278 / 398
真夜中の庭でBBQ(2)
車は、首都高速から東北自動車道に入った。
早速ショウヤは、右車線に飛び出して行った。
「飛ばしてんな…」
助手席のカイが呟いた。
「ね、ショウヤの運転って、意外に激しいんだよね」
「もっと飛ばせー!」
「シルクは…運転出来るの?」
ふと、思って…僕は隣の彼に訊いた。
「免許証は…持ってる」
「…ああ…僕と一緒だね」
「お前よりはマシだと思うけど?」
「何でー?」
「会社で営業してたときは、毎日運転してたし…」
「へええーそうなんだー」
「シルくんが営業とか、想像つかなーい」
サエゾウが後ろを振り向いて、話に入ってきた。
「そういうサエはどーなんだよ」
「俺も持ってるー」
「えっ…そうなんですか!?」
「配達のバイトしてたときもあるー」
あー何か…いるよな…
こーいうチャラい感じの配達の人…
「俺は…持ってないよ」
聞かれてもいないのに…ハルトは言った。
「えー意外ー、見た目的には2トントラックとか、割と似合いそうなイメージなのにー」
「あはははっ…」
そして車は、前回の下見のときにも寄った…楽しいSAに入っていった。
「お腹空いたー」
「グルグルポテトが美味しかったんですよ!」
「何それー?食べたいー」
車を停めて…僕らはワラワラと外に出た。
トイレに行ったり…売店を見たり、それぞれSAを楽しんでいる中…僕はサエゾウと一緒に、再びトルネードポテト屋さんの前にいた。
「すごーい!」
サエゾウも、お兄さんの妙技に見惚れていた。
僕らは揚げたてのポテトを、1本ずつ…ガツガツ食べた。
「ちょっと味見させて」
シルクが横から口を出した。
「はい」
僕は自分の食べかけのポテトを…彼の口の前に突き出した。
「美味しいよね!」
「…ん…」
もぐもぐしながら、シルクは大きく頷いた。
「俺にも食わせて」
カイは、返事を待たずに、サエゾウのポテトを持ってる手を握って、自分の方に持って行くと、バクッとひと口齧った。
「ホントだ…美味いな」
「カイのひと口、デカ過ぎー」
SA休憩も満喫して…
僕らは再び車に乗り込んだ。
カイが、運転を交代する事になった。
誰かさんみたいに、出せるものは出さないと勿体ないスピード狂な感じでは無く、基本真ん中車線のカイの運転は…まるで、カイの人柄そのものな感じがした。
心地良くリラックスして…
僕は段々ウトウトとしてきてしまった。
カシャッ…
「…」
安眠妨害なシャッター音で、僕は目が覚めた。
「寝てていいんですよ」
「…もう大丈夫です、目が冴えちゃいましたよ」
僕は眉間に皺を寄せながら答えた。
カシャッ…
ショウヤは、そんな僕の不機嫌そうな顔もカメラに収めると…満足そうに、前を向いた。
ショウヤのナビの下、車は高速を降りた。
「今日は先にスーパーに寄ります」
そう言ってショウヤは、先に調べておいたらしい、その近くのスーパーを、ナビの目的地に登録した。
街中を20分くらい走って…車は、大きなスーパーの、広い駐車場へと入っていった。
「すごく…広そうなスーパーですね…」
「…」
言葉には出さなかったが…隣のシルクのテンションが、静かに上がっているのが、伝わってきた。
チラッと見ると、彼は目を爛々と輝かせて、前のめり気味になっていた。
それを見て僕は、クスッと笑った。
車を停めて、僕らはまたワラワラと外に出た。
「何買うのー?」
「2泊3日分の、食料と飲み物を買います」
「今日はバーベキューでしょー?」
「はい、その予定です!」
「明日はシルクごはんとカオルごはんー」
「お願い出来るなら、それが理想です」
広いスーパーの店内に入ると、ショウヤは大きなカートを、ガラガラと押してきた。
「焼きたい野菜、どんどん入れてください」
「えーと…コレと、コレとー」
「玉ねぎと、かぼちゃですね」
野菜の名前が全く出てこないサエゾウが手に取る野菜を、僕はいちいち解説していった。
ナスとピーマンと…きのこ色々もカゴに入った。
「そんなに食えんのか?」
「残ったらシルくんが、何か作ってくれるー」
「残る大前提かよ…」
ボヤきながらも、シルクはとても楽しそうだった。
「生野菜も買っておく?」
「そうだな…サラダは欲しいよな」
レタス、トマト、きゅうりもカゴに入った。
「コーンは無いのー?あの塊のやつー」
とうもろこしの事かな…
「あれは夏しか売ってないと思いますけど…」
「あ、でもパックに入ってるので良ければあるだろ」
そう言ってシルクは、カット済み野菜や水煮野菜のコーナーを探しにいった。
「ほら、コレでいいだろ…」
「あーそうそう、それー!」
そして、加熱して真空パックに入ったとうもろこしも、カゴに入った。
「焼きそばも食べたいー」
「そうですね、鉄板もありますから」
「じゃあもやしとキャベツも買おう…」
「あとは鶏肉ー!」
「は、鶏肉?」
「バーベキューには牛肉だろ」
あれ、皆さん…付き合い長いくせに、サエゾウさんの、独自の鶏肉定義をご存知ないのか?
僕らは精肉コーナーに移動した。
「うわーどの鶏肉がいいかなー」
言いながらサエゾウは…綺麗に並んだ、もちろん牛肉を…手に取った。
「サエ、それは牛肉だぞ?」
「コレにしようー…あと、この厚ぼったいのもー」
人の話を聞かないサエゾウは、どんどん牛肉をカゴに入れていった。
「あーこの、とんかつみたいな鶏肉も焼いたら美味いんじゃない?」
「それは豚肉だけど?」
豚ロース肉も入った。
「サエさん、この鶏肉も…焼いたらきっと美味しいと思いますよ」
僕はそう言いながら…本物の鶏もも肉のぶつ切りを手に取って彼に見せた。
「あーそれは違うでしょー」
「…」
「だって、唐揚げ用って書いてあるじゃん…カオル、そんなのもわかんないのー?」
「……っ」
僕はまた、本気で眉間に皺を寄せた。
カートを押していたショウヤは…
それを見て、激しく肩を震わせて笑いを堪えていた。
ともだちにシェアしよう!

