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凌辱のLIVE(3)

「カオルー」 「ヤバっ」 「キャーッ」 「カオルかわいいー!」 幕が上がって… まさかの自分の名前が1番に呼ばれた… 「カイー」 「サエ様ー」 「シルくーん!」 大勢の人で埋めつくされた客席が、視界いっぱいに広がった途端に…カイが、勢いよくカウントを叩いた。 そしてUnder the Moonlightのイントロが始まった瞬間に…僕の身体は、撃ち抜かれるようにビクッと震えた。 完全にスイッチの入った僕は…まるで魔法使いがそうするように…その客席を、自分の指先から発する炎で包んでいった。 炎に包まれた彼らは…やがて恍惚とした表情で、両手を上に上げて曲に合わせて揺らした。 それによっても、ユラユラと燃え盛る炎の輝きが、更に強まっていくように見えた。 曲が終わり…炎の景色もスッと消えた。 そして…切なく螺旋が始まった。 演奏隊は…まさに容赦無かった。 彼らの音のひとつひとつが…僕の身体の奥の方の…手の届かない場所まで入り込んで来るような気がした。 それは、螺旋の歌詞を歌い上げる僕の…切ない感情を、更に更に増長させて止まなかった。 2回目のサビが終わり…ブリッジに差し掛かった所で…僕はたまらない気持ちで、シルクの方を見た。 シルクは、僕の目を見返すと…まるであの夜、僕を縛り付けて見下ろすような、嗜虐に満ちた表情で…ニヤっと笑った。 「…っ」 そしてギターソロで、サエゾウがセンターに出ている間…僕は思わず、震えながら、シルクの背中に縋り付いてしまった。 「…」 背中に僕を感じながら…シルクは、ふっと微笑みながら、上を見上げて目を閉じた。 それからすぐに、最後のサビに向かわせるために、僕の身体を振り解くように、身を捩った。 それによってセンターに押し出された僕は、そのまま泣き叫ぶように、最後のサビを歌い上げた。 「…」 「あーあーまたサービスシーンだったねー」 客席の後ろの方で、ハルトがショウヤに囁いた。 「アレじゃホントにバレバレですよね…」 ショウヤは笑いながら答えた。 「…すごく…良かったですけどね…」 「カオルー」 「シルくーん」 「ヤバい…」 案の定…客席は、そんなサービスシーンの歓喜に、すっかり湧き上がっていた。 「もうさーあ、俺がカッコよくソロ弾いてる最中に、何してくれてんのー?」 ちょうどMCタイムに入ったサエゾウが、プンプンしながら言った。 「俺のせいじゃないよ…」 シルクがしれっと言った。 「もうーカオルってばー」 サエゾウが突っ込むも…僕は、顔を両手で覆い隠しながら…下を向いてしまっていた。 「カオルー」 「可愛いー」 「頑張ってー」 響めきが収まらない客席に向かって…シルクが言った。 「次はサエ様の曲だからね…」 「サエ様ー」 「キャーッ」 「サエ様に可愛がってもらえ…」 言いながらシルクは、僕の肩をポンポンと叩くと。カイに目配せをした。 ニヤっと頷いたカイは、すぐにカウントを出した。 無題のイントロが始まった。 僕はゆっくり顔を上げると…客席に向かって両手を伸ばした。 曲に合わせて…僕の指先から、光の粒が湧き出た。 それは幾つも幾つも流れ出て…やがて会場は、その光の粒で埋め尽くされていくのだった。 (…何でこんなに眩しいんだ…?) 会場の後ろの壁際にもたれて見ていたアヤメは、自分の目を疑った。 (さっきの曲では、確かに炎が見えた気がした…) 彼はその眩しさに、思わず片手で目を覆いながら…光の粒に照らされながら、歌い舞う僕の姿を、目を細めて見ていた。 僕だけでは無かった… カイの叩くドラムからも…シルクが奏でるベースからも…もちろんサエゾウのギターからも…幾つもの光の粒が湧き放たれていった。 ギターのそれが、ソロの部分で最高潮に達した。 「サエさん…すごい…」 「うん…カオルに負けてないね…」 しかし、僕も更に負けなかった。 ソロ後の最後のサビで…僕は、それ以上に光り輝いた。 「…」 そして…曲が終わり…会場の光の粒が、ユラユラと陽炎のように消えていった…そこへ、その静寂を打ち壊すような、Masquradeの激しいイントロが始まった。 客席は一気に怒涛のように湧き上がった。 激し…過ぎる… 歌いながら…僕は思った。 それはまるで…あの、サエゾウのちゃんとした道具に拘束されながら、3人にぐちゃぐちゃに犯されているような感覚だった。 「…っ…あっ…」 歌がうわずってしまうくらいに…それは、僕の気持ち良いポイントに響いた。 更に激しいギターソロに煽られて…僕はガクンと膝をついて…その場に蹲ってしまった。 ソロ後…静かになる部分を… 僕はそのまま蹲ったまま…まさに嗜虐に震え、息を上げながら…喘ぐように、呟くように…喋った。 そして必死に身体を起こして、ステージ前の手摺りにもたれかかりながら…取り憑かれたように、最後のサビを叫んだ。 「あー…イっちゃったかもな…」 ハルトが呟いた。 「えっ…ホントですか!?」 「…わかんないけどね」 「…」 曲が終わったとき…僕は座り込んだまま、両手を床につけて…息を上げながら必死に身体を支えていた。 「次回はホントに紙パンツですね…」 溜息をつきながら…ショウヤはふふっと笑った。

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