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真夜中の庭でBBQ(3)

サエさんの言う所の鶏肉も、大量に買った。 海老や帆立…開いて干された魚も買った。 もちろん焼きそばも、その他にも、それぞれが焼いてみたい怪しい食材を、色々選んできてはカゴに入れていった。 「タレも色々買っとこう」 「塩コショウも欲しいですね」 「醤油もいるな」 「サラダのドレッシングも買っとく?」 調味料も、割といい量になった… 「ポテチも買うー」 言いながらサエゾウが、スナック菓子の袋をいくつも持ってきた。 中には本物のポテチも混ざっていた。 「あとはシルクさん、明日のために何か買っておきたいもの無いですか?」 「いや間違いなく残るだろ…」 そう言って彼は、パスタとバターとニンニクを持ってきた。 「残り物パスタだな」 「あ、それだったら…」 僕は、牛乳と小麦粉と…卵を持っていった。 「ああ、それだけあれば、グンと幅が広がるな」 シルクがそれを見て言った。 「何か、やっぱ…さすが助手って感じだね」 そんな僕らを見て、ハルトがショウヤに言った。 「あとは飲み物ですね…」 僕らは酒コーナーに移動した。 「どんだけ買ったらいいものか…」 「いっそケースでいいんじゃないー?」 「ビールはともかく、ハイボール缶なんてケースで売ってないだろ」 「店員さんに言えば出してくれるんじゃないですか?」 結局、店員を呼びつけての、ハイボール缶のケースを出してもらってしまった… あとはビールとレモンサワー缶も、それぞれそこそこ買って…焼酎やら、ワインやらも、どんどんカートに追加されていった。 「これ…ホントに残ったらどうするんですか?」 「持って帰ります…シルクさんちに」 「えっ…うちかよ」 「撮影打上げ用ー」 「…」 帰ったその日のうちに打上げですか… どんだけ呑みたいんですか… レジの店員さんもビックリな感じの大量の買い物を終えて… 僕らは手分けして、両手に袋を下げて車に戻った。 その大量の荷物も、何とか車に積み込んで…再びショウヤの運転で、車は出発した。 「今日は着いたら、荷物運んで片付けて…あとは呑みながらで大丈夫ですから」 「やったー」 そして、街中から山道にかけて…3〜40分くらい走っての…僕らは、例の別荘に到着した。 僕らはまた、ワラワラと車から降りた。 「へえー良い建物じゃん」 「おっしゃれー」 「中もすごく素敵なんですよ…」 言いながらショウヤは、ドアの鍵を開けた。 そして僕らは、買ってきた荷物を運びつつ、その中に入っていった。 「うわあーホントに、いい感じー!」 サエゾウは、荷物運びもそこそこに、部屋の中を物色していった。 荷物をキッチンに運んだシルクも…一層目を輝かせながら、手当たり次第、戸棚をバタバタと開けていった。 「すげーな…ホントに何でも揃ってるんだ」 「冷蔵庫もデカいな…」 運んだハイボールの段ボールを開けて、それを冷蔵庫に入れながら、カイが呟いた。 僕も、食材を、次々に冷蔵庫に入れていった。 「キッチンが片付いたら…今日は、3人のソロショットだけ撮りますので、ハルトさん準備をお願いします」 ショウヤがテキパキと指示を飛ばした。 「その間カオルさんは、バーベキューの準備をお願いしますね」 「…!」 ええーーっ!? 「カオルさんのソロは、こないだ結構良いのが撮れたんで…今日はいい事にしました」 「…」 「なので、キッチン担当でよろしくお願いします!」 「…わかり…ました」 そんなわけで… 他の皆がリビングの方で、しっかり呑みながら…ワイワイ着替えたりメイクをしたりしているのをよそに…僕は、ひとりでキッチンに入った。 とりあえず野菜を切るか… ひとりでハイボール缶を開けながら…僕は食器棚を漁って、切った野菜を乗せられそうな大きな皿を探した。  そして、玉ねぎ、かぼちゃ、ピーマン、ナスを、焼きやすい形に切っていった。 どれくらいかなー いやでも、どうやっても残るよな… 大皿2枚に並べても、とても全部は乗り切らなかった。 「わー美味そうー!」 冷蔵庫にハイボール缶のおかわりを取りに来たサエゾウが、それを見て叫んだ。 彼は、春っぽい、ヒラヒラのフリルのついたシャツを着ていた。 「素敵ですね、サエさん」 「でしょー」 そう言い残して、サエゾウは向こうへ行ってしまった。 「…」 僕はすごすごと作業に戻った。 焼きそば用の野菜も切っておくか… そしてキャベツにピーマン、玉ねぎにんじんを、小さめに切って、ボウルに入れた。 あとは…きのことか、ホイルに包んでおこう。 バターも買ってよかった。 僕は戸棚を漁ってアルミホイルを探すと、きのことバターを包んだものをいくつか作った。 「お、いいね…ホイル焼き」 またおかわりを取りに来たカイが、それを見て言った。 彼は、寒い季節のイメージだろうか…黒い長いロングコートを着ていた。 「カイさん…カッコいいですね…」 「ちょっと暑いな…」 言いながらカイも、向こうへ行ってしまった。 って事は、シルクは…夏かな? あんまり夏ってイメージ無いけどな… 想像しながら、僕はふふっと笑った。 そして、その他のウインナーやら厚揚げやらも、食べやすい大きさに切って、また別の大皿に並べていった。 真空パックのとうもろこしも、食べやすい大きさに切って、一緒に並べた。 「捗ってる?」 「…!!」 言いながら、おかわりを取りに来たシルクは… まさかの、上半身裸だった… 「その格好なの!?」 「ああ…若干不本意だけどな…」 下はスリムな黒いズボン… 胸元にはシルバーのネックレスが光っていた。 「…」 僕は、そんなシルクを見て… 思わず、顔を赤くしてしまった。 「なーに発情してんだよ…」 言いながら彼は、そんな僕の顔に手を当てた。 「…っ」 僕は更に顔を赤らめた。 「明日、この格好でいっぱい可愛がってやるから」 言いながらシルクは、そっと僕に口付けた。 「あーシルくん、何やってんのー!」 向こうーの方で、サエゾウの叫びが響いた。

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