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ウチで打上げ(2)

そして僕は…ようやく飲み食いテーブルについた。 「いっただきまーす!」 サエゾウが、ものすごい勢いでガッツいていった。 僕も、負けじと箸を握った。 「カオル…着替えなくていいの?」 「それより何より、お腹空いてるんですよね」 「まーでも、いいんじゃん?…どうせまた後で脱がされるんだから…」 …だから、その大前提、何なのよ 思いながらも…ショウヤの言う通り、そんな事はどうでもいいくらいにお腹が空いていた僕は、サエゾウと奪い合うように、並んだ料理を食べ進めていった。 「DVDは見れないのー?」 我儘サエゾウが言い出した。 「あー…一応プレイヤーはありますけど…」 「パソコンは?」 「無いです」 「えーイマドキ、パソコン無い家なんてあるんだー」 「そういえば、テレビも無いな…」 「天気予報も見れないじゃん」 「…」 若干ムッとしながら、僕は…それほど大きくないDVDプレイヤーを取り出してきた。 「へえーこんなのあるんだ」 「逆に珍しいよな…」 「初めて見たかもしれません…」 ボロクソに言われながら…僕はそれをテーブルの上にセットした。 「狭いなー」 「画面小っちゃいし…」 もうーだったら最初から、 シルクんちに行ったらよかったじゃんー そして…DVDの映像が…流れ始めた。 「音も小っちゃい」 「えーこれで最大?」 「低音聞こえねーな…」 「…」 ホントに文句が多いなもうー 「まあまあ…いいじゃん」 ハルトが、取りなすように言った。 ああ… やっぱりハルトさんは優しい…か? 「こんな貴重な体験、滅多に出来ないよね」 「…」 やっぱり…持ち上げて落とすのか… そんな感じで、相当に文句を言われながらも… 何とかその場は鑑賞会になっていった。 「僕が…客席から見たとき…既に炎が見えてました」 「えっ…ホントに?」 「はい」 「やっぱ俺らすげー」 「カオルの能力、ちっとは伝授されてんだな…」 「でもやっぱり、この…カオルさんが飛び込んでった瞬間の、火の粉が飛び散る感じは、すごく迫力がありましたよねー」 ああ…せっかくドヤってるところに、何でそーいう水を差す事を言うかな… 案の定… サエゾウは、一瞬ちょっとムスッとしていた。 楽しいMCからの、螺旋にマスカレが続いた。 「サエさんのギター切ないですねー」 「あーそんでやっぱこの…マスカレの最初のギターに、撃ち抜かれるんだよね…」 「ソロがまた、ヤバかったですねー」 皆に持ち上げられているうちに、サエゾウはまた、段々とドヤ顔に戻っていった。 そして、黒いワルツになった。 「名曲ですね…」 「ああ、バンドで聞くと…また全然違うな」 「あ、カオルそういえば、レンと何か話したー?」 サエゾウが思い出したように言った。 「あ…はい」 僕は、その…レンからもオーラが出ていた事を、皆に語った。 「へええー」 「さすがにそれは分かんなかったな…」 「スゴく…不思議な感じでした…」 「その…レンって誰?…さっき話してたやつ?」 シルクがサエゾウに訊いた。 「あのねー、カオルがこの曲作るキッカケになった絵を描いた人ー」 「へえ…」 「ああ…あの…読めない人ですね…」 ショウヤも思い出した。 2人は、何となく腑に落ちないものを感じていた。 それが一体何なのか… そのときの2人には、分からなかったのだが… そして…サエゾウ渾身の… アコースティック宵待ちのイントロが流れた。 「あーこれは…ちゃんとした音で聞きたいですね…」 僕は思わず言ってしまった。 おそらく誰もがそう思っていたに違い無い… 「ギターも素晴らしかったですけど…この…座りこんじゃったカオルさんの歌が…また、めっちゃエロかったんですよね」 「…っ」 そうだった…完全にヤられたんだった… 「こんなエロ声出せるなんて、知らなかった…」 「確かにエロ声だな…」 「もっと良い音で聞きたーい」 「……」 渾身&エロ声からの、激しい展開の宵待ちは… ちゃちなプレイヤーからでも伝わるくらい…おそらく、今まででいちばん良い演奏だったと思われた。 「これでイっちゃった人…絶対いると思います!」 「あー…ご本人もイっちゃったけどな」 「…っ」 ちょうど、僕が両手をついた映像が流れていた。 「ホントだ…」 「そうか、ここでか…」 「イっちゃった顔してるー」 「…」 「ホントに紙パンツにしといて良かったですね!」 「……」 何もかも暴露されて…情けなくシュンとする僕にはお構いなしに…彼らは、最後の神様を観ながら、悦に入った表情をしていた。 「こーれは、間違い無くファン増えましたね!」 ショウヤが豪語した。 「イベント的にも、良い盛り上がりだったと思うよ」 ハルトも言った。 「こんな風に…もっともっとトキドルを知らない人に、この良さを知らしめたいですよね…」 「ここん所、同じ箱ばっかりだったからな」 「どっか初めてん所に進出するー?」 「…」 僕は、こんくらいで十分ですけどね… そんな知らしめなくて大丈夫です、恥ずかしいから 「ま、でも…広まれば広まるほど…カオルの信者も増えてくって事だけど…大丈夫なの?」 「…」 「…」 それを聞いて…皆、グッと黙ってしまった。 「俺は平気だけど?」 しれっと言ったシルクを見て… ショウヤがまた、プッと吹き出した。

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