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帰還

色々満喫して… お土産やら、打上げ用のつまみやらも買ったりして…僕らは車に戻った。 「あとはノンストップで、ひたすら帰ります」 「途中で運転代わるか?」 「あ、はい…お願いするかもです」 そしてショウヤは、車を発進させた。 カイは、またYouTubeで…トキドルのライブ映像を流した。 それを聞き流しながら…僕はすぐに睡魔に襲われた。 「昨日の新曲の音源は無いんですか?」 「あーあるけど、流せるかな…」 「スマホに…これ繋いだら、出ると思うんですけど…」 前の2人が、色々とゴソゴソやっているのを聞きながら、僕は目を閉じてしまった。 ほどなく…サエゾウが作った、黒いワルツの音楽が流れてきた。 「あー俺やっぱ天才ー」 そんなサエゾウの呟きを最後に… 僕は完全に寝落ちてしまった。 気が付くと…車は、どこかのSAに停まっていた。 「トイレ行かなくて平気?」 シルクが僕に声をかけた。 「うん…大丈夫…」 そう答えた僕を残して、車のドアがバタンと閉まった。 前を見ると…サエゾウも爆眠していた。 僕はちょっと安心して、また目を閉じた。 それから、しばらくして…トイレ組がバタバタと車に戻ってきた音がした。 そして、カイに運転が代わったであろう車は…再び発進した。 次に僕がようやく目が覚めたときには… 車は既に高速を降りて、ほどなく、機材を借りたスタジオの前に到着してしまった。 「んー」 皆がバタバタと車から降りた。 僕も、寝ぼけ眼で後に続いた。 ショウヤとカイは、トランクを開けると、テキパキと機材を下ろしていった。 そして僕らは手分けをして、それらを地下の店の中へと運んだ。 「お疲れ様でした…どうでした?」 待ち受けていたスタッフさんが、声をかけてきた。 「すげー楽しかったー」 「良い動画撮れました?」 「それはもう、おかげさまで、良い画がいっぱい撮れました!」 「出来上がりのUP、楽しみにしてますねー」 「はい、めっちゃ楽しみにしといてください!」 無事、機材の返却も終えて…それから車は、そこから少し走って、シルクの家の前に着いた。 残りの飲み物や食べ物…各自の楽器や荷物も下ろされた。 「僕は車を駐車場に戻してから向かいます」 「ありがとうな、ショウヤ…」 車を見送って…それらの荷物を手分けして持って…僕らは、シルクの家に戻った。 「ふうーお疲れ」 そして僕らは、バタバタと荷物を整理した。 「ハイボール缶…全然冷えてないけど、どうする?」 「あーそうだな、氷買ってくるか」 「いいよ、行ってくる…」 「ついでに食べ物と飲み物も買うー」 そう言って、ハルトとカイとサエゾウは、買い出しに出かけていった。 「飲み物、結構残ってるけど…」 「まあ、足りないよりはいいだろ」 その間に、僕らは持って帰ってきた残り物を取り出した。 「ダメになってないかなー」 「変な匂いがしなきゃ大丈夫なんじゃない?」 「んー良い匂いだから…大丈夫そう」 それらを適当な皿に盛ったり…お土産屋で買ったチーズを切ったりして…とりあえず留守番チームの作業は終わった。 「はあー…帰ってきちゃったね…」 「ああ」 並んで煙草を吸いながら…僕は少しだけ寂しい気持ちになった。 「でもさ、帰ってきても一緒にいられるって…何か、いいよね」 「そう?」 「うん…だってさ、普通だったら、それぞれの家に別れて帰るから、余計に寂しくなっちゃうじゃん」 「…」 「だから…帰ってからも、皆が一緒って言うのは、すごく嬉しいなーって」 「…」 それを聞いたシルクは、何とも言えない、とても穏やかな表情で、僕を見た。 そして、ふふっと笑いながら、冗談めいた口調で言った。 「散々ヤり散らかされて…帰ってからもまたヤられるかもしれないのに?」 「…っ」 僕は、顔を赤らめながら、煙草をもみ消した。 続いて煙草を消した彼は、ガラガラと窓を閉めると…突然、勢いよく、僕の身体を抱きしめた。 「…っ!」 僕の胸に、シュッと寒気が走った。 シルクは僕の肩に顔を埋めたまま… 呟くように言った。 「あんなにヤった筈なのにな…何で、まだまだ足んないんだろうな…」 「…っ」 そんな彼の言葉に… 僕の胸には、何度も何度も寒気が走り抜けた。 …シルク… 僕は…そんな自分の胸の高鳴りに、 勝手に突き動かされるように、言ってしまった。 「…僕も…足りないのかな…」 「…」 「何でこんなに…欲張りになっちゃったのかな…」 「…っ」 それを聞いたシルクは…たまらないような表情で、僕の顔を押さえると、力強く口付けてきた。 「…ん…んんっ…」 容赦なく、彼の舌が僕の口の中に責め入ってきた。 僕の胸の寒気は、更に加速した。 …ダメ… 皆が…帰ってきちゃう… 思いながらも、僕はその、激しい口付けに…どんどん身体の力を奪われていった。 「んんっ…ん…」 ついに僕は、ガクンと膝を折ってしまった。 崩れ落ちた僕を、抱きとめながら支えると…シルクは、そのまま僕を、テーブルの所まで連れていって、椅子に座らせた。 「はぁ…はぁ…」 僕は必死に、呼吸を整えた。 シルクはそんな僕を見下ろして、 ニヤッと笑って言った。 「ヤバいな…すげー美味そうな顔になっちゃった」 「…」 「他の料理より先に…サエに食われちゃうかもな」 「…っ」 もうー何て無責任な事を… あなたが無理矢理スイッチ入れたのにー

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