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凌辱のLIVE(2)

そして僕らは、楽屋に入った。 「よーし、今日もテンション上げていくぞー」 新たなお客さんゲットで、すっかり意気の上がったサエゾウは、鼻歌を歌いながら着替えると、ストンと鏡の前に陣取った。 カイとシルクも、同様に…自分の顔を描き始めていた。 「えっ…今日は…コレですか…?!」 ハルトが出してきた衣装を見て…僕は若干たじろいだ。 それは…少し和風の着物っぽいデザインの…でも、下は完全に…フワッとしたスカートだった。 「女装じゃないですか…」 「コレも履いてね」 彼は、パニエも出した。 「…」 「いいなー俺もスカート履きたーい」 「PVんとき履いたじゃん」 「お、いいね…カオル姫」 「…」 渋々着替えた僕を、鏡の前に座らせると…ハルトは、僕の顔を塗りながら言った。 「こないだのLIVEのときのメイクは、どうしたの?」 「あ…基本自分でやって…アヤメさんに仕上げてもらいました」 「ふうーん…」 「…」 「…」 何となく殺気を感じるのは、気のせいか… それからハルトは、テキパキと僕の顔を仕上げると…髪を束ねて、銀色のウィッグを被せていった。 「ちょっと…派手じゃないですか?」 「銀色のスイッチが入いるように…」 ウィッグの髪も整えて…花飾りなんかも付けて… 本日のカオルが、ほぼ出来上がった。 「うおーすげえな!」 「こんな風にもなるのか…」 「俺もそれやりたーい!」 …誰? 鏡を見た僕は…久しぶりにそう思った。 銀色の綺麗な髪に…ゴシック調の和風の女装… それはまさに、こないだサエゾウと一緒に見た、あの絵の中の人形のようだった。 「しばらく自分の美しさに浸っててね…」 そう言ってハルトは、他の3人の仕上げを手伝いに回った。 ハルトさんって、ホントにすごいな… 思いながら僕は…ちょっとポーズをとってみたりしながら、鏡の中のお人形の姿に見入っていた。 「それなら途中でどんだけ勃ってもバレないな…」 シルクがニヤニヤしながら言った。 「…っ」 「でしょ?」 ハルトはシルクの髪を束ねながら続けた。 「ホントはシルクみたいに、シュッとしたのも着せたいんだけどさ…何せ選択肢が限られちゃうんだよね…」 …そうでした 「ま、いつかホントに…常に銀色スイッチが作動するようになったら…そんな心配要らなくなるのかもね」 「そしたら俺らがヤバいな」 「演奏隊全員スカートか…」 「それやりたーい!」 銀色のスイッチか… 確かに、あのレコーディングのときのテンションは、自分でも不思議な感覚だった。 いやでも…実際に背後で演奏されて、その音が身体に影響しないハズは無い… LIVEで、あの域を保つなんて…そんな事出来る気が全くしない… 「ちゃんとパンツも持って来たから…安心して集中してね」 「…っ!!」 僕は顔を真っ赤にした。 「あはははっ…」 「よかったねーカオルちゃんー」 「いっそ最初から紙パンツ履いとけば?」 「あ、それも良い手だね!」 「そしたら本番中、何回イっても大丈夫じゃんー」 もうー 言いたい放題だなー そうこうしているウチに…前のバンドの演奏が終わった。 3人が自分の機材を準備し始めた中で…ハルトが、最後にまた僕の顔をチェックしながら…小さい声で、呪文の言葉を囁いた。 「今日も、光の粒と宵待ちの月を見せてね…」 「…出来るかな…」 「出来るよ…こないだだって出来たじゃない」 「…」 彼は、僕の耳元に顔を近付けると…更にいやらしい口調で続けた。 「あとは…3人にいっぱい凌辱されたらいい」 「…っ」 「その可愛い姿が…ぐちゃぐちゃに汚れるくらいに…」 「…」 そのハルトの言葉に… 僕の胸に、閃光のような寒気が走った。 「お疲れ様でしたー」 バタバタと、前のバンドのメンバーが、ステージから捌けてきた。 そして、3人様が、それぞれの機材を持って…先にステージへと移動していった。 「ハルトさん…」 「…何?」 僕は、他の…周りの人に聞こえないくらいに、小さい声で続けた。 「…何か…今すぐ…ハルトさんと…ヤリたいです…」 「…っ」 ハルトは一瞬、とても驚いた顔になったが…やがて、ふふっと笑いながら、やはりとても小さい声で言った。 「俺とヤリたいのに…これからお前は、あの3人に無理矢理ヤられちゃうんだ…」 「…っ」 「いってらっしゃい…」 最後にそう言って…ハルトは、僕の肩をポンと叩くと、僕から離れて楽屋を出ていった。 「…」 そして僕も…ステージに向かった。 絶賛セッティング中の、その3人を順番に見渡しながら…僕の頭には、ハルトの言葉がグルグル回っていた。 ほどなく準備が整った。 スタッフさんも去った、暗いステージの上で…僕らはいつものように、4人で手を合わせた。 「…頑張ろうな」 「うん」 「…ハルトさんに…無理矢理ぐちゃぐちゃに…凌辱されて来いって、言われました」 僕は、小さい声で…彼らに言った。 3人は、少し目を丸くして、僕を見た。 「なるほど…だから今日はお姫様なんだな…」 カイが、ふふっと笑いながら言った。 「了解…容赦なくヤらせてもらうね」 シルクも言った。 「こないだみたいに、ぐちゃぐちゃにしてやるー」 サエゾウも、嬉々として言った。 あー 言わない方がよかったかな… ゆっくり上がって行く幕を見ながら… 僕は少しだけ後悔した。

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