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改めて慰労会のあと(2)
またも失神寸前まで追いやられた僕は…仰向けでグッタリしたまま、シルクに身体を拭かれていた。
彼はティッシュを、そこら辺にポイッと投げると…再び、僕の上に覆いかぶさってきた。
余韻に疼く身体に、その重さとぬくもりが…
たまらなく心地良かった。
旅の疲れもあってか…
僕はそのまま…結局また、寝落ちてしまった。
ようやく目が覚めたときには…シルクは既に起き上がって、キッチンで片付け物をしていた。
「…」
さすがに起きねばと思って…
僕は、のそのそと布団から這い出した。
「…」
そう言えば…素っ裸だった…
辺りを見回して、僕のシャツが、椅子にかけてあるのを見つけた。僕はそれを取ろうと…立ち上がろうとした。
バサッ…
「…!」
いつの間にか僕に気付いたシルクが、僕の頭の上に、何かを投げてきた。
「…?」
手に取ってよく見てみると…
それは、例のエロい長さのシャツだった…
「…」
「お前のシャツだと、下まで隠れないだろ」
「…っ」
仕方なく僕はそれを着て、フラフラと立ち上がった。
また勝手知ったる感じに…キッキンの窓を開けて、煙草に火を付けた。
「ふうー」
シルクも隣にやってきた。
「いっぱい寝たな」
言いながら、彼も煙草を取り出した。
「…何か、いくら寝ても…眠い…」
「相当ヤリ散らかされたからな…」
「……」
「寝たいだけ寝たらいいんじゃない?」
シルクは僕の頭に手を置くと…
少しだけ心配そうな表情で、続けた。
「どっか…痛いとことか…ない?」
僕は、ふっと笑いながら答えた。
「…あすこはちょっとだけ…痛い…気がする」
「…そうか」
「ま、いつもの事だけどね…」
「そうか…」
僕らは煙草を揉み消した。
ガラガラと窓を閉めた僕を…シルクは、背中から抱きしめてきた。
「ちょっとだけ仕事するから…待っててくれる?」
「…うん…いいけど」
僕はまた、少しだけドキドキしながら答えた。
「終わったら…残り物でごはんにしよう」
「わかった」
「ゆっくり…寝てていいよ」
言いながら彼は…僕の頬に、自分の頬を擦り寄せた。
「…ん」
そして、僕から離れたシルクは…また何やら段ボールから取り出して、PCのあるテーブルの上に置いた。
僕は…とりあえず、洗面所で顔を洗ってから…
結局、また布団に寝転がった。
スマホをいじっているうちに…
段々、また眠くなってきてしまった。
シルクが何やら機械をいじっている音を、心地良く聞きながら…僕はまた、スーッと眠ってしまった。
夢の中で…僕は、シルクの家に向かっていた。
あれ…?
何だかいつもと景色が違っていた。
確か…このビルだったと思うんだけどな…
そう思って僕は、その建物に入った。
そしてエレベーターに乗って、シルクの部屋の階のボタンを押した。
しかし…エレベーターは、止まってくれなかった。
あれ…ど、どこまで行くんだ…
あれよあれよと言う間に…エレベーターは、最上階まで行ってしまった。
しかもそのビルにある筈の無い…超高層階まで。
僕は必死で、下の階のボタンを何度も押した。
…と、僕を乗せたエレベーターが、段々グラグラと傾いていくではないか…
ええっ…
そしてそれは、余りに不安定なまま…
まるで崩れ落ちるように、急降下していった。
「うわあああーっ」
僕は、ビクッと震えながら飛び起きた。
「…何…どうした?」
僕の声に驚いたシルクが、こっちを振り向いた。
「…はぁ…はぁ…」
僕はホッとして、シルクの方を見た。
彼は少し心配そうな顔で、僕の方を見ていた。
「変な夢みた?」
「…うん」
「もうちょいで終わるから…」
「…うん…」
そう言って…僕は再び布団に仰向けになった。
よかった…
ちゃんとシルクんちだ…
目を閉じて…僕は、気持ちを落ち着けた。
ほどなく、仕事を終えたシルクと一緒に…僕は、昨日の残り物をテーブルに並べていった。
「足りるか?」
「あーうん…」
「パスタも茹でとくか…」
「うん!」
そして彼は…常備玉ねぎと、冷凍シーフードミックスを使って、パパッと美味しそうなパスタを作ってくれた。
そしてまた…割と賑やかになったテーブルを囲んで、僕らは残り物のハイボール缶で乾杯した。
「さっき…どんな夢みてたの?」
シルクが訊いてきた。
「シルクんちに行きたいのに、エレベーターですっごい上まで連れてかれちゃう夢…」
「ふうん…」
「で、そのエレベーターがね…グラグラってなって、落っこっちゃったんだ」
「…ふうん」
「あんな怖い夢…久しぶりにみた…」
「それって…何かトラブルの前兆とかじゃないの?」
「えええっ…うそでしょー」
「エレベーターとか、落ちるとか…そんな感じなんじゃないのか?」
「…」
「また、変なヤツが出てくるんじゃない?…シキとか、アヤメみたいに」
「えーそんな不吉な予言…やめてよ」
「ふふん…」
半分本気でビビる僕を見て…シルクは鼻で笑った。
まさか本当に…
シルクの夢診断が、現実になろうとは…
そのとき僕らは…これっぽっちも思ってなかった。
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