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改めて慰労会(1)

「あれ…カオルさん、具合悪いんですか?」 買い物チームより、ひと足先に戻ってきたショウヤが、下を向いて座っている僕を見て言った。 「ちょっと疲れただけだろ?」 シルクが向こうでしれっといった。 「……」 しばらく僕らの様子を凝視したショウヤは、やがて、何かを悟ったかのように、ニヤッと笑った。 「ああ…そう言う事ですか…」 そして彼は、僕の隣にスッと座ると…僕の耳元で囁くように続けた。 「相変わらず…意地悪ですね、シルクさんって…」 「…っ」 「ただいまー」 買い物チームの3人が、バタバタと戻ってきた。 「はぁー重かったー」 「サエが欲張って色々買い過ぎるからだろ」 「お疲れ様でした」 ショウヤも手伝って…買ってきたものを、ドサドサとテーブルに並べながら…ふと、僕の様子に気付いたハルトが言った。 「あれ、カオル…どうしたの?」 「…な、何でもないです」 僕は慌てて、立ち上がった。 「疲れちゃった?…いいよ無理しないで、座ってて…」 「…大丈夫ですっ…」 言いながら僕は、逃げるようにキッチンへ行くと、バタバタと勝手知ったる感じで、戸棚からグラスを人数分取り出した。 それを見て、クスクス笑うショウヤに、ハルトが訊いた。 「何あれ…何かあったの?」 「…あとでコッソリ教えてあげます」  「よっしゃー乾杯しよう、乾杯ー」 残念ながら、そんな事には全く気付かなかったサエゾウは、僕からグラスを受け取ると…買ってきた氷をぶち込んでいった。 それぞれの手にグラスが行き渡り… 僕らは改めて、乾杯した。 「お疲れ様でした!」 「お疲れー」 「乾杯ー」 「にゃー」 そしてまた…大宴会が始まった… 「あーもう、お腹空いたー」 「だよな…そう言えば、ソフトクリームしか食べて無いんじゃない?」 「またいっぱい買ってきたな…」 テーブルにズラッと並んだ惣菜パックを見ながら、シルクが呟くように言った。 「大丈夫、食べるからー…ねー」 そう言いながらサエゾウは、僕の方を見ると…あれっ…ていう表情になった。 そして、眉間に皺を寄せながら続けた。 「シルくんー何したのー?」 「別に…」 シルクは何事もないように、食べながら答えた。 「何もなかったら、こんなエロい顔んなるわけないじゃんーもうー」 うう… そんなですか… 「ちょっとチューしただけだよ」 「ええーまたー?…もうーホンットに油断も隙もないんだからー」 「…っ」 僕は思わず下を向いて顔を赤らめた。 「もうーどっち先に食べるか迷っちゃうじゃんー」 「あはははっ…」 「まあまあ、まずは腹を満たすんだな…」 カイは、サエゾウの肩を押さえながらそう言うと…今度は僕に向かって言った。 「それとも…いったん抜くか?」 「…大丈夫ですっ!!!」 「くっくっくっ…」 そんなやり取りのおかげもあって、僕のヤバい熱は、段々と治まっていった。 何しろ僕も、とてもお腹が空いていたし… 「これ、牧場のチーズ…美味いね」 「あ、ワインも残ってるぞ…」 「飲むー」 シルクは、立ち上がって、ワイングラスを取りに行こうとした。 「いいよー同じコップでー」 「そうだな…どうせ残り物だしな」 「氷も入れて…かちわりワインにします」 「…ま、いっか…」 笑って溜息をつきながら、シルクはストンと座った。 僕も、牧場チーズを摘んだ。 「ホントだ…美味しい…」 「よかったな、買ってきて…」 「何か、旅行行ってきたーって感じがする…」 「あははは、確かにな…」 「昨夜の残りも…こうやって改めて食べると、また美味しいですね」 「そうだな…テイクアウト感覚だな…」 「全部みんな美味いー」 サエゾウの言う通りだった… 全部、何もかも美味しかった。 もしかしたらそれは…この人たちと一緒に食べるからなのかもしれないな…と、僕は密かに思った。 昨夜も同じような宴会だったのに…もう、そんなに話す話題も無いんじゃないかと思うのに… 自分でも不思議なくらい…この人たちとは、飽きる事なく、いくらでも一緒にいたいと思った。 そして… いくらでも… この人たちの玩具になりたいと…思った。 さっき、シルクに容赦なく口付けられた余韻が残っていたのか…すっかり酔い進んでいた僕は、いつの間にうっかり…そんな良からぬ事を考えてしまっていた。 「…っ」 ハッと我に還った僕は…慌てたようにガタッと立ち上がって、テーブルの上の空いたパックを集めた。 そしてそれを持って、キッチンのゴミ箱に捨てに行った。 「なーんか変じゃないー?」 僕に聞こえないくらいの小声で、サエゾウが言った。 「だな…」 「やっぱり、シルクさんのスイッチが強力過ぎたんじゃないですか?」 「ふふっ…そうかもな…」 「処理してあげた方がいいんじゃない?」 「お腹も満たされた事だし…」 「そろそろデザート食べてもいーよねー」 そんな物騒な会話が進んでいるとはつゆ知らず…僕は何事も無いように…戻って椅子に座った。 「…っ」 ふと、見ると…皆の視線が、僕に集中していた。 「な…何ですか?」 僕は、必死に取り繕うように…言った。 皆が揃って、いやらしそうにニヤッと笑った。 「……」 それを見て…怯える表情とは裏腹に… 僕の胸には、心地良い寒気が、何度も走り抜けた。

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