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ショウヤ個展(2)

「すごく素敵ですね!!」 とりあえず1つ出来上がった、宵待ちハルトコーナーを見て…ショウヤは、興奮したように感嘆の声を上げた。 100均のリカちゃん人形もどきが4体…PVと同じような着物風の衣装を着て…ちゃんとポーズをとっているのだ! 「この…カオルさんとサエさんのエロい感じがたまりませんね…」 「人形なのにな…」 「持って帰りたいです…」 「あはははっ」 ハルトは続けて、他のPVをイメージしたコーナーの製作に取り掛かった。 ショウヤも順調に…大量の写真を、手際良く展示していった。 ショウヤが、ふと思い立ったように言った。 「ハルトさんだけのコーナーの予定でしたけど…それ、写真のコーナー毎に置いてもいいかもしれないですね」 「あーなるほど!」 ハルトも、ポンと手を打ちながら答えた。 「レイアウトが、予定とちょっと変っちゃいますけど…」 「しかも、全部コーナー分の人形は用意してないぞ…」 「うーん…」 ショウヤは、口に手を当てて…しばらく考え込んでから、続けた。 「レイアウトは、まあ何とでもなるし…人形は、どしどし買ってくれていいんですけど…衣装を用意するのが大変ですよね?」 「あーまあ、明後日のオープンまでに間に合わせればいいんだろ?」 「間に合わなくても大丈夫です!」 「えっ」 「逆に、無理ない範囲で、日替わりにしてください」 「あー…なるほどね」 確かに、それだったら…マニアなお客さんは、きっと何回も来たくなるだろうし… 「何より、僕が楽しいです!!!」 そーいう事だな… 方針変換が決まったところで…ショウヤは再び作業に戻った。 パーテーションを少しずつ動かして…当初の予定より、それぞれのコーナーが広くなってしまった。 「もっと飾れそうですね…」 ショウヤは、むしろ嬉しそうにニヤッと笑った。 ハルトは、とりあえず用意していた人形を飾り終えると…追加の人形の買い出しと衣装作成のために、いったんその場を離れる事になった。 「何時くらいまでやってる?」 「あーとりあえず、増刷もしたいから…今日は早めに切り上げます…だからハルトさん、今日はもうこれで大丈夫ですよ」 「そうか…そうするか」 「逆に面倒な仕事を増やしちゃってすいません」 「いや、それは全然いいんだけど…」 ハルトは少し考えてから続けた。 「前夜祭は、明日にするか」 「えっ?」 「お前も今日は、増刷作業で忙しいもんな…」 「…」 「今日はお互い、大人しく準備を頑張って…明日、軽く飲み行く事にするか…」 「そうですね…そうしましょう!」 そういうワケで…その日ハルトは、ショウヤを残して会場を後にした。 100均ショップをはしごして…店員さんに若干白い目で見られながら、リカちゃん人形もどきを買い漁って、自分の家に帰ると…足りない衣装の製作に取り掛かった。 宵待ちと神様…写真集のイメージの彼らは、既に仕上げてきた。 (あとは、Deadと真夜庭か…) どっちも、先の3パターンに比べたら、さほどの手間では無かった。 真夜庭のシルクなんて、上半身裸だし… ハルトは着々と、衣装を仕上げていった。 ショウヤの方も、その日持ち込んだ写真を全て展示し終えて、早々に家に戻っていた。 そして、更に増刷する画像を…目を輝かせながら選んでいった。 (もうちょっとエロいのも出しちゃえ…) 「…」 そんなコンセプトの元…割と恥ずかしい感じの写真が、何枚も印刷されていった。 (ああー楽しみだなぁ…) (明後日から2週間…僕はあの…トキドルの写真に囲まれて、毎日を過ごすんだ…) そんな、どう考えてもヤバい妄想に耽りながら…彼はなかなか眠れない夜を過ごした。 翌日も…早い時間から、彼らは会場に集合した。 「ハルトさんスゴイです!…これ全部、ひと晩で仕上げたんですか!?」 「まあね、今回のは既成の服も活用出来たからね…宵待ちとか神様に比べたら楽ちんだったよ」 「それにしたって器用ですよね〜!!」 「あんな可愛い字の、お前に言われたくないわ」 そんな可愛い字のPopも添えられながら…会場の準備は、着々と整っていった。 「お疲れ様です…何かお手伝いする事ありますか?」 スタジオスタッフの男性が、様子を見に来た。 「ありがとうございます…そしたら、普通にお客さんになって、観てってもらえませんか?…で、何か気付いた事があったら教えてください」 「えっ、そんな重要な役目…僕なんか目線で大丈夫なんですか?」 「大丈夫です!是非お願いします」 そう言われて…若干恐縮しながら、彼は会場に展示された写真を、ハジから順番に観ていった。 「とてもステキな写真ばっかりですね…」 「被写体が良いですから」 「いや、それだけじゃないと思います…何ていうか…どの写真からも、ショウヤさんの愛が伝わってくる感じがします」 「本当ですか?」 「この…人形がまた、いいですね」 「でしょう!?」 彼は、夢中になって最後までじっくり観てくれた。 「もっと、こうした方がいい所とか、ありませんか?」 「いいえ…とても、素晴らしいと思います」 「…っ」 ショウヤとハルトは、嬉しそうに顔を見合わせた。 彼は、少し溜息をつきながら続けた。 「特にこの…ボーカルの人が、とてもステキで…ちょっとエロくて…これ観ただけでもファンになりそうです」 「…」 それを聞いて2人は、少し微妙な表情になった。 「カオル信者が増えそうだな…大丈夫?…エロ写真出し過ぎたんじゃないの?」 「いえ、想定内です!」 ショウヤは、若干強がった口調で言った。

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