324 / 398

光鬱レコーディング(2)

アヤメは僕に装着された、ヘッドホンやらバンダナやらを外すと、僕の身体をその場に横たえた。 「…はぁ…はぁ…」 小刻みに身体を震わせながら、息を荒げる僕を見て…アヤメは、ニヤッと笑いながら言った。 「LIVEの後みたいに…なっちゃった?」 「…っ…」 彼は…そっと僕の股間に手を伸ばした。 「んっ…はぁっ…」 その手が僕のモノに触れた途端、僕はビクビクッと大きく身を捩った。 「こーれは…いったん抜くしかないよな」 言いながらアヤメは、僕のズボンを膝までズリ下ろして…完全に、いきり勃ってしまった僕のモノを、露わにさせた。 「は…あっ…」 彼は、横たわる僕の後ろに寄り添うように座ると…その、いきり勃った僕のモノを、そっと握った。 「すぐ…出ちゃいそうだね…」 濡れた尖を親指でクリクリと弄りながら…彼はそれをゆっくりと扱いた。 「…んんっ…は…あっ…ああっ…」 熱く昂った身体に、ジンジンと渦巻く快感が…全てそこに集結していき…それは、アヤメの手の愛撫によって、更なる荒波を巻き上げていった。 「あ…はあっ…んんんっ…」 僕は、あっという間にイってしまった。 「…はぁ…はぁ…」 「落ち着いた?」 肩で息を上げる僕の身体を拭きながら…彼は言った。 「…すいま…せん…」 「全然…むしろ、役得だよね…」 アヤメに手伝われて、僕はズボンを履き直した。 彼は、僕を椅子に座らせながら続けた。 「すごく良い歌も録れたし…ありがとう」 「…」 「片付けるから、ちょっと座って休憩してて…」 「…」 アヤメは、またサクサクと機材を撤収していった。 手伝いたい気持ちはとてもあったのだが… 精密機械がとても複雑そうで、下手に手を出し辛い感じがしたのと…本気でとても疲れてしまっていた事もあって… 僕は、大人しく…彼が片付ける様子をボーッと眺めていた。 結局…いつぞやのときと、あんまり変わらなかったな…消耗具合が… 「じゃあ、出ようか…立てる?」 「あ、はい…」 僕は、何とか立ち上がった。 若干フラつきながら…僕はアヤメに腕を支えられて、そのスタジオを後にした。 「どっか寄って行く?」 「…どちらでも…」 「疲れちゃったか…真っ直ぐウチに戻るか」 「…」 そのとき…僕のお腹が…グ〜ッと鳴ってしまった。 「…っ」 「あはははっ…」 アヤメは、声を上げて笑った。 「消耗したからお腹すいたよな…置き酒はあるから、ピザでも頼むか?」 「…はい、それでお願いします…!」 力無く…それでも力強く、僕は答えた。 それから僕らは、アヤメの家で…ピザを囲みながら、ハイボール缶で乾杯した。 「お疲れ様…」 「…お疲れ様でした」 「ホントに疲れたよね…いっぱい食べてね」 「はい…いただきます」 僕は、遠慮なく…目の前のピザにガッツいた。 モリモリ食べる僕の…アヤメは、やはり半分くらいのスピードでピザを齧りながら、言った。 「あとはさ…出来れば、CDのジャケットの画像を撮りたいんだよね…」 「あー…なるほど…」 「でさあ…その…おたくのカメラマンにお願いしたいなと思ってたんだけど」 「…あーたぶん、撮ってくれると思いますよ」 まーちょっとメンドクサイ事になりそうだけどね… 「もしくは…」 アヤメは、少し考えながら続けた。 「…その、カオルが今モデルやってるっていう…画家さんに、描いてもらったり出来ないかな…?」 「…」 あー もしかしたら、むしろそっちの方が面倒臭くないかもしれないな… 「ダメ元で、ちょっと頼んでみてくれない?」 「わかりました…訊いてみます」 僕はそう答えると…その場で、その旨をレンに送った。 すぐに返事が来た。  いーよ、面白そう  来週土曜は昼の会だから、その後で良ければ 「…来週の土曜日の夕方、アヤメさん空いてますか?」 「うん」 「その日で良ければ描いてくれるそうです」 「ホント?…じゃあそれでお願いしていい?」 「はい」 僕もすぐに返信した。  それで、よろしくお願いします  了解  サエじゃないギタリストが来るのね  楽しみにしてるわ トントン拍子で決まってしまった… 「ありがとう…さっさと解決して良かった」 アヤメは、心底ホッとしたような表情で、ハイボール缶をゴクゴクと飲み干すと…立ち上がって、新しい缶を取りに、キッチンにいった。 「…カオルも、もう1本飲む?」 「あ、はい…」 僕も、残ったハイボールを飲み干した。 ほどなく戻ってきた彼は、新しい缶をテーブルに置きながら言った。 「ついでに、その…ちょっと怪しい画家が、どんなヤツなのかも探れるな…」 「…」 僕は、新しい缶を開けると…またそれを、ゴクゴクと飲んだ。 そっか… トキドルの皆にちゃんと報告していない相手に、アヤメさんを紹介する事になるのか… 何となく… 僕は…釈然としない、後ろめたい気持ちになった。

ともだちにシェアしよう!