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真夜中の庭でBBQ(4)

セクシーなシルクを見送って… 僕はまた作業に戻った。 サラダも作っておこうかな… ゆで卵でも乗せようか… 僕は小鍋を探して、卵を茹でた。 少し深い大皿に、切ったレタスとキュウリ、トマトを何となく盛って…その上にゆで卵スライスを乗せての、サラダは出来上がった。 他に何か切っておくものは… 僕は、冷蔵庫の中に何段にも積まれた肉のパックを見ていった。 分厚いステーキ用の牛肉と、やっぱり割と厚い豚ロース肉があった。 これは、焼いてから切り分けるか… そのときのためにと、僕はまた戸棚を漁って、キッチンバサミも探して出した。 このくらいでいいんじゃないかな… 心の中で呟きながら… 僕は冷蔵庫の中身を更に確認していった。 冷凍庫に、焼きおにぎりが入っていた。 誰だ、こんなの買ったのは…? でも、網で焼いたら…めっちゃ美味しそう… それもチンしてスタンバイしておく事にした。 「何か手伝う事ある?」 ハルトがやってきた。 「だいたい大丈夫だと思います」 「そっか…じゃあ、火の準備しようか」 そして僕は、ハルトの後について…外に出た。 「ハルトさんは、もうあっちは大丈夫なんですか?」 「うん、メイクは終わったからね…あとは、撮影終わるまでは何もする事無いから」 言いながらハルトは、車の後ろのドアを開けて…中に乗り込んだ。 そして、上に乗ってる荷物をよけながら、バーベキューコンロと炭の段ボールを、何とか取り出した。 「ごめん、これ、受け取れる?」 「あ、はいっ…」 僕はそれを受け取って、下に下ろした。 僕らはそれを、リビングの大きな窓の前の、テーブルと椅子が置いてある側に持っていった。 3人様が、絶賛撮影カッコつけ真っ最中だった。 そんな彼らを気にも留めず…ハルトはバーベキューコンロを箱から出して、着々と準備を進めていった。 あー 今日もスイッチ入ってるな… 彼らの様子を遠目に見て、そんな風に思いながらも…僕はハルトの手伝いに集中した。 ハルトは軍手をはめた慣れた手付きで、コンロに炭を入れて…着火剤を使って火を起こしていった。 「ハルトさん…スゴいですね」 「ウチの実家がね、割とアウトドア好きだったから…子どもの頃はよく、キャンプとか連れてかれたんだよね」 「そうなんですか…」 「今でも美容師仲間と、たまにバーベキューやりに行ってるよ」 「へえー」 「今度誘おうか?」 「あ、是非…お願いします」 「カオル可愛いから、皆にいじられちゃうかもしれないけどな…」 「…っ」 「はい、お疲れ様でした、今日はこれで終わりです!」 向こうでショウヤ監督の声が響いた。 「あー疲れたー早くバーベキューやりたーい!」 「お、準備すすんでるな…」 衣装を着たままの彼らが、こっちを見て言った。 「ちょうど良いな…カオル、あとココ頼んだ」 「えっ!?」 ハルトは、持っていたうちわを僕に渡した。 「これでパタパタして、火を広げといて」 「…わ、わかりました…」 僕は、ハルトがさっきまでやっていた見よう見まねで…煙を立てている炭を、パタパタとあおいだ。 段々と黒い炭に火が回って、白い部分が増えてきた。 「カオルさん、代わります…」 カメラの片付けを終えたショウヤがやってきて、僕に言った。 「お疲れ様でした…調子はどうでした?」 「おかげさまで、予定通り以上に良いシーンがいっぱい撮れました!」 「そうですか…それはよかったです…」 「ここに出てんの、運んでいいのか?」 着替えを終えたらしいシルクが、キッチンから叫ぶ声が聞こえた。 「あ、じゃあ…運んできますね」 「はい、お願いします」 僕は、パタパタとキッチンに戻った。 「もう大丈夫みたい」 「ん、わかった」 シルクと僕は、野菜やら何やらが並んでいる大皿を、次々と庭に運んでいった。 ほどなく、カイとサエゾウもやってきた。 「ここに出てんの運んでいいのか?」 「あ、はい…お願いします」 「鶏肉持っていくー」 そう言ってサエゾウは、冷蔵庫からどんどん肉を出して、勝手に持っていった。 焼きそばセットや魚介類…サラダに焼きおにぎり…小皿や調味料も運ばれて…庭のテーブルは、いっぱいになっていた。 すっかり準備は整った。 皆それぞれが、新しい缶も持ってきた。 「今日はお疲れ様でした…」 缶を手に、ショウヤが挨拶を始めようとした。 「はい、乾杯ー」 「にゃー」 それを遮るように、カイとサエゾウは、乾杯を強行した。 「…あ、明日もよろしくお願いします」 ショウヤの挨拶は強制終了となった… そして、楽しいバーベキューが始まった、 「よっしゃー食べるぞー」 「もう焼いていいんだよな」 「はい、どんどんいっちゃってください」 「鶏肉焼こう鶏肉ー」 「牛肉だけどな…」 肉と野菜が、どんどん網に乗せられていった。 ハルトのおかげな良い火加減で、それらはどんどん焼けていった。 「もういいかなー」 「食えれば大丈夫だろ」 「いただきまーす」 焼ける側から… それらはどんどん取り尽くされていった… 「美味ーい!!」 「うん、美味いな」 「このデカいやつも焼いていいー?」 「いーよいーよ、どんどん乗せとけ」 「あ、じゃあこのきのこバターも端っこで育てておいてください」 賑やかしく、皆がガツガツしている中…ショウヤが僕の隣に来て、言った。 「カオルさん、準備ありがとうございました」 僕は、もぐもぐしながら答えた。 「いえいえ…素敵なキッチンいっぱい使えて、楽しかったですよ」 「いっぱい食べて、英気を養っておいてくださいね…明日はとても頑張ってもらいますから」 「あーはい…」 果たして、何をとても頑張る事になるのか… 「あーカオルー!それ、俺が焼いた鶏肉ー!」 「サエさん、自分が選んだ野菜も食べてください」 そんな、お決まりのサエゾウと僕との攻防戦も交えながら…楽しいバーベキューは、まだまだ続いていくのであった。

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