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真夜中の庭で打上げ(1)

お風呂から上がって、サッパリした僕らは…とりあえずリビングを覗いた。 ショウヤがPCに向かって、作業に集中していた。 サエゾウは、相変わらず寝ていた。 「カイさんとハルトさんも…まだ寝てるのかな…」 「俺も眠いなー」 シルクが大あくびをしながら呟いた。 「でも…料理するんでしょ?」 「んーちょっと面倒くさいけどな…」 そして僕らは、キッチンに移動した。 「とりあえず乾杯だな」 「そうしよう!」 何はともあれ、冷蔵庫からハイボール缶を取り出すと…僕らはプシュッと空けて、乾杯した。 「お疲れ〜」 「お疲れ様…」 そしてゴクゴクと飲んだ。 「ああーーっ…美味しいー!」 「風呂上がりだしな…」 とりあえず、一服した僕らは…覚悟を決めて、冷蔵庫に残っている食材と…向き合った。 「グラタン作るんだっけ?」 「そうだね…かぼちゃで…それでも余っちゃうかな…」 僕は、うーん…と考えた。 「小麦粉あるから、それでも残ったかぼちゃは、芋もちっぽくしようかな」 「いいね…パスタ無くなったし…炭水化物枠で」 「肉は、シルクに任せる…」 「まあ…焼くしかないけどな…」 「魚介はどうする?」 「んーどれも中途半端だな…あれか、全部一緒に煮て、アクアパッツァ的なのにするか」 「おおおー!いいねー」 「パンが欲しくなるな…」 「小麦粉の残りで、何とかならないかな…」 「そうだなぁ…」 シルクも唸るように考えていた。 「伸ばして…焼くか…クレープみたいな感じに」 「いいと思う!そしたら肉も巻いて食べれるし」 「生野菜もちょっと残ってるから、サラダも出来そうだな」 「うん…残ってる卵も、茹でて乗せよう」 「よし、だいたいの方向は決まったな…」 そして僕らは、作業に取り掛かかった。 僕はまず、かぼちゃと卵を茹でながら…サラダ用の生野菜をカットしていった。 その間シルクは…冷蔵庫の肉を取り出しては、ブツブツ呟いていた。 僕は続けて…玉ねぎを切っていった。 「半端に残ってる、このキノコも…グラタンに使ってくれる?」 「わかった…」 僕は、キノコも切ってから…まな板をシルクに明け渡した。 「さてと…どうするかなー」 とても厚切りのステーキ用牛肉… カルビとロース… 小間切れの豚肉も残っていた。 「やっぱ今日もバーベキューにすべきだったな…」 溜息をつきながら彼は言った。 「あはははっ…」 「とりあえずこの…どう見ても焼き肉用のヤツは、タレで焼くしか無いな…」 「豚肉は茹でたら良いんじゃない?玉ねぎと混ぜても良いし…」 「そうだな…あとはこれか…」 彼は、いちばん手強そうな、厚切り肉のパックを、とりあえず開けた。 「ローストビーフ的にしてみるか…」 「おおー良いと思う!」 シルクが、厚切りビーフの下ごしらえをしている間に、僕は玉ねぎとキノコを炒めて、ホワイトソースを仕上げていった。 そしてそれを、茹でたかぼちゃと合わせて、大きめの深い皿に盛った。 「チーズとパン粉はどーすんの?」 「ふふふふっ…」 僕は、サエゾウが買ってあった、チーズ味のコーンスナックの袋を持ってきた。 「これで代用してみようと思う…」 「マジか…」 半ば呆れ顔のシルクをよそに…僕はそのスナックを…潰してパラパラとトッピングした。 「グラタン仕込みオッケーです!」 「じゃあ、豚肉もよろしく」 そして、シルクが厚切りビーフに、フライパンで焼き目を付けている隣で、僕は鍋にお湯を沸かして、豚肉と玉ねぎを茹でていった。 「何か良い匂いするー」 いつの間にか起きたらしいサエゾウが…肉の焼ける匂いに釣られてやってきた。 「うわーめっちゃ美味そうー」 「まだまだ時間かかるけど?」 「あっ俺のポテチー食ったのー?」 「食ってません!…ちょっとグラタンに使っただけです…って、ポテチじゃ無いし…」 「あと30分くらいはかかるから…今のうちに他のヤツら起こしといて」 「んーわかったー」 そう言ってサエゾウは、コーンスナックの袋を持って出ていった。 「食べちゃうのかな…あれ」 「ま、あれくらいじゃ、アイツの腹の足しにはなんないだろ」 笑い合いながら…僕らは作業を進めた。 僕は、残りの茹でかぼちゃに、小麦粉と牛乳を足して、かぼちゃ餅の生地を作ると…小さく平たく丸めて、フライパンで、焼いていった。 シルクは、残っていた魚介類を、空いた鍋に入れて火にかけると、それが煮立っている間に、同じく残った小麦粉で、なんちゃってクレープの生地を調合していった。 「それ終わったら、コレもひたすら焼いてくれる?」 「わかった!」 僕が、その、なんちゃってクレープを量産している間に…シルクは、魚介の味付けをして、アクアパッツァを完成させた。 そして最後に…焼き肉を、豪快にジュージューと焼いていった。 「めっちゃ良い匂い…」 「おーお疲れ…」 カイとハルトも起きてきた。 「何か手伝う事ある?」 ハルトが言った。 「もうだいたい出来てっから、テーブルのセッティングしてくれる?」 「了解…」 なんちゃってクレープは…結構な量だった… 「ふぅー」 「代わるか?」 「いや…大丈夫!」 大変だけど、何としてもやらなければ… 奇妙な責務感に駆られていた僕は、 半ばムキになって答えた。 「…」 そんな僕に向かって、シルクは冷ややかに言った。 「お前って…やっぱ基本、自虐体質だよな…」 「…」 僕は何も言い返せなかった…

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