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凌辱のLIVE(6)
「あ、カオル出てきたー」
「キャー」
「お疲れ様でした!」
僕は、あれよあれよと言う間に…今までに無かったくらい、大勢に取り囲まれた。
「めっちゃ可愛かったー」
「すごかったー」
「こっちが本当のカオルなんだねー」
「…」
捲し立てられて…すっかり圧倒されてしまった僕は…いつものように、こう言うしか…無かった。
「あ…ありがとう…ございます…」
「…っ」
「えーやっぱり違うー」
「ヤバい」
「えー可愛いー」
そして再び捲し立てられてしまうのであった…
「もーちゃんと喋れよー」
見兼ねたサエゾウが、自分の取巻きを引き連れての、僕の輪に入ってきた。
「ごめんねーホントに世話が焼けるんだからー」
「…すいません」
「一緒に写真撮っていいですか?」
「いーよー喋んない代わりに、いっぱい撮ってってー」
「…」
そして僕は、サエゾウのなすがままに…色んなポーズを取らされて、たくさんのスマホに撮られていった。
「マジで良かったです…」
撮影会が落ち着いた所で…光鬱から来てくれた、アヤメファンの子達が…しみじみと僕に言ってくれた。
「…」
「アヤメと2人のもすごく良いと思ったけど…こっちの方が断然すごかった」
「うんうん…」
「まさに、本家本元って感じだった」
「…」
「また見に来てもいい?…どっちも!」
「…っ」
そんな風に言ってもらえて…
僕は、心の底から嬉しかった。
「…もちろんです…ありがとうございます…」
言いながら…僕は、彼女たちに向かって深々と頭を下げた。
「…っ」
「何でこんなに違うのー?」
「ねー、ステージのときと別人みたいー」
「めっちゃ可愛い」
彼女たちは、言い合いながら笑った。
いつもの子達や、ヒカルとリクにも挨拶をして…そして僕は、最後にアヤメの姿を探した。
彼は、ちゃっかり片付け真っ最中の会場内で…店長と一緒に何やら喋っていた。
「あ、カオル、お疲れ…」
アヤメは、すぐに僕に気付いて声をかけた。
「あ、ありがとうございました」
僕は、言いながら2人に近寄っていった。
「お疲れ様…ものすごかったね、盛り上がったねー」
店長が、僕に向かって続けた。
「今度、アヤメさんのイベントも、ウチでやってもらう事になったから…」
「え、そうなんですか?」
「うん」
「アヤメさんともユニットやってるんだってね…それも楽しみにしてるわ…よろしくね」
「…あ、はい…」
そう言い残して、店長は向こうへ行ってしまった。
「あの…ホントに、ありがとうございました」
僕は改めて、アヤメに頭を下げた。
「色々と勉強させてもらったよ」
「…そうですか?」
「めっちゃパワーも…もらった」
「…」
「俺の事も…よろしく頼むね」
「…」
何をどう…
よろしくしたらいいのか、よく分かりませんが…
「近いうちに、また連絡する…反省会も打上げも、まだやってないしね」
そう言いながら、アヤメは出口へと向かった。
僕は、見送りについて行こうとしたが、彼はそれを止めた。
「いいよ、ここで…」
「…」
「あの人達に怒られるからね…」
アヤメは、とても小さい声で言いながら…物販コーナーの片付けをしている、ハルトとショウヤの方を見た。
「…」
「じやあ、またね」
そう言って彼は、僕を振り切って出て行った。
僕は、その…お客さんもいない、ガラーンとした会場を歩いて、ハルトとショウヤの方に近寄っていった。
「カオルさん、お疲れ様でした」
「ちゃんと挨拶できた?」
2人の顔を見て…何だかとてもホッとしながら、僕は答えた。
「…あんまり…」
「あはははっ」
「やっぱり…」
それから、他の3人と一緒に、最後のお客さんを見送って…
僕らはようやく楽屋に戻った。
「お疲れ様」
「ふぅー」
息つく間もなく…着替えと片付けに追われながらも…彼らの表情は、清々しかった。
「すげー疲れたけど、楽しかったな…」
「うん…」
「めっちゃ疲れたー」
「すごく良く出来たと思います!」
自分の片付けを終えて…こっちを手伝いに来たショウヤが言った。
「僕の思惑通りです!」
「…」
「…」
あーもう…ショウヤさんてば…
いじられるの分かってんのに、またそんな、上から目線な発言しちゃって…
「ホントだな…」
「ショウヤの予言…当たってたよな…」
「断然こっちのがいいーって思わせたー」
「…」
意外にも3人様は…珍しく素直に、ショウヤの上から発言を受け入れた。
「ま、今回…俺がカッコよかったからな…」
「いや、俺だろ?」
「俺がアヤメの100倍カッコよかったー」
「…」
そーいう流れになったか…
「あーもうー、皆カッコ良かったんですー!」
「そーだ、ショウヤは分かってるんだよねー、ホントは誰がいちばんカッコ良かったー?」
3人様は、勢いよくショウヤの方を見た。
「そんなの決まってるじゃないですか」
しれっと言いながら…彼は、僕の方をチラッと見た。
「…そうだった…」
「所詮は、その家来たちなんだよな…俺たちって…」
「よっしゃー今日も仕返しお仕置きだー」
「…」
ショウヤさん…
何でそーいう余計な事言うんですか…
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