじゃん 「シルクって…いじめっ子だよね…」 「…」 彼は黙って…上を向いて目を閉じてしまった。

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