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ウチで打上げのあと(1)
とりあえず動かない僕は、再起不能な衣装を脱がされ…身体もキレイに拭かれていた。
「あーあー…無理矢理突っ込んだんだな…」
ププッと笑いながら…シルクは、僕が押入れに突っ込んであった布団を出して、いつもの場所に敷いた。
結果、全裸の状態で…僕は布団に寝かされた。
すっかりスッキリした面々は、自分の荷物を片付けながら…再び狭い飲食テーブルを囲んで、音の良くないDVDをBGMに、飲み進んでいた。
「コレも燃えるゴミに捨てさせてもらおう…」
言いながらハルトは、脱がせてボロボロになった衣装をゴミ箱に丸めて突っ込もうとした。
「待ってくださいハルトさん」
「…何?」
「それ…僕が貰ってもいいですか?」
「えっ…いいけど…」
「何に使うんだよ?」
「そんなん決まってんじゃんねー」
「かなり痛々しいな…」
「いいじゃないですか!」
ショウヤは、少しムッとしたように強い口調で言った後に…3人を見回しながら…ニヤッと笑って続けた。
「なーんだ…ホントは欲しいんじゃないですか…」
「…っ」
「…!!」
3人様は…慌ててショウヤから目を逸らした。
どれくらい時間が経っただろうか…
なんだかんだで…家主不参加のまま、彼らは長い時間、そこで飲み語り合っていた。
「そろそろ片付けるか…」
「そうだな…」
皆、立ち上がって…コップなどをシンクに片付け、残り物をまとめていった。
「他所んちだから…勝手がイマイチよくわからんな…ま、テキトーでいいか…」
ブツブツ呟きながらシルクは、シンクに下がってきた食器を洗った。
「そんでまたシルくん居残りかー」
若干不服そうに、サエゾウは言った。
「別に、サエが残ってもいいけど?…2回も出してスッキリしたサエが…」
「……」
畳み込むようにシルクに言われて、サエゾウは、テヘッて感じに笑った。
「しょうがないなー」
「ま、シルクが居れば、カオルも安心だろ」
「僕はコレ頂いたから大丈夫です」
ズタボロの衣装をしっかり両手に抱えながら、ショウヤはうっとりした表情で言った。
「あ、ショウヤさ…それ家に置いてからでいいから…あっちの打上げにちょっと顔出さない?」
そんなショウヤに、ハルトが声をかけた。
「俺も行こっかなー」
「だったら俺も行くか…」
サエゾウとカイも続いた。
「そうだね…皆で行こうか、色々とお世話になったから…出来ればちゃんと挨拶したいよね」
「そうだな…」
そして4人は…重い腰を上げた。
「じゃ、カオル…よろしくね」
「ああ」
「なーにをよろしくするんだかなー」
「色々よろしくしとくわ」
しれっと笑って答えるシルクを残して…4人はゾロゾロと、僕の部屋を出ていった。
「シルくん…ズルいよなー」
階段を下りて…外へ出たサエゾウは、ブツブツ呟くように言った。
「お前はいつも最初っからガツガツし過ぎなんだよ」
カイがサエゾウの頭を小突きながら言った。
「だって我慢出来ないんだもんー」
「ふふふふっ…」
ショウヤは…食べる前にサエゾウに、素直な良い子でヤられた僕の事を思い出して、思わず笑ってしまった。
「何笑ってんだよ…」
「あ、いえ…何でもないです」
ちょうどショウヤの家の前に来た。
「スイマセン、すぐに戻ります」
「ちゃんと洗濯機に入れとけよ」
「はい」
ショウヤは、ズタボロ衣装を…大事にネットに包んでから洗濯機に入れると、またすぐに下に降りてきた。
「んじゃ行こうー」
「あ、ハルトさん…荷物半分持ちます」
「悪いね、サンキュー」
そして彼らは…
駅の反対口にある、例のマスターの店に向かった。
階段を下りていくと、狭い店内は人で溢れていた。
「すげーな…」
「入れるか?」
「おおーいらっしゃいー」
カウンターの中から、マスターが叫んだ。
「あーカッコいいバンドの人だー」
「あ、ここ空けますからどうぞ」
カウンターに座っていた女性たちが、立ち上がって席を空けようとしてくれた。
「あ、大丈夫だからー座っててー」
コロッと営業スマイルに変わったサエゾウは、彼女たちの背後に立った。
3人も、そこら辺に何とか身体をねじ込ませた。
「生ビールにレモンサワー…カイくん達はハイボールでよかったっけ?」
「はい、それでお願いします」
そして、記憶力のすごいマスターが出してくれたドリンクを手に、彼らは乾杯した。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとうね、すーっごかったね!」
「マジでLIVE見に行くー」
「じゃあマスターに言っとくから、絶対来てねー」
「マスター、ちゃんと教えてね!」
「わかったわかった…」
「あの、林さんは…もう帰られました?」
ハルトがマスターに訊いた。
「あー帰っちゃった」
「よろしく伝えてください」
「ホントに!本当に…ものすごく助かりました」
ショウヤも目を爛々とさせながら続けた。
「わかった…伝えとくね」
「よろしくお願いします!」
そんな感じで彼らは、無事にお礼参りも終えて…
しかもちゃっかり自分達のお客さんもゲットしつつ…
長く楽しい夜を過ごした…らしい。
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