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真昼の庭での撮影(6)

「お疲れ、カオル…ちょっと休憩する?」 「…はい」 リビングに戻ったハルトは、僕の身体をソファーに仰向けに横たえた。 「お疲れ…」 言いながらシルクは、自分が吸っていた煙草を、僕の口に吸わせた。 「…ふぅー」 煙を吐き出しながら…僕は目を閉じた。 「もうー置いてかないでよー」 泣きそうに情けない声で言いながら、遅れてサエゾウが戻ってきた。 ショウヤも戻ってきた。 「カオルさん…調子はどうですか?」 「はい、大丈夫です…ちょっと休んだらやります」 ここまで来たら、さっさと終わらせたい… 「俺、どうだったー?」 「とてもエロくて良かったです!」 「ふふん…だよねー」 サエゾウは、ケロッとドヤ顔に戻った。 「もう飲んでいいのー?」 「いいですよ」 「やったー」 そう言って彼は、キッチンの方へ行ってしまった。 「カイさんは?」 「ひと眠りするって…上行った」 僕も飲みたい… 僕もひと眠りしたい… ショウヤとハルトが言い合っているのを聞いて、激しくそう思いながら、僕はゆっくり身体を起こした。 「ふうー」 「行けそうか?」 シルクが僕に声をかけた。 「…うん」 「あ、待って…頭ちょっと直すから」 「いいよ、そのままで」 そう言ってシルクは、僕の手を掴んで続けた。 「もっと遊んで、グチャグチャにさせるから…」 「…っ」 僕はまた、胸に寒気が走るのを感じた。 「じゃあ、行きますか…」 「よし、行こう」 そしてシルクは僕を立ち上がらせると…手を繋いだまま、再び僕を外に連れ出した。 また青姦か… ま、でも、最後がシルクでよかったかな… 心の中でそう思いながら、 僕は黙って彼についていった。 カメラを抱えたショウヤは、そんな僕らの背中を見ながら、少し寂しそうに、でも穏やかに…微笑んでいた。 「グチャグチャに遊ぶって…そういう事???」 曲を流すわけでもなかった。 上半身裸なシルクは…僕を、そこら中連れ回して…ただだだ、まさに遊んだ。 向こうの大きな木を目指して、ダッシュで走ったり… 大きな幹の回りを、追いかけっこのようにグルグル回ったり… 太くて斜めに生えている木によじ登ったり… 茂みの中の花を探したり… そして、ひと通り遊び終えた僕らは… さっきサエゾウと絡んだ草むらに、並んで寝転がって、空を見上げていた。 「せっかくの大自然だからな…嫌か?」 「ううん…すごく…楽しい」 シルクは、ゆっくり身体を起こすと…隣に仰向けになっている僕を見下ろした。 「チューくらいはしとくか…」 「…ふふっ」 そう言って彼は… 僕のくちびるに、自分のくちびるを重ねた。 目を閉じて、シルクのくちびるの感触に酔う僕の耳に…どこからともなく聞こえる鳥の囀りが、心地良く響いた。 そっと口を離れた彼に向かって、僕は言った。 「もっと…しなくていいの?」 「何?…もっと…して欲しいの?」 僕は、目を閉じて小さく首を横に振った。 「…しなくても…いい」 シルクは、僕の髪を優しく撫でながら続けた。 「後でするかもな…」 「…ん」 しばらくして彼は、僕の手を取って起き上がらせた。 「走るぞ」 「また?」 僕らは手を繋いだまま… 走って、建物の近くまで戻った。 ショウヤも必死でカメラを回しながらついてきた。 車が停めてあるよりずっと向こう側に、小さい水道があった。その蛇口の先に、ホースが繋がれていた。 「夏だからな…やっぱ水遊びだろ」 言いながらシルクは、そのホースを持って、水道の栓を捻った。 彼は、先からジャージャーと水が流れ始めたそのホースの先を持って、高く掲げて続けた。 「逃げないと、ビチョビチョになるぞ」 「えええーっ!?」 彼がホースの先を押さえると…その水が、プシューッとスプリンクラーのように大きく吹き上がった。 シルクはそれを、僕の方に向けようとした。 「うそでしょー」 僕は慌てて走って逃げた。 最初は手加減して、ギリギリの所で僕を逃してくれていた彼は、ほどなくついに、僕はその水飛沫で僕を狙い撃ってきた。 「うわっ…」 逃げ惑う僕を、執拗に水飛沫が追ってきて…僕はすぐに、ビチョビチョになってしまった。 いったんホースを押さえる手を緩めたシルクは、それを僕に向かって差し出しながら言った。 「交代」 「…っ」 僕が、それを受け取るが早いが、シルクは全力で走って逃げていった。 僕は慌ててホースの先をギュッと押さえると、シルク目掛けて水飛沫を飛ばした。 手加減は、しなかった。 彼が敢えなくビチョビチョになるのに、そう時間はかからなかった。 上半身裸で、ビチョビチョなシルクが…降参した感じで、僕に近寄ってきた。 僕は、水道の栓を閉めた。 「すげー楽しかったな」 「うん」 シルクは、両方の手で、僕の両腕を掴んだ。 「ビチョビチョなお前も…相当エロいな…」 「ふふっ…シルクもね…」 そうして僕らは、まるで撮影なんかどうでもいいように…どちらからともなく、吸い寄せられるように口付けた。 ショウヤは、夢中でカメラを回し続けた。 それはあまりに自然で…美しい光景だった。 お互いに、濡れた身体や髪を弄り合いながら…僕らはいつまでもくちびるを重ね合っていた。

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