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楽しい観光(2)

「牧場と言ったらこれでしょー」 エサやりも満喫した僕らは、ソフトクリームを買って食べながら、そのエリアを後にした。 「美味しいですね!」 「うん、牛乳の味がするー」 そして僕らは、アトラクションが色々並ぶ…いわゆる遊園地のようなエリアに入った。 「へぇー色々あるんだな…」 「何か乗るー?」 「あー俺はいいかな…」 「あっ…」 ショウヤが、叫んだ。 「あれ、乗ってください!」 彼が指差す方に…メリーゴーランドがあった。 「乗ってくださいって何…」 「撮影したいです!」 ああ…そう言う事ね… 「…なんか、酔いそうだな…」 あまり気が乗らない感じのシルクをよそに…ショウヤはさっさとチケットを買うと…有無を言わさず、僕ら4人に手渡した。 「はい、いってらっしゃい!」 「よっしゃー」 僕らは、スタッフさんにチケットを渡して、ゾロゾロと乗り場の中に入っていった。 「あっ…サエさんはそれに乗ってください…えーと、カイさんはその黒いやつがいいかな…」 柵の外から、ショウヤがいちいち指示を出した。 「めんどくさいな…」 「シルクさんも、そこの黒いやつ…で、その前の白いのにカオルさんがいいです」 めんどくさいなと思いながらも…僕らは彼の指示に従った。 ビーッ ブザーのあとに、音楽がなって…メリーゴーランドが、ゆっくり回り始めた。 「う…やっぱ酔いそうだ…」 僕の背後で、シルクが呟いた。 唸るシルクを気にも留めず…ショウヤはカメラを回し続けていた。 やがて、段々とゆっくりになり…音楽とともに、メリーゴーランドも、完全に止まった。 「シルク…大丈夫?」 「んーあんまり大丈夫じゃない…」 若干ふらつく彼の腕を掴みながら…僕らは乗り場を離れた。 「楽しかったー」 「ありがとうございました、良い画が撮れました!」 「シルク…顔色悪くない?」 ハルト母さんが、シルクの顔を覗き込んで言った。 「酔っちゃったみたいです」 「あーあ…じゃあ、ちょっと座って休んでた方がいいね」 僕は、近くにあったベンチに、彼を座らせた。 「じゃあ、シルくんが休んでる間に…何か乗ってきていーい?」 「いいけど」 「カイー行こうー」 「しょうがないな…」 「カオルも行ってくれば?…俺もここにいるから」 シルクの隣に座りながら、ハルトが言った。 「ハルトさんは行かなくていいんですか?」 「俺も酔いそうだから止めとく」 僕は、ちょっとだけ考えて…答えた。 「…じゃあ、行ってこようかな…」 「僕も行きます!」 「うん、いってらっしゃい」 そして僕らは、しばらくそのエリアの、色々なアトラクションを楽しんだ。 空いていたので、特に並んだり待ったりする事もなく…なんだかんだで割と長い時間、あちこちを巡ってしまった。 たまにシルクの方を見ると… 彼は、ベンチに寝っ転がっていた。 その隣でハルトがスマホをいじっていた。 やがて、彼らのいるベンチに戻ったときには、 シルクの顔色も復活していた。 「そろそろいきますか…」 「他、何かやり残した事はない?」 「ボートとか…乗らなくていいですか?」 「乗りたーい!」 とにかく何もかも、やりたがりのサエゾウのひと声で…僕らは最後に、広い池のボートに乗る事にした。 「これは酔わない?」 「回らなければ大丈夫だ」 「そーいうもんなの?」 そして僕らはボート乗り場に着いた。 「カオルと乗りたーい」 「あーそれは、どうかな…」 「公平に、ジャンケンにしますか」 「ジャンケンっていうか…グーチョキパーで分かれたらいいんじゃないのか?」 そんな風に、いい大人…いいミュージシャンの面々が、子どもみたいに賑やかしく揉めている様子を… ハタから遠目で見ている人たちの目には、果たしてどんな風に移っているんだろうか… そして、僕らは…3槽に分かれてボートに乗った。 「意外に意外なペアになったね…」 僕は足でペダルを漕ぎながら…隣に座るシルクに向かって言った。 その、僕らのボートの横を、手を振りながら…カイとショウヤのボートがすり抜けていった。 「カイさんとショウヤさんが絡んでるのとか、一度も見た事ない…」 「ははっ…そうだな…」 「あの激しいカイさんと、スイッチ入ってないショウヤさん…意外に相性いいんじゃないのかな」 「過去には、あったかもしれない…お前がまだ入る前とか」 「そうなんだー」   「あーなんか、イチャイチャしてるー」 前を横切っていくボートから、サエゾウの声が響いた。その奥で、ハルトが手を振っていた。 「サエさんとハルトさんってのも珍しいよね」 「あの2人は…何となくオーラが似てるからな」 「でも…あの2人だったら…めっちゃエロい感じになりそうだよね…」 あのオカシイ2人が絡む様子を、思わず想像してしまった僕に向かって、シルクは呆れたように笑いながら言った。 「…って、お前の頭ん中って、そればっかりだな」 「そ、そういうワケじゃないけど…」 僕は思わず真っ赤になった。 「ま、お前は…誰とペアになっても…意外じゃ無い感じがするってのは…そういう事なんだろうけどな…」 「…」 言いながらシルクは、僕の手をギュッと握った。 「せっかくだから…もっとサエを怒らしとくか」 「…っ」 そう言うが早いが…シルクは、僕に顔を近付けると、シュッと口付けてきた。 「あーーもうーー何やってんのーーー!!!」 遠くから声が響いた。 まさに期待通りの… 単純なサエゾウだった…

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