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真夜中の庭でBBQ(5)

肉も魚も野菜も満喫した頃に… 僕はチンした焼きおにぎりも網に乗せてみた。 「あーこれこれ!」 「これ買ったのって…サエさんですか?」 「だってカブツが食べたいからー」 「あー…ですよね!」 激しく同意して…僕は、香ばしく焦げ目が足されたおにぎりを、自分の皿に取った。 「熱っ…美味しいっ…」 ふうふうしながら食べる、熱々のおにぎりは…それはそれは美味しかった。 「あとは焼きそばですね…」 「食えんのか?」 「食えるー!」 ハルトが、また慣れた手付きで、焼き網を鉄板に取り替えた。 「ハルト作れんのー?」 「バーベキューの焼きそばだったら作れる…」 言いながらハルトは、油を敷いて…チャッチャと肉や野菜を炒めていった。 何ていうか…ワイルドな男料理って感じだった。 「麺…入れてくれる?」 「オッケー」 そう言って、麺をドバドバと入れたのは…これまた珍しく、カイだった。 「混ぜていいのー?」 「うん、ガッツリ混ぜて」 なんと、サエゾウも参加した。 「…」 バーベキューって…普段、あんまり料理をしない人が、色々やりたがる場なんだな… 思いながら僕は、3人が協力して焼きそばを作っているのを、微笑ましく見ていた。 カシャッ… ショウヤもそう思ったのか…しっかりその様子をカメラに収めていた。 「よし、出来た…」 「お皿貸して、山分けする」 「俺はちょっとでいい」 「じゃあシルくんの分、俺が食べるー」 そんな感じで、ワイルド焼きそばも食べ終えて… 僕らは、手分けをして、その場を片付け始めた。 ハルトとカイは、外で網や鉄板を洗ったり、コンロを片付ける係になった。 残りの4人は、残り物や食器をキッチンに運んだ。 シルクは残った食材をまとめる係…サエゾウとショウヤは、シルクの指示のもと、ゴミを集めたり、外のテーブルを拭いたりしていた。 僕は、ひたすら洗い物をする係になった。 残り物の在庫状況を見ながら、シルクが僕に言った。 「明日もバーベキュー出来そうな残り具合だな…」 「あはははっ…それは流石にもういいよね…片付けるのも大変だし…」 「昼はパスタにするか」 「そうだね…」 「夜は、残ってる肉を、フライパンで焼こう…お前も何か作れそう?」 「牛乳買ったから…かぼちゃとかで、グラタン風にしようかな…」 「パン粉もチーズも無いけど…?」 「うーん…何か考える…」 僕は、サエゾウ買ったポテチの中に…ポテチじゃない、チーズスナックの袋が混ざっていたのを思い浮かべていた。 片付けも終わったあとは… シャワーを使ったり…リビングでテレビを見たり… また飲み直したり… それぞれ、好きな時間を過ごしていた。 ショウヤはPCを持ち込んで…すでに今日撮った動画を加工しているようだった。 その作業が一段落したらしい所で、彼はパタンとPCを閉じると…改まったように、皆に向かって言った。 「おそらく既にご存知かと思いますけど…実はベッドが、5つしかありません」 「えーじゃ、俺カオルと一緒でいいー」 「いやダメです、カオルさんは明日のために、ゆっくり寝てもらいたいので…」 「…」 皆、ショウヤの次の言葉を固唾を飲んで待った。 「ハルトさんとシルクさん…一緒のベッドでいいですか?」 「えー!?」 「何でだよ」 「そのペアがいちばん、危険が無さそうなので…」 確かに…お母さん同士だもんな… 僕は思わず、肩を震わせて笑った。 「何にもしないからカオルと一緒じゃダメー?」 サエゾウが食い下がった。 「ダメです!…サエさんのそんな台詞、信じられるワケ無いじゃないですか」 「ちぇーっ」 「明日は好きなようにして頂いて構わないので…今日は皆さん大人しく寝てください!」 ショウヤは、畳み掛けるようにビシッと言い放った。 「…」 「……」 誰も反論出来なかった… 「あ、ちなみに明日は、6時起床でお願いしますね」 「ええーっ!?」 「そんな早く?」 「あんまり陽が高くならないうちに、演奏シーンを撮りたいので…」 「起きれなーい」 「はたき起こします」 「ショウヤ怖いー」 「そうだった…ショウヤはサエよりドSなんだっけ…」 ハルトが呟くように言った。 「皆、下手に歯向かわない事をお勧めするよ…」 そう続けると…ハルトはすごすごと、洗面所に向かっていった。 「そうだな…ショウヤの言う事聞いて、今日は大人しく早く寝るか…」 カイも続いた。 「つまんないのー」 「いいじゃん…お楽しみは明日にとっとけば」 「明日は容赦しないかんねー」 僕に向かってそう言い捨てて…サエゾウもカイに続いた。 「…」 「僕も寝ます…」 そう言って…ショウヤも、その場から離れようとしたが…ふと、振り返って、言った。 「ここでコッソリ何かするのもダメですからね!」 「…っ」 「はいはいはい…」 シルクは溜息をつきながら答えると…飲み切った空き缶を持ってキッチンに行った。 僕も、シルクの後を追った。 「仕方ないよな…PVを作るために来てんだから」 空き缶をポイッと捨てると…彼は僕を振り向いた。 「言う事聞いて…俺も寝るわ」 「あはははっ…」 そして僕らも洗面所に行った。 既に他の4人は、2階に上がっていた。 僕らは鏡に向かって、並んで歯を磨いた。 「でも…楽しいね」 「そうだな」 口を濯いでから…僕は、シルクの顔を見上げた。 シルクは、チラッと僕の方を見てから…すぐに前を向いて、自分も口を濯いだ。 「…変に刺激しないでくれる?」 「…えっ?」 「間違ってハルトに襲い掛かったら困る」 「…っ」 そしてシルクは、僕を置いて… 逃げるように2階に上がっていってしまった。

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