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真昼の庭での撮影(3)

「美っ味ーい」 サエゾウは、雄叫びを上げた。 「うん、美味いな…」 「肉がガッツリ入ってるのが嬉しい…」 「めっちゃボリュームありますね」 「うん…まあまあだな…」 ひと仕事終えて、とてもお腹が空いていた僕らは…その、シルク特製バーベキュー残り物パスタを、ガツガツと食べ進めていった。 「ふぅー美味かった…おかわりあるー?」 「早っ」 「無い」 「えーもっと食べたーい」 「俺の、ちょっと取っていいよ」 「あ、僕のも良かったら少し取ってください」 「えー?いいのー?」 全く遠慮の無いサエゾウは、ハルトとショウヤから、少しずつ分けてもらって、また食べ始めた。 「すんごい美味いー」 「そう言ってくれんのは嬉しいけど…ちょっと食い過ぎなんじゃないの?」 「だっていっぱい働いたしー」 サエゾウは、モグモグしながら続けた。 「このあと、カオルとヤるしー」 「…っ」 あーやっぱり… そんな事ばっかり言ってたんだ… そういう僕も…食べ終わってしまった。 若干…腹八分目くらいだった。 「俺の、ちょっと分けてやろうか?」 シルクが言った。 「う…ううん、大丈夫…」 「もらっといた方がいいですよ、カオルさん!」 ショウヤが突っ込んだ。 「このあと、いちばん体力使うのは、カオルさんですから!」 「……」 どういう体力を期待されてんだか… 「ショウヤもああ言ってっから…食べとけ」 そう言ってシルクは、自分の皿に残っていた分の半分くらいを、僕の皿に分けた。 「あ、ありがとう…」 結局僕は、それも、ペロッと食べてしまった。 「ごちそうさまでしたー!」 それぞれが食べ終わったのを見計らって、ショウヤが改めて言った。 「そしたら、30分くらいしたら再開しますので、それぞれ、ご希望のシチュエーションでかあれば、考えておいてください」 「どんな風にヤるか、考えればいーんでしょー?」 「それでもいいです」 「…」 僕は、小さく溜息をつきながら…皆の空いた皿をまとめて、キッチンに運んでいった。 それらをカチャカチャと洗う僕の背後に、シルクが黙って近付いてきた。 彼は、僕が洗って水切りカゴに置いた食器を、布巾で拭いては戸棚に片付けていった。 「俺は…夏担当だからな…」 「えっ…」 「ま、楽しみにしといて」 「…」 そう言い残して、彼はさっさと向こうへ行ってしまった。 「…」 楽しみって言うか…何て言うか… リビングに戻ると… ハルトが、カイのメイクを塗り直していた。 「あ、次…カオルも手直しするからね」 「はい…」 ショウヤは、PCに向かっていた。さっき撮った動画を加工しているようだった。 シルクは、庭先で煙草を吸っていた。 サエゾウは…ソファーに転がって、寝ていた。 「はいオッケー…じゃ、カオルちょっと来て」 「…」 僕は、カイと代わって…サエゾウが寝ている向かい側に座った。 カイは、シルクの所に…煙草を吸いに出ていった。 「ふうー」 言いながらショウヤが、PCから顔を上げた。 「あ、じゃあ…カオルさん準備出来たら…カイさんとのツーショットいきますね」 「…はい」 「その辺の…暖炉の辺りが良いかと思うので…ちょっとサエさんどかしたいですね…」 ショウヤのそんな呟きを聞いて… 僕はクスッと笑ってしまった。 「サエ、どけってさ…」 いつの間にか戻ってきて、それを聞いていたシルクが、寝ているサエゾウを揺り起こした。 「うーん…」 「起きろって…」 「眠いー」 「場所変えて寝ろ」 「んー…シルくん連れてってー」 サエゾウは、そう言いながら…シルクに向かって両手を伸ばした。 そんな風景が…メイクをされている僕の視界の隅っこの方に、否が応でも入ってきた。 「しょうがないな…」 ボヤきながらも、シルクはそのままサエゾウを抱き起こした。 しっかりシルクに抱きついて…支えられながら起き上がったサエゾウは…そのままシルクに抱きかかえられながら、階段の下ら辺に連れていかれた。 シルクはサエゾウをそこへしゃがみ込ませた。 「次、お前なんだから…そろそろ起きとけよ」 「んー」 唸りながらサエゾウは、階段にもたれかかって…また目を閉じてしまった。 「…」 僕は、心ここに在らずな感じで、その一部始終を、横目でチラチラと追っていた。 「ふふっ…ショウヤじゃなくても、カオルはわかりやすいんだな…」 ハルトは、とても小さい声で呟いた。 「はい、出来たよ」 「あ、ありがとうございます…」 ハルトは、僕の頭を撫でながら続けた。 「これから、カイとツーショットなのに」 ハルトにそんな風に言われて…僕は思わず、顔を赤らめてしまった。 …と、いつの間に、僕の横に…カイが立っていた。 「…っ」 彼は、僕を見下ろして、ニヤッと笑った。 そして僕の手を、グイッと掴んで立ち上がらせると…僕の耳元に口を寄せて…囁くように言い放った。 「大丈夫…そんなの考えられなくなるくらい、俺のターンの間は、俺に夢中にさせてやるから」

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