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ウチで打上げのあと(5)

LIVEの後だと言うのに… まさかの自分の家で… メンバーにも散々弄ばれ…更にエロ親父にも、割と手酷くヤられた僕は… その後、死んだように眠り続けた。 朝になって、先にシルクが目を覚ましたときにも…僕はまだ、全く起きる気配が無かった。 「…生きてる…よな…?」 彼は思わず、僕の口元に手をあてて、呼吸を確認した。 (また…ヤり…過ぎたか…) とりあえずホッとしながらも…シルクは僕を見下ろしながら、自分の頭を抱えた。 (だから…何でこう…意地が悪いんだ、俺…) 「はあ…」 反省の溜息をつきながら、ひとりでのそのそと起き上がったシルクは…換気扇の下へ行って、煙草に火を付けた。 「ふぅー」 大きく煙を吐きながら…彼は自分のスマホを手に取った。 サエゾウから、LINEにメッセージが入っていた。  カオル大丈夫ー?  やり過ぎたからちょっと心配ー  シルくん優しくしたげてねー 「…全然優しくしなかったわ…」 それを読んだ彼は、苦笑した。 トキドルLINEにもメッセージが入っていた。  次回のイベントにも参加しないかって  カオルシルク…どう? シルクはすぐにOKの返信を打つと、スマホを置いて、煙草を揉み消した。 そして彼は布団に戻ると…再び僕の隣に横になった。 (もうちょい寝るか…) 寝返りを打つ事もなく、完全に固まったままの僕を見て…シルクは少し心配そうに溜息をつくと…僕の首の下に腕を滑り込ませた。 僕の頭を、しっかりと自分の方に抱き寄せて…彼は僕の顔を覗き込んだ。 (いつもなら…目を覚ますところだけどな…) それでも全く動かない僕を見て…シルクは諦めたように、目を閉じた。 結局…彼もまた、眠り込んでしまった。 それからどれくらいの時間が経ったか… やはり目を覚ましたのは、シルクの方が先だった。 「……」 (さすがに…起こしてみるか…) 彼は、僕の顔に手をあてると…軽くそっと叩きながら、僕を呼んだ。 「カオル…おい、カオル…」 「…」 「おーい…」 「…」 それでも僕は目を開けなかった。 シルクは僕の肩を掴むと…優しく揺らしながら続けた。 「カオル…おい!」 「…ん…」 ようやく、僕は少し反応した。 「大丈夫か…?」 「……」 ゆっくり…僕は、目を開けた。 目の前に…とても心配そうな、シルクの顔が見えた。 「…っ」 僕はそれを見て、とても安心すると… 再び目を閉じてしまった。 「まだ…寝たい?」 「…ん…」 小さく頷きながら…僕は、自分の身体に纏わりつくシルクのぬくもりを、心地良く感じていた。 目を開けるのも…口をきくのも鬱陶しかった。 それでも、彼に抱き寄せられている事で…僕は、これ以上無いほどに、しあわせな気持ちになっていた。 無意識に綻んでしまった僕の口元を、そっと指でなぞりながら…シルクは言った。 「全然…優しく…出来なかったな…」 「…」 「疲れてるのに…また酷いを上塗りしちゃった…」 「…」 僕はゆっくり目を開けて… 彼の目を…じっと見つめた。 そんな僕の表情を見て… 彼は、たまらない様子で続けた。 「…それでも…好きなのか…?」 「…」 僕は、力無く微笑むと…目をパチンと閉じながら…分からないくらいに小さく頷いた。 「…っ」 シルクは、そんな僕の身体を… ただ、ただ…ギュッと抱きしめた。 それから僕は、うつらうつらと…寝たり起きたりを、何度も繰り返した。 どれくらいの時間、そうしていただろうか… 僕が動けるようになるまで、シルクは飽きる事なく、ずっと僕に寄り添ってくれていた。 そろそろ、辺りが暗くなる頃になって…ようやっと、僕は上半身を起こした。 「…大丈夫か?」 「…うん…」 「痛い?」 「…んー…少し…」 「起きれそう?」 「…うん」 シルクに腕を支えられながら…僕はそろそろと立ち上がってみた。 ほんの少しだけ、じわっと立ちくらみはしたが…僕は何とか、自力で立ち上がる事が出来た。 全裸…だったけど… 「服…どれ出す?」 「…大丈夫、自分でやる…」 のそのそと、僕は押入れを開けて…下着とTシャツを取り出して、それを着た。 それからフラフラとキッチンに行くと、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して、ゴクゴクと飲んだ。 「ふぅー」 大きく溜息をついて、僕はそのまま換気扇の下で、煙草に火を付けた。 シルクも隣にやってきて…同じく煙草を咥えた。 並んで煙草を吸いながら、彼が言った。 「お腹…空いてんじゃないの?」 「…うん」 「何か…作るか」 「…何も無いかも」 僕は、再び冷蔵庫を開けた。 昨日の惣菜の残り物が少しと…大量のハイボール缶が入っていた。 「とりあえず酒は当分困らないな…」 シルクは笑いながらそう言うと…煙草を消して、自分の荷物を纏め始めた。 「…っ…帰るの?」 僕は思わず、慌てて訊いてしまった。 彼は、ふふっと微笑んで続けた。 「いったん帰る…米はある?」 「あ…うん」 「炊く元気ある?」 「うん」 「何か作って持ってくるから…その間にご飯炊いて、風呂でも入ってて」 「…!」 そう言ってシルクは、さっさと部屋を出ていった。

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