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ウチで打上げのあと(6)
シルクに言われた通り…
僕は米を研いで、炊飯器のスイッチを入れてから…大人しく風呂に入った。
小1時間も経たないうちに、戻ってきたシルクは、呼び鈴も押さずに、勝手にドアを開けて入ってきた。
「ビックリした…早かったね…」
僕は、濡れた髪のまま…とても驚いて彼を振り向いた。
「そんなエロっぽい格好で、不用心だな…鍵くらい掛けとけよ…」
笑いながらそう言って…彼は手に持った袋から、ラップのかかった器を幾つも取り出してテーブルに並べていった。
「重ねてきたから、崩れちゃったなー」
「…!」
ラップを外されていくいく品々を見て、
僕は目を爛々と輝かせた。
「あんまり大したもんは出来なかった」
「いやいや…相当大したものだと思うけど…!!」
キャベツと竹輪を、ごま油と塩昆布で和えたもの…
さつま揚げを焼いたもの…
ひじきを煮たもの…
そして、きのこと豚肉を炒めたもの…
「あとコレ…チンして」
言いながら彼は僕に、銀色のレトルト袋を手渡した。
「コレ…何?」
「実家から送ってきた…たぶん中華のおかずだと思う」
僕は食器棚から適当な皿を出して、それを開けた。
「スゴい!角煮だー」
「豚かぶったな…」
そして、ラップをかけて電子レンジに入れた。
「ご飯は炊けたの?」
「…う、うん」
僕は慌てて、再び食器棚を漁ると…
少し深めの小鉢を2つ出した。
「ごはん…コレでいい…かな?」
「ちゃんとした茶碗も無いのか、この家は…」
「すいません…」
僕はその小鉢に、ご飯を盛った。
角煮もチンされて…シルク出前のおかずを囲んでの、食事の準備が整った。
僕らは、昨日の残りのハイボール缶で、乾杯した。
「お疲れー」
「お疲れ様でした…色々ありがとうございます」
僕は、彼の作ったおかずに、順々に箸をつけていった。
「うわああ〜美味しいー!」
「まあ、たまたま残ってたもんばっかりだけどな」
「こんなに良い物が残ってるって…やっぱシルクんちの冷蔵庫ってスゴいよね!!!」
美味しく白いご飯に合うものばかりだった。
僕の食欲は、ズンズンと加速していった。
「ごはん…おかわりする…」
「…全く、相変わらずよく食べるよな…」
「だって、美味しいんだもん」
ガツガツと食べ進んで…粗方食べ終わってから…僕は、少し申し訳なさそうに、シルクに言った。
「今日…何か予定とか無かったの?」
「何も無い…」
「だったらよかった…ずっと一緒に居てくれて、嬉しかった…ありがとう」
「いや、まあ…皆、お前の事心配してたからな…」
少し照れ隠すように、彼はそう続けると…ハイボール缶をもうひとつ取り出した。
「お前も飲む?」
「うん」
彼は、続けてもう1本取り出して、僕に手渡した。
僕はそれを、プシュッと開けながら…
少し伏せ目がちに言った。
「今日は…もう帰る?」
「…どっちでも」
「また…泊まる?」
「いいけど…風呂入りたいんだよなー」
「よかったらどうぞ使って…狭いし、あんまりキレイじゃないけど」
「そっか…」
シルクは、ハイボール缶をテーブルに置いた。
「そんじゃあ…酔っ払う前に…入ろうかな」
「うん…」
僕は、立ち上がって押入れの方に行くと…バスタオルを出してきた。
「着替えも…いる?」
「ここんちの家の着替えなんて、全部小っちゃいに決まってんじゃん」
「あー…そうだよねー」
そしてシルクは、浴室に入っていった。
その隙に僕は、空いた食器を片付けた。
何となく…心地良い気分だった。
ウチにシルクが居て…
彼がお風呂に入ってる間に、自分が食事の後片付けをしてるとか…
もし…一緒に住んでたら…毎日こんな感じなのかな…
僕はひとりでニヤニヤしてしまった。
片付けを終えた僕は、再びテーブルの前に座って、ハイボール缶に口を付けていた。
ガチャッと浴室のドアが開いて…シルクが出てきた。
上半身は裸で…腰にバスタオルを巻いていた。
「…あ、着替え…洗濯…する?」
「お前んちの洗濯機…乾燥機能付いてんの?」
「付いて…ない」
「じゃあいいわ」
シルクはそのままの格好で、僕の隣に座ると…また冷蔵庫からハイボール缶を取り出して、プシュッと開けた。
「はあー美味いっ…」
彼はゴクゴクとそれを飲んだ。
そして、それをテーブルの上に置くと…僕の頭を撫でながら…呟くように言った。
「何か…いいな…こういうの」
「…」
「結婚したら…毎日こんな風に、ずっとお前が居るんだな…」
「…っ!」
僕は、頬を赤らめて…彼を見つめた。
シルクも…同じような事を考えてくれてたんだ…
いつか…
いつか本当に…そうなれたら…
自分のハイボール缶をゴクンと飲みながら…
僕は…そう…思わずにはいられなかった。
「もうさー」
シルクは、僕の髪に指を絡めながら続けた。
「ホントにその…俺の事大好きって顔…何とかなんない?」
「……」
「マジで騙されるわ…」
「…」
言いながら彼は、僕に口付けてきた。
「…ん…」
騙してなんか…いないんだけどな…
僕は…少しだけ寂しい気持ちになりながら…
またも、彼の舌使いに、夢中になっていった。
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